洛天依は“食いしん坊”、言和は“お風呂好き”
代表曲で作られたイメージ
――市場データや統計がないのは承知の上で、中国でボカロが好きな人、好きになりそうな人が、中国で6億人いるインターネット人口のうちのだいたいどれくらいいるでしょうか?
任力氏「ボーカロイドに関して、特に初音ミクなど有名なキャラクター、または有名な楽曲に対し、幼稚園の園児からかなりご年配の方まで知っておりますが、我々が対象とするメインの範囲で言えば、中国で15才~25才の人口は約2億人おります。現在の洛天依や言和の知名度は、少なくとも数百万人はいるかと存じます」
――「洛天依」と「言和」について教えてください
任力氏「ヤマハさんにより、世界ではじめて中国語を歌うボーカロイドキャラクターの洛天依が誕生しました。翌年、上海禾念はさらに2人目のボーカロイド歌姫である言和を“YANHE PROJECT”として誕生させました」
「洛天依はキャラクターを募集した際に1700枚の募集があり、5人のイメージキャラクターができました。その後に音源を付け加えましたが、声は声優の山新さん、原画(このときは“雅音宮羽”という名称)の絵師は中国在住のMOTHさん、最終のキャラデザインはIdeoroさんです」
「最初、キャラクターを5人に絞って、その中で3人が女性、2人が男性だったのですが、カップルの設定やガールズラブの設定がファンの界隈で盛り上がりました。中国の動画サイトや微博(マイクロブログ)上で、若者が自分たちで作品を作り、伝播していって、いろんな設定が膨らんでいるようです」
「一方の言和は、洛天依とまた別の世界観の設定をし、ボーイシュな声と活溌な性格設定で、真新しいキャラクターとして人気を集めています」
「洛天依の人気曲は、“千年食譜”や“三月雨”“前程如梦”“66ccff”などがあり、また言和人気曲は“夢之雨”“New Born”“洗澡歌”“茉莉花開”などがあります。中国の動画サイトで検索していただくと、多くの関連PVがあり、現状の雰囲気かわかるかと思います」
「初音ミクにはネギを持つイメージがありますが、洛天依の千年食譜という作品は中国各地のおいしいものをテーマにしており、洛天依は食いしん坊というイメージが定着しました。食事は人気のジャンルですからね。この曲がとてもヒットして再生回数が100万回を超えました。また洛天依は青色なので、このカラーコードである66ffccという曲も人気で再生回数も多かったですね」
「また言和においても、人気の曲“洗澡歌”(お風呂の歌)の影響でお風呂好きのイメージができました」
――中国の環境でクリエイティブなコンテンツを作れるソフトが評価され、使われるというのは、なかなか難しそうなイメージがあります。たとえばフォトレタッチソフトであれば、美顔にする目的がありますが、ボーカロイドが面白いというのを伝えるのはなかなか難しくないですか?
任力氏「まさにそこが一番難しいです。中国でも新しい作品などは出てきております。ただし、音楽制作、音楽教育などは、まだまだの部分もあることも事実です。我が社として、多くのオリジナル作品をユーザから投稿いただき、それらをみなさんにお見せしていますし、新たにクリエイターの自己表現の場として「VOCANESE」というプラットフォームを立ち上げています」
「VOCANESEでは、複数都市の数十の大学でイベントを行ない、音楽だけでなく、イラストでもコスプレでも何でも作品に関わるものを紹介していきます。また3月に行なわれる韓国のSeeU(3Dの映像コンサート)のイベントでは、2曲を言和が歌うことが決まっています」
――ボーカロイドの日本と中国の差別化はクリエイターは考えているのでしょうか?
任力氏「キャラクターそのものの特徴などは必要ですが、私達は差別化などを特に考えておらず、最初から中国の文化に合うキャラクターとその音楽文化を展開するつもりでした」
「イラストに関しては、日本風でも、中国風でも、ロックでもなんでも、バラエティーが多いほどいいことかと思っております。中国語が歌えるキャラクターは洛天依と言和だけで、中国人の創作者を大事にすることだけを考えています。それは、クリエイターの国際交流を含め、いいものを取り上げて全体をレベルアップさせ、一般の人たちでもボーカロイドを一種の娯楽文化として受け入れられることを目標にしております」
――コラボレーションなどはありますか?
任力氏「昨年、我々は中国で初めてボーカロイドと映画とのタイアップを実現しました。“我為相親狂”という映画がありまして、それはネットを通じたバーチャルな世界が主な舞台の出会いをテーマにしたコメディ映画なのですが、映画監督は、音楽もバーチャルがいいだろうということで、エンディングテーマでは洛天依と言和が歌っています」
「監督は日本の初音ミクを知っていたので、我々に声をかけていただきました。また中国でのゲームベンダー大手の“盛大”と戦略的提携をしまして、“ドラゴンネスト”(中国名:龍之谷)というゲームに、ボーカロイドキャラクターを提供しました。今後、いろんな作品もまた出てくるかと思います。すでにゲーム内で“洛天依軍団”ができて、歌も作られましたよ」
日本と中国のボカロがコラボ!?
百度で洛天依や言和を検索すると、徐々にコンテンツが増えていっているようだ。日本のやり方を真似るような既存のボーカロイドファンだけでなく、新たに大学でのキャンペーンで知った人々や口コミで知った人、それに映画やオンラインゲームで知った人もコンテンツを見に来ているだろう。
現状、中国のボカロカルチャーは日本のそれに近いが、新参者の参戦で日本とは異なるボカロカルチャーができるのか、はたまた日本に似たボカロカルチャーをキープするのか将来が楽しみだ。日本のボカロとのさまざまなコラボレーションができるのか、楽しみである。
※VOCALOID(ボーカロイド)/ボカロはヤマハ株式会社の登録商標です
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。

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