新世代ギターシンセがBOSSから登場
ペダルボード用のスイッチャー「ES-8」は、複数のエフェクターを接続して、ルーティングやオン/オフなどを一括して操作するものです。ギタープロセッサーの便利さが重宝がられる一方、本物のアンプで鳴らしたい、自分の好きなエフェクターを組み合わせて使いたいというニーズも当然あるわけで、ES-8はそうした人たち向けの製品です。
個人的に今後の開発に注目しているのが、ギターシンセサイザーの「SY-300」です。従来のような専用ディバイデッドピックアップの取り付けは不要。にも関わらず和音が弾け、レイテンシーもない新世代のギターシンセサイザーという触れ込みで登場しました。
実はおもしろそうなので個人的に買って使っていますが、シンセ的な音も出るコンパクトなマルチエフェクターとして結構重宝しています。ローランドではなく、BOSSから出ているのも、そういう使われ方を想定しているのかなと想像しています。
これまでのギターシンセサイザーは、ギターの音から音程を割り出してシンセのピッチ制御をする関係で、ピッキングしてから音が鳴るまでの若干の遅れがあり、またピッチの追従も不安定なところがありました。
そうした欠点を感じないので、演奏していてさほどストレスは感じません。
SY-300もギターの出力を何らかの方法で変換はしているはずなのですが、その技術的な詳細は明らかになっていません。ただMIDI OUT端子からノート情報を出していないこと、シンセモジュールの構成からエンベロープ・ジェネレーターが省略されている点を考ると、ギターの出力からピッチやトリガーの検出は行なわなくてよい変換方法のようです。
演奏性から言えば、ピッチシフターのウエット信号に、フィルターやモジュレーションを掛けたようなイメージです。実際、開放弦を思い切り弾くと、ピッチが不安定になるところはピッチシフターによく似ています。エンベロープ絡みの凝った音作りはできない代わりに、ピッキングハーモニクスのようなギターっぽい奏法も受け付けるのがおもしろいところです。
さて、前半はここまで。後半はローランド「Roland Boutique」やヤマハ「reface」を中心に今年のシンセ界隈を振り返ってみましょう。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ