四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第145回
チューニングの世界に革新を起こしてきたメーカーに聞く
コルグのチューナーはケンカから誕生、歴代製品を技術者と振り返る
2015年07月04日 12時00分更新
音楽をやっている人なら、お世話になっているはずのチューナー。特に弦や管の人には、楽器と同じくらい、なくてはならないもの。しかしチューナーの新製品が出たからといって、我々のようなメディアでは、なかなか取り上げることはできない。
ところが、ダジャレを全力で商品化した「チュナ缶」を出してくれたおかげで、我々はやっとその機会を得た。コルグは1975年に世界初の針式メーターのチューナーを開発し、それ以降世界のチューニング事情に変革をもたらした、偉大なメーカーなのである。チュナ缶はその40年の歴史を記念して作られたものなのだ。
新しいチューナーはどのように企画され、どんな技術を使って、どう開発されているのか。これまでの歴史をおさらいしつつ、真面目なチューナーの話も聞かせていただこうと思ったのだった。
第一号機「WT-10」誕生(1975年-1983年)
―― コルグさんがチューナー第一号機のWT-10を出す前は、どんな状況だったんでしょう?
肥後 当時のストロボ式チューナーは、数十万円から数百万円するというもので、アマチュアには手が出せない……というか出そうと思わないですよね、高すぎて。それが2万円で買えるというのが、当時としては画期的だったんですね。一般の楽器演奏をされる方ですとか、学校の音楽室に一台ずつ購入して設置していただけたという話は聞いています。
―― その時代にチューナーに対するニーズというのはあったんですか?
肥後 ケンカになるらしいんですね。「お前が合ってないんだろ!」「いや、オレが正しいんだ!」みたいな。それを機械を使って客観的に決められたら、ケンカもなくなるんじゃないかと。
―― なるほど。チューナー開発はどなたの発案ですか?
肥後 当時の社長で、創業者の加藤 孟氏(故人)です。そういうチューニングの話を聞いて、じゃあ作ろうと。でもゴーをかけてから完成するまでに5年くらいかかったらしいんですよ。
―― WT-10の発売後は、程なくしてギター用のチューナーが出ていますね。
肥後 WT-10は12音が測れたんですが、ギタリストからは「弦は6本しか無いから、12音もいらない」という話があったらしいんです。それでギター用の「GT-6」ができました。スイッチ6個だけにすると、値段も安くできて、8500円でした。その後、83年に「AT-12」というオートチューナーが出ています。それまでロータリースイッチをカチャカチャ回して、合わせる音を選んでいたんですが、その操作もいらなくなったわけです。
(次ページでは、「表示は針から液晶、センサーはピエゾへ」)
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