色再現、そして臨場感を高めるHDR
8K時代を見据えたLC-80XU30の特徴のひとつに、Ultra HDの色域規格であるBT.2020への取り組みがある。BT.2020はBlu-ray Discなどで用いられているBT.709に対して70%以上広く、これをカバーできる製品はいまのところ存在しない。バックライトにレーザー光源を利用した三菱電機のREAL LS1シリーズなど独自のアプローチで色域の拡大に取り組んでいるメーカーもあるが、まだまだ技術的なハードルが高い領域だ。
そんな中、LC-80XU30では、4K放送対応の「AQUOS UD20」(関連記事)でもこだわった“広演色”のコンセプトをさらに進めている。RGB+Yというクアトロンの特徴を生かし、さらにLEDバックライトの波長も変えることでより広い色域の再現に取り組んでいるのだ。
新開発の高色再現型LEDでは、青色LEDに一般的な黄色蛍光体を組み合わせるのではなく、緑色と赤色の蛍光体を組み合わせて作った黄色を組み合わせて白を再現。さらに緑と赤の領域を従来より広くシフトしている。特に緑の領域を大きくシフトしているが、これはシアン方向の再現性を高めるためだ。
「SOCS(標準物体色分光データベース)という自然界に存在する色を記録しているデータベースで見た場合、グリーンの領域をBT.2020の範囲まで広げた色の遭遇頻度は少なく、そうそうない色だが、シアンの領域は発生している」(小池氏)とのこと。ただし、単純にグリーンだけをずらしてしまうと黄色方向が欠落してしまう。しかしそこは黄色のサブピクセルを持つクアトロンであるため、黄色を保持しながらシアンのカバー率も広げられる。
「色の発生頻度も考慮したBT.2020のカバー率では他社を上回れるという自負がある」(小池氏)とする。
奥行きや臨場感に関係するコントラストに関しては“輝き検出技術”に“直下型のエリア駆動バックライト”を組み合わせ、リアルタイムで映像補正(輝度復元)するダイナミックレンジ拡張技術(HDR)が特徴となる。
これはメガコントラストと呼んでいるもので、2011年発売の3Dクアトロン「LC-70X5」(関連記事)で採用した技術を4Kパネル用にブラッシュアップして採用したものだという。
自然界には太陽や照明の光がフラットに当たった反射光とイルミネーションや炎のような自発光の2種類が存在するが、“輝き検出”という信号処理で自発光を検出し、光っている部分のバックライトをより強くすることでより自然の見た目に近い輝きを再現するというものだ。全ピクセルのヒストグラム解析にシーン解析を組み合わせ、全体に暗い画面で一部分だけ振幅が大きい信号があるなど、複数の条件を満たすものだけを検出する仕組み。HDRの情報がなくても機能する。
「バックライトのエリア駆動は、微妙な光りはじめの部分のディティールと、コントラストの戦いという面がある。ここには4年前からやっているノウハウが生きている。暗い階調を保持しながら黒を締めるバランスが難しい」(小池氏)