楽器としての魅力で迫るヤマハ「reface」
9月、10月に発売されてすでに大人気のrefaceシリーズは、シンセ以外もモチーフにしているのがおもしいところ。エレキピアノのCPシリーズを原型に持つ「reface CP」、そしてコンボオルガンの名機YC-10を模した「reface YC」が出せるのはヤマハならでは。
CS、DXも含めてすべて37鍵のミニ鍵ですが、弾き心地はいままでミニ鍵にない素晴らしさで、さすがは創業118年のヤマハは違う。ただ、このミニ鍵は「HQ Mini」と呼ばれる新開発のミニ鍵で、ゆえに「コンパクト鍵盤」と言わなければならないようです。
鍵盤もいいですが、音もいい。音源は4機種それぞれに最適なエンジンを載せ、同じモデリング音源でプログラムだけ差し替え安く上げていないのもさすがです。3cm口径のユニットを2W×2Wのアンプで駆動するバスレフ方式のステレオスピーカー内蔵で、単体でも立派な音がするのも魅力です。重さは1.9kgと結構重いですが、単3電池6本で5時間動くので、リハーサルやアレンジの打ち合わせ用にも便利そうです。ともかく、小さいのに楽器としての完成度がやたらに高い。
中でもドローバーで音を作り変えながら演奏できて、レスリースピーカーの効果まで搭載しているreface YCは、特に音がよくてびっくりしました。なにしろYC-10と違ってノイズが全然出ないし、ステレオなのでレスリーをかけると音がグルングルン回ります。スイッチやボディーの配色もポップで、一体こんな素敵な色使いは誰の仕業なんでしょうか。
refaceシリーズはモバイルシンセの先駆けとも言える「CS01」がモチーフとのことですが、この「reface CS」に関してはモチーフの面影はまったくありません。音がもう全然違います。特にモジュレーションをかけた音は、大人しいイメージのあるヤマハ製アナログシンセの思い出が吹き飛ぶ程度にエグイ。こういうのは大好きです。でもCS01のようなブレスコントローラーがあればもっとよかったと思います。
DXのFM音源は4オペレーターで、DXシリーズ(ではないと思いますが)としては初めてエフェクターを内蔵しています。そして128×64ドットの大きなディスプレーが見やすい。歴史上、もっとも使いやすいDXではないでしょうか。
CPは、ステージピアノ用のSCM音源を使っているので、音はCPシリーズそのもの。サンプリングと違って、エレピの発音構造をモデリングした音源なので、キータッチで微妙な音色変化が楽しめます。音色はローズやウーリッツァー、もちろんCP-80までエレピの音を網羅。ビンテージ系のエフェクトも内蔵しているのですが、特に長いディレイでポンポンポンと音を飛ばすと、これが実に気持ちいい。
近々にrefaceシリーズをショルキーにするためのアダプターも発売されるということです。復刻にこだわらず、「元ネタ」を知らない人にも、新しい楽器として受け入れそうな魅力を与えたところが、refaceシリーズのすごいところでしょう。
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