5年という長期保証期間にプレミアムを感じる!
ハードウェアの仕様を除き、筆者が最初、カシオ S100がプレミアム商品だと感じたのはその保証期間だった。ICT系の多くの機器が半年から1年なのに、S100の保証期間は購入日より5年との記述があった。
当初はプレミアム商品であるがゆえの長期保証期間であると錯覚したが、その後、一般的に電卓の保証期間はおおむね3~5年が多いとわかった次第だ。
さて、電卓業界では滅多に聞くことのない“プレミアム”という表現であるが、その意味合いはなかなか複雑だ。
元々、一番先に100均ショップの餌食となったIT系商品である電卓の世界には“プレミアム”という言葉は似つかわしくない言い回しだ。
「特別な」とか「上等の」などの接頭語が付く商品が一般的にはプレミアム商品とされている。そしてその程度(プレミアム度)によって相場よりかなり高い上乗せ金額を支払う価値のある商品のことを「プレミアム商品」と呼ぶのだろう。
プレミアム度をアップする企業戦略はいろいろあるが、比較的安易で昨今流行っているのは、シリアル番号付きの数量限定発売や大量生産品と差別化したカラーリングなどのわかりやすくコストにあまり響かない仕様によるプレミアムモデルだ。
しかし、カシオ S100は既存モデルの焼き直しではないので、プレミアム感を創出するのは、S100モデルの純粋な品質、デザイン力、それを裏付けて信用を勝ち取る“電卓のカシオ”の製品コンセプトやブランド力になるだろう。
開発エンジニアや商品企画者の気合や思い入れといったメンタルな部分のメディアへの露出も重要になってくる。
筆者の知る限り、電卓販売会社で新商品を発売して話題になるのはブラウンと米国のHPくらいだと思っていた。残念ながらブラウンもHPも、過去に話題となったモデルの“復刻版”の発表以外では注目を集めるのが難しくなってきているのが昨今の現実だ。
そういう意味からカシオのS100は、99%過去の遺産におんぶにだっこの復刻モデルでないところが素晴らしい。
筆者所有の電卓とキーを押し比べてみた!
筆者の個人的感覚では、ブラウン電卓のよさとカシオS100のよさはかなり異なる。ブラウンは電卓としてのミニマルデザインであり、全体のカラーリングや特徴あるM&M’sのチョコレートのようなキートップ、パワーオンオフスイッチ横の空間の美学とシンプリファイだろうと理解している。
一方、カシオ S100は電卓生産50年のカシオの製造哲学の反映商品だ。例えば、小さなキートップのいずれかのコーナーを押しても、均等にキートップ全体が見事にバランスして沈み込むこだわりだ。
同社では「V字ギアリンク構造薄型アイソレーションキー」と呼んでいる。古くからのパソコンユーザーであり、キーボードにこだわりのあるユーザーならカシオS100のアプローチは非常に納得の行く物だ。
実際にストローク動作のまったく期待できないスマホ液晶上の電卓キーボードは除いて、自宅にあった、ブラウン、キヤノン、カシオの三者の物理キーボードを使って、面白半分でストロークの均等性のテストをやってみた。
まったくの予想通りだったが、カシオ S100以外のブラウンの銘器 ET66、キヤノンの往年のベストセラー電卓 WS-1200Hはキートップの真上ではなくコーナーのどこを押してもキーは傾いて斜めになったまま押し込まれる構造だった。いずれも数字入力は問題なく、正しく押したキーの数字が入力されていた。
“キートップというものは場所を問わず、どこかが押されれば、傾くことなく静かに水平に沈み込むのが素晴らしい”という感覚は、筆者を含め多くのパソコンユーザーが抱いているいいキーボードのフィーリングだが、電卓の場合は、傾いても実際の誤入力が起こっている訳ではないので、キートップの傾きは実際には大きな問題はないはずだ。
問題は、正しく予定通りの数値が入力できたかどうかではなく、キートップが斜めに傾いたままでも入力ができることに対する不確実性からくる“入力できていないのではないか?”との不安感を操作する人間が抱いてしまうことだろう。
多くの人は外観デザインの雰囲気で、その動きに期待したりしなかったりする。筆者が、アマダナの電卓を好きになれない理由は、まさに一見してパソコンキーボードの品質を期待する外観をしているのに、実際にはキートップのどこを押しても斜めに傾いたままキー入力ができてしまう安価な電卓キーのような不釣合いさが駄目なのだ。そういう観点でみる限り、S100のキーボードは極めて秀作だといえる。
次ページへ続く、「大きくて、余裕があって、見やすい液晶表示」
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