「塚田農場のような取り組みを行っている地方のすごいスーパーがある。そこで無印良品や東急ハンズが行っているような、スマホでのO2Oマーケティングを始めようと思っている」
そう語ったのは、都内のスタートアップ企業・リレーションズの担当者。地方を舞台に、しかもスーパーというレガシーな業界で、どのような役割をスタートアップは担えるのか。またスタートアップを受け入れ、ともに先進的な取り組みを行えるスーパー側の姿勢はどのようなものなのか。
地方の一スーパーではあるものの、“なぜそこで東京の大手企業が行うようなO2O施策を実施するのか“を知ってもらうために、まずは既存のスーパー業界に対するチャレンジの姿勢を本記事では紹介したい。すでに取り組みが始まっているO2Oアプリの詳細については、近日中の掲載を予定している。
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「今、最も人気があるのは、野菜の売り切り型コーナー。火曜の朝市と週末は、テーマパークではないが、100人規模で朝から行列ができている」と語るのは、福山市にあるエブリイ緑町店の中村店長。業界20年のベテランだ。
店舗の入り口すぐにある産直コーナーの売りは、当日に収穫したばかりの鮮度抜群の“朝採れ”野菜。地元生産者が自ら店舗に納品した野菜や加工品が並び、これを目当てに買い物に来るお客も多いという。5年前から開始した産直事業の契約生産者数はすでに1200件を超えている。
契約生産者は、スマートフォンなどからリアルタイムで売り上げの確認ができる。「農家の人はスマホで実績が見られるので、かなり積極的に取り組んでもらっている。以前は売り切れになった際は電話などをしていたが、朝の売れ行きを見て、昼頃にまた納品に来てくれるようになった」(中村店長)
1997年に約17兆円あったスーパー業界の市場規模は、今や約12~13兆円とダウントレンドにある。少子高齢化による人口減もあるが、それ以上にコンビニエンスストアやドラッグストアなどの他業種にシェアを奪われ、売り上げが低迷している。
先日発表された、8月の流通各社の決算では、コンビニ上位3社が過去最高の営業利益を出すいっぽうで、大手総合スーパーなどは、閉店や業態の構造改革に追われている形が目立っていた。
そのような逆境下で、広島県福山市に本拠を置き周辺地域に店舗を広げるスーパー・エブリイは、毎年の連続成長を続けている。15年6月期の決算では、売上高606億3000万円で対前期比126.4%と、業界随一の実績を達成し、15期連続での売り上げ2桁伸長となった。経常利益も22億円で利益率3.6%と、1%台のスーパーが多いなかで特異な数字を見せている。