情報量の増加は空間をより真実味あふれて再現する
取材では、テレビ放送とBlu-ray Disc用のハイビジョン映像2種と、4K映像4種を使ったデモを見ることもできた。LC-80XU30の超解像技術“X8-Master Engine PRO”では、4Kの映像は8Kに、2Kの映像では一度4Kにコンバートした上で8Kにコンバートされる仕組みだ。
実写映画やドラマに始まり、CGや自然の風景、ライブ演奏など豊富なソースを見て感じられるのは、8Kの情報量がより的確に現実を再現していく様子だ。人物は顔の凹凸や肌のそばかす、髪の毛の質感などディティールが豊かで背景に立体的に浮き立つ。実につける衣装の柔らかな質感、そしてアクセサリーの輝きといったものの対比がリアルに再現される。
シーンが自然となるとたとえば列車が走る線路の砂利に枯れ木や枯れ草が混じっていることが如実にわかる。従来のテレビでは一体化してわからないような細かな状態が明確になるとともに、手前からはるか遠くにつながる砂利の質感の推移から、風景の広大さを感じ、さらに金属でできた列車の克明な描写と光沢から質感や重量感を感じるといった具合だ。
8Kの精細さは書かれた文字や2Kクラスでは解像度不足からジャギーが出てしまうような斜め線の描写などから感じ取れる。超解像のアルゴリズムのできにも関係する部分だが、単に滑らかに線をつなぐだけでなく、低解像度の映像を高解像度に変換する際に線の細さまで配慮した処理が映像の緻密さを高めていることがわかる。
映像の立体感に関しては、コントラストの処理によるところも大きい。たとえばコンサートホールでのクラシックの演奏では、ライトアップしたステージの前で、暗がりでそれを見つめる観客がつぶれず細かな階調が残っている。これが手前から奥へとつながる距離感をより認識しやすくし、ホールの広さを正確に感じさせる。同様にCGで書かれた星空の映像でも、ちょっとした光漏れで弱い星の輝きがスポイルされることなく適切な明るさで再現されるため、立体感に大きな差が出る。
8K相当の映像の魅力は2Kのソースでも伝わってくる。オブリビオンのブルーレイにおける暗室のシーンでは、黒に近い暗部の微細なニュアンスも殺さずに残す。HDRによって闇の中での緊張感や心細さ、恐怖といった感情がより伝わる。また湖のシーンでは湖面の反射の表現、奥の林と芝生のディティールの対比といった部分が広大な距離感を演出し、カメラワークで人物にフォーカスを変えて表情を追う演出でも視線が進み、ボケから人物にぴたりとピントが会うまでの動きに強く関心が向かう。映画監督が映像にこめた意図がよりいっそう明確となる。