目指すのは本物感、スペックではなく現実の追求が目標
「テレビは“Television”の略。つまり遠く(Tele)のものを居ながらにして見られる(Vision)ということ。だから、究極の目的は遠くにある現実を、どれだけリアルに見せるかが究極の目的です」
商品企画を担当するシャープの指出 実氏はそんな風に語る。この“本物感の追求”はそのままAQUOS 4K NEXTのコンセプトを体現している。
LC-80XU30の特徴となる技術には、4原色技術を用いた4Kパネルで8K相当の画質を実現することに加えて、“X8-Master Engine PRO”と名付けられた2K→4K→8Kへの超解像技術、BT.2020の色空間にどれだけ近付けるかを目指した“高演色リッチカラーテクノロジー”、バックライトのエリア駆動と輝きを検知する映像解析技術を組み合わせた“「メガコントラスト」ダイナミックレンジ拡張技術”などが挙げられる。
これらは高画質なテレビに求められる、解像感・色再現・コントラストといった要素を支えるものである。ただしその根底に、現実をテレビ画面に再現し、あたかもその場にいるような臨場感や奥行きを感じさせたいというシャープの想いがある点も忘れてはならない。
「CEATECやCESといった全世界の展示会に8Kのテレビを出展しているが、その映像を目の当たりにした人から『これは3Dなのか?』という質問を受ける機会が非常に多かったんです。8Kの映像は立体的で奥行きを感じると」(画質開発を担当する小池 晃氏)
8Kというと情報量の豊富さや映像の精細さが高まるという部分に関心がいきがちだ。しかし実際にその映像に接すると、テレビの中心にぐっと引き込まれるような感覚、対象が背景に立体的に浮き立つような遠近感に目を奪われることが多い。ハイビジョン映像と4K、そして8K映像の違いはここである。
これは自然界に近い色を表示することによる実体感(色再現)、輝きや影の明暗を描ききることによる立体感(コントラスト)によるものだ。
そして現実を描き切るためにシャープが重視しているポイントとして“均一性”がある。80型以上の大画面パネルでも輝度にムラがなく四隅や上下に落ち込みが生じないという点だ。いかに情報量が多くても、輝度にムラが出ればゆがんだ形に対象が見えてしまう。これは絵画であれば平らでない紙やキャンバスに絵を描くようなものだ。遠近感が狂い、違和感が生じる。どんなに高精細なパネルを用意しても自然を適切に描き切ることができない。
AQUOSが、THX認証取得に向けた過去の取り組みで一定の成果を挙げ続けてこれたのは、この均一性の賜物だったと小池氏も振り返る。
80型という画面サイズにもシャープならではの考え方がある。フルハイビジョンのテレビが登場した際、最適な視聴距離はテレビの高さの3倍(3H)とされた。縦横で2倍の解像度を持つ4Kテレビでは、これよりもさらに近い、高さの1.5倍(1.5H)が最適な距離とされるが、一般的な家庭でテレビの視聴距離は2~2.5m程度が平均的で、これは六畳間の短辺とほぼ同等となる。
1.5Hに当てはめるなら、65インチの4Kテレビでも1.2mの距離まで近づける計算となる。しかし、通常部屋の中央に置かれるテーブルをどけてまでテレビに近づくことはあまりないため、2~2.5mというテレビと視聴位置の関係は変わらない。その上で人間が鋭敏に知覚できる水平30度、垂直20度の画角いっぱいに画面を入れようとすると52~70型が最適になる。それを一段上回るサイズが80型というわけだ。