2013年以降5回の大規模更改/増設、ジュニパーのファブリックを採用した理由
成長し続けるDMM.comのネットワーク、その変遷を担当が語る
2015年09月08日 14時00分更新
各種エンタテインメント動画からオンラインゲーム、電子書籍まで、幅広いコンテンツの配信/販売サービスを手がけるDMM.com。ピーク時には100Gbpsを超えるサービストラフィックを支えているのは、DMM.comラボのネットワークインフラチームだ。
7月に開催された「Juniper Cloud Builder Conference 2015」では、急速に拡大し続ける同社サービスインフラと、それに対応するためのネットワークデザインの変遷、そして技術的チャレンジの数々が担当するネットワークエンジニアから語られた。
DMM.comのインフラ要件は「スピード感のあるインフラ」
DMM.comグループは、DMM.comとDMM.comラボの2社を中心に構成されている。コンテンツの買い付けや新規サービスの企画、営業などをDMM.comが担当し、サービスを提供するためのシステム開発やサイト構築、インフラの保守運用、マーケティングなどの業務はDMM.comラボが行っている。
ネットワークエンジニアであるDMM.comラボ インフラ統括本部の山田篤秀氏は、DMM.comにおけるビジネスの「スピード感」を強調する。新たなアイデアに基づくサービスが次々に投入され、人気が出たサービスには一気にリソースを集中してビジネス拡大を図る。その一方で、うまくいかなかったサービスからの撤退も珍しいことではない。スピード感のある判断が、DMM.comのビジネスを成長させてきた。
同じように、サービスを支えるインフラの展開にも「スピード感が要求される」と山田氏は証言する。「エンジニアとしてのトッププライオリティは、いち早くサービスを提供するため、スピード感を落とさずインフラを提供していくことです」(山田氏)。
とはいえ、インフラ担当者の人数は決して多くはない。“スピード感のあるインフラ提供”を実現するためには、常に新しいテクノロジーに目を向け、柔軟かつ効率的な運用を可能にするアーキテクチャを探求し続ける必要がある。これから紹介するように、それがデータセンター拡大のたびにDMM.comラボが「新たなチャレンジ」を続ける要因になっている。
2013年、柔軟性のあるデータセンターを目指し「QFabric」導入
2013年から現在(2015年7月)までの間に、DMM.comのデータセンターおよびネットワークでは5回の大幅な設計変更や拡張がなされた。山田氏は、順を追ってその変遷を説明していった。
2013年当初、2つのデータセンターのネットワークは、階層型のシンプルな構成だった。ただし、ネットワークはデータセンターごとに独立していたため「ロケーションの柔軟性が担保できない」という課題があった。さらに、新サービスの投入に応じて都度拡張してきたため、ネットワークが「数珠つなぎ」になっており、多数のベンダー機器が混在していることも問題となっていた。山田氏は「運用管理の負荷が高く、障害切り分けも難しかった」と振り返る。
サービストラフィックの増加でネットワーク機器の能力も限界に来ていたことから、DMM.comラボではデータセンターネットワークの刷新に取り組むことにした。ここでの目標は「柔軟性の高い仮想データセンターを実現し、事業展開やサービス拡張のスピードに追随できるネットワークの構築」だったと、山田氏は説明する。
ハイパフォーマンスで、なおかつシンプルな構築/運用ができるネットワークを求めた結果、採用されたのはジュニパーネットワークスによる提案だった。「MXルータの前評判が良かったのと、ジュニパーのファブリックのテクノロジーが何となく面白そうだったので」(山田氏)。
新しいネットワークでは、MX480をコアルーターに据えてハイパフォーマンス化を図る一方、データセンター内にはファブリックアーキテクチャの「QFabric」を採用し、運用管理の簡素化を狙った。また、データセンター間をVirtual Chassis(VC)で接続し、同一のファブリックに収容するというチャレンジも行っている。
「初めて触るJUNOSへの戸惑いはありましたが、(コンフィグの)コミット/ロールバックに慣れると非常に便利です。また、JUNOSでルータ/スイッチ/ファイアウォールのオペレーションを統一することができ、慣れればストレスは感じません」(山田氏)
また、従来の階層型ネットワークからQFabricへと移行した結果、管理対象のネットワーク機器が激減したうえ、レイヤー2/3の違いを考えず自由に収容できる柔軟性や、ラインカードを追加するだけで増強できる拡張性などが実現したと山田氏は説明する。