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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画第7回

『ネットが生んだ文化(カルチャー)誰もが表現者の時代』監修者インタビュー

「ニコ厨の幸せはリア充に見られること」ドワンゴ川上量生会長

2015年11月22日 18時00分更新

文● 盛田諒 写真●Yusuke Homma(カラリスト:芳田賢明) 編集●村山剛史/ASCII.jp

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「ニコニコ超会議」に代表されるリアルイベントを積極的に開催し続ける理由は……?

ニコ動の居心地がよかったのは「リア充に見てもらえたから」
だからリア充の居心地しか考えない

── 「ネット原住民」の発想はいつごろ生まれたんですか?

川上 ニコ動を作ったとき気づいたんです。2007年に「ニコニコ宣言」を書いたとき。

── そんなに前から。

川上 ニコニコは何なのかっていうと「オタクが作って、リア充が見るもの」なんですよね。ニコ動が始まってすぐのとき、エイベックスの人から(私がやっているのを知らずに)「ニコニコ動画というめちゃくちゃ面白いサイトがあるんだ」と教えられたことがあったんです。エイベックスの人というとこれはリア充の典型みたいな人たちなんですよ。

 これは一体どういう現象なんだろうとニコ動のユーザーを集めてヒアリングしたところ、なんとニコ動を使ってる人はGoogleさえ知らない人ばかりだったんですよ。ヤフーは知っているけどGoogleは知らない。

── ニコ動はインターネット文化を知らない「普通の人」が面白がっていたというのは面白い!

川上 YouTubeに切断されて、ニコニコがID制になってから相当(普通の人は)消えたましたけどね。でも、初めは本当の初心者が見ていた。これはすごいことだなと思って。オタクの閉じていた文化がリア充の世界に浸透し、その媒体になったのが「コメント」だった。コメントで盛り上がるのがリア充のコミュニケーションに近かったんです。

── コメントは「ネットらしさ」の象徴に見えますが、実際は逆なんですね。

川上 逆ですね。ログをとってユーザーがどこから来たかを調べてみたことがあるんです。最初は2ちゃんねるのVIPPERが来て荒らしていったんですが(笑)、その後は普通のユーザーがほとんどでした。そのあとネットの記事で「二コ動が流行っている」と聞いたVIPPERが戻って「俺たちが育てた」と言いに来た。

── 育てた部分もあると思いますが、実際には一部だったと。

川上 「ニコ動はオタクのものだ」とオタクも信じてますけど、実際にはリア充のサービスだった。要はみんなが「自分のものだ」と思ってるサービスなんです。それがすごく面白かった。

 ニコ動はリア充とオタクが奇跡的にも混じりあう不思議な空間として続けてきた、それを考えてるうちに「ネット原住民」ということを考えるようになったんです。リア充とネット民がネットにおける主導権をとりあう、たぶんこれは未来に起きる現象でもあるだろうし、と。

── その考え方はサービス設計にも反映されてきたんでしょうか?

川上 うちの基本姿勢は「釣った魚にはエサはやらない」ですね。

── なんですかそれは。

川上 リア充の居心地しか考えないってことです。ぼくたちはユーザーがほんとに何を求めてるのか考えてるんですが、そこで本当の幸せは何か。ニコ動の居心地がよかったのは「リア充に見てもらえたから」なんですよ。

“ネット発の暴動”が起きない環境をつくるため
「リアルの人がネットを見てくれていると感じる」という状況を作る

── ネット原住民の幸せは「リア充に見てもらうこと」なんですか?

川上 ネット原住民には、ニコ動が「自分たちのもの」だけという錯覚がありましたけど、彼らが望んだとおりのものになったら「あれっ」という場所になっちゃう。リア充たちが居続けることがネット原住民にとっての幸せなんですよ。

── てっきり、インターネットにどっぷり浸かっている人の声を一番に汲んで設計するものなのだろうと勝手に思ってしまっていました。

川上 ニコ動が存在することで相当な人の心を救っている、そっちのほうが大事ですよね。ニコ動の環境そのものが、ある種の奇跡みたいなものなので。まあユーザーからは確実に嫌われるけど、それはいいやと。

── いいんですか。

川上 「ニコニコ超会議」もリアルなイベントということで最初は批判されたけど、いざやってみたら望んでいた人のほうが多かったことがわかった。

 本の中でも書きましたが、インターネットの歴史の中では現在は「リアルな人がツールとして使い始めて移住してきた」、要するに「リアルからネットへの侵略」がされている時代なんです。でもニコニコの場合、リアルにネットユーザーの拠点をつくって、ネットからリアルへ逆に攻めていくのが成功してるんです。最初にそれが成功したのは政治コンテンツですね。

── いきなり飛躍しましたけど、政治ですか。

川上 炎上の構造はネットとリアルの乖離が問題なんです。リアルはネットを見てないし、リアルがネットを見てないとネット民は思っているんですよ。その乖離がなくなれば、世の中の不幸も減っていくはずです。ニコ動が政治にかかわることにしたのは、その乖離を減らすためなんです。

── 政治をどうやって扱っていこうと?

川上 ニコ動としてのイデオロギーは持ってませんが、ニコ動に政治に関する役割があるとすれば「日本ではアラブの春のような暴動を起こさない」ということでしょう。いま日本で暴動や革命が起きるとしたら山谷でも釜ヶ崎でもなく間違いなくネットですよね。

── たしかに、ネットでデモの情報を見る機会はとても増えました。

川上 もともとニコニコは「2ちゃんねる」のひろゆきと一緒につくったものです。もっともネットで暴動が起きそうなところに関わっていた。ならニコ動にもネットで暴動が起きない環境をつくる使命、責任があるんじゃないかと思いました。

 じゃあなにができるかというと「リアルの人がネットを見てくれていると感じる」という状況を作ることが大事じゃないか、ということが、ぼくのとりあえずの結論だったんですね。

(次ページでは、「ニコ動前夜のドワンゴは「モバゲーをつくろうとしてた」」)

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