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佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第12回

東京芸術劇場で荘厳なオルガンの雰囲気に圧倒される (5/6)

2015年06月11日 09時00分更新

文● 編集部、聞き手●佐武宇綺

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鼓膜は筋肉のように鍛えられない、だから保険も

佐武 普段から素敵な響きを体で感じていらっしゃるお二人ですが、プライベートでも音楽はお聞きになるんですか?

前田 私は大好きですね。気分に応じてコンポやiPodのような携帯プレーヤー、ターンテーブルなどを使い分けますし、実は祖父からもらった蓄音機も自宅にあって時々回しています。

佐武 えっ!? 蓄音機を手で回すんですか。

前田 はい。電気じゃなくて手で回すんです(笑)。蓄音機時代の分厚いSP盤があって、場所を取るしかさばるんですが、ほかの再生機器とはぜんぜん違う音で聴いてみると驚きますよ。すごい音がします。シンプルなシステムで電気も介さず、純粋な振動だけで再生するのですが、音も予想以上に大きくて生々しい。フルトヴェングラーの古いオーケストラのアルバムなどをたまに聴くのですが。

佐武 どんな音がするんだろう!? 聴いたことがないから想像できないです!!!!

石丸 私も音楽は大好きなんですが、仕事以外はなるべく耳を休ませるようにしています。鼓膜は筋肉と違って鍛えるわけにいかないので。仕事で録音室にこもってモニタースピーカーの音を集中して聴いたり、自宅でも効果音を作ったりする作業をします。逆に自宅のリビングに置くスピーカーは小型で音もなるべく絞り、翌朝、職場に来る際にはベストなコンディションで臨めるよう気を使っています。

佐武 すご~い! プロの発言です!!

石丸 残念ながら鼓膜は年齢とともに衰えていくものなので、なるべく温存。仕事以外ではヘッドフォンも使いません。

佐武 耳が疲れないように。ケアもされるんですか?

石丸 商売道具ですからね。年に1回、耳鼻科の検診を受けて、保険にも入っています。

佐武 保険? 耳の保険があるんですか!?

石丸 はい。パーツモデルは手や足に保険をかけますよね。それと同じです。

佐武 すごいです! まさにプロ。私も喉にかければよかった~(笑)。本当にすごい話を聴きました。

本物の音が伝わっていないというのは残念なこと

佐武 今回のホールは神々しいというか、普段私が立っているステージとは世界観が違うなって思いました。

石丸 はい。もちろんそのイメージは崩したくないのですが、一方で気軽に楽しんでほしいとも思っています。残念なのは現代では、生の演奏を聴く機会が少しずつ減ってきているのではないかと思うことです。これはどこのホールでも聞く話なのですが、終演後、「今日の演奏は低音が足りなかった」というコメントがお客様から出るのだそうです。「うちのシステムで聴いているときはもっとティンパニーがドーンと前にくるのに」と。こういうクレームが実際に来るんです。そんなときは「こっちが本当だよ」と言いたくなります。CDレコーディングは、楽器のそばにマイクを置いて録音していますから、演奏会の音ではないんです。

佐武 ミキシングしたり、調整できますものね。

石丸 だからCDだけを聴いて、クラシックはこういうものだと思ってしまうのは残念です。少し怖いことだなとも思います。生を体験する機会をもってほしい。これはロックやポップスのライブだって同じだと思うんです。本物のドラムセットの前で音を聴くと、フレームが震えて、スネアがジージーなったりしますよね。これはノイズじゃないかって指摘されたりするんですが、そうではない。サンプリング音源しか聴いてないからそう感じるのですね。劇場でもライブハウスでもコンサートホールでもいい。情報ではなく生の体験を得られる場所に脚を運んでほしいのです。

佐武 とても共感できます。ライブで歌っていると、CDを聴きなれたファンから歌い方変えてない?って言われたりするんです。やはり声を入れることに集中しているレコーディングと違って、ライブは踊りながら歌っているので声が変わってきますよね。それはライブならではのパフォーマンスでもあるので、生の体験を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

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