テレビのチャンネルのひとつが、パソコンになる
すでに散々言われていることではあるが、スティックPCは多彩な使いこなしが可能だ。これは仕様を最小限に留める代わりに、ディスプレーの選択を自由にし、Wi-FiやBluetoothなど無線を活用してストレージや周辺機器のとの接続も確保しているためだ。メモリーやストレージ容量を最小限に抑えており、高負荷なベンチマークテストなどは動作しないが、Windows 8.1 with Bingは問題なく動作するし、メールやブラウジング、そしてネット動画をハイビジョンで再生するといった用途ではまったく問題がない。
そして一般的なパソコンにはない自由度の高さも大きな特徴だ。「ディスプレーの選択を自由」にすると書いたが、これはやはり大きな魅力だと思う。
まず便利に感じるのは、「リビングのテレビに”パソコン”というチャンネルが増える」ことだ。大画面のテレビに差しっぱなしにしておけば、テレビのチャンネルやレコーダーに切り替えるのと同じ感覚で、パソコンの画面を呼び出せる。
今やネットの動画配信は「放送」や「パッケージメディア」と同じぐらい、「当たり前に楽しみたいコンテンツ」になっているが、それを見るためにパソコンデスクに向かう(あるいはノートを開く)というのはやはり面倒だ。
公称値は非公開だが、省電力(他社並みであれば数ワット)・静音(耳を近づければファンの音が聞こえるレベル)であるため、常時起動していても問題ない。Micro-USB給電のACアダプターの定格は5.2V/2A。つまり消費電力は10W以下。通常動作時は数ワットだろう。放っておけばスリープに入るし、All-in-One Media Keyboardのスイッチを入れてキーをクリックすれば瞬時にパソコン操作に入れるスピーディーさもいい。
パソコンを持っていく場合でも、ながら見ように持ち運びたい
また旅行や出張などに出向く機会が多い人にとっては、ホテルのテレビに差すだけで、ネットやストリーミングが楽しめるという点が魅力。出張先にパソコンを持っていく人は多いと思うので「敢えてもう1台持ち歩く必要はないのでは?」と思うかもしれないが、実際に使ってみると、手元のパソコンで作業をしながら、スティックPCでネット動画を「ながらみ」できる感覚は思いのほか快適。また、軽いBGM代わりにテレビから音楽を流すといった使い方もできて、とてもメリットがあるように感じる。
電源もMicro-USB経由でとるため、スマホの充電用に持ち運んでいるACアダプターやモバイルバッテリー(2A出力対応がいい)を流用できる。長期旅行であればスマホの充電環境も持ち運ぶ人が多いだろうから、スティックPCのためにわざわざアクセサリーを増やす必要はない。コンテンツ再生程度なら、ほぼキーボードも不要なので小型の無線マウスが1個あれば十分だろう。数年前に発表されたLogicool CubeやMicrosoft Wedge Touch Mouse(Bluetooth対応)など超小型の製品があるといい。似たような製品の登場を期待したい。
小型でもパソコンであるので、YouTubeやニコニコ動画といった動画共有サイトはもちろん、スマホだけでなくPCでも楽しめる「dアニメストア」、各種ネットラジオ、SLINGBOXに代表される、自宅のチューナー/レコーダーで再生中の番組をネット配信する周辺機器との組み合わせなど、楽しめるコンテンツはかなり豊富だ。
さらに、HDMI端子を持つ機器であれば大抵のものに出画できるので、ポータブルプロジェクターに直接差して大画面で楽しむ、あるいは営業先でちょっとテレビを借りて作業やプレゼンをするといった、点と点をつなぐような利用方法も便利。
ノートを1台持ち運ぶよりも圧倒的に少ない荷物でパソコンの環境を持ち運べるし、OfficeファイルなどはOneDriveやDropboxなどを使って同期すればいい。通信回線の確保はスマホのテザリングやWi-Fiルーターなどを使えばいい。タブレット・スマホ用の周辺機器・アクセサリー類は市場に本当にたくさん存在している。荷物が増えるから、外出先ではちょっと不満があるけど、スマホ中心に済ませているという人も、カバンにスティックPCを加えてみてはどうか。仕事やできる作業の幅がかなり広がるはずだ。