写真をプリントしたいのに、印刷しない
その背景には、興味深いデータの存在が見逃せない。
同社が、写真をプリントする頻度を調査したところ、プリントをしないとした人は19.7%、年に1回以下が36.7%、数カ月に1回程度が32.3%となっており、月に1回以上と回答した人はわずか11.3%と、1割に留まった。
年賀状だけを印刷するためにプリンタを購入するという人が多いのは事実だが、この調査では、日常の写真印刷で利用するといった人が、ここまで少ないという実体が明らかになったといえよう。
だが、「お気に入りの写真は、プリントしたいと思うか」との質問には、「そう思う」、
「まあそう思う」と回答した人は63.5%と、約3分の2を占めたのだ。
川崎社長は、「写真をプリントすることに価値を感じている人が多いのにも関わらず、プリントをしない。ここに大きな乖離がある」とする。
さらに同社では、プリントしない理由を調査したところ、「写真を選ぶのが手間」が51.0%、「パソコンを経由するのが面倒」が46.1%、「いくつもある保存先からプリントするのが面倒」が42.0%、「保存先からのプリント方法が難しい」が40.0%となった。そのほかにも、「クラウドやスマホに対応していない」、「プリントするお店が遠い」などの声もあがっている。いずれにしろ、「手間」や「面倒」といったことが、写真をプリントしない理由にあがっているのだ。
今年の新製品で搭載した「新PIXUSクラウドリンク」では、写真共有サイトや、ストレージサービス、プリントコンテンツを提供して、クラウド上に写真データを保管し、どこからも、どんなデバイスからも整理しやすく、データを取り出しやすい環境を構築。「PIXUS Print」では、スマホやタブレットから、簡単にプリント操作ができるようにしているのが特徴だ。
このように、「手間」や「面倒」を解消するための機能強化に取り組み、さらに、スマホやタブレット、そしてSNSとの連携などを強化しているのが、今年のPIXUSというわけだ。 コミュニケーションパートナーには、昨年に引き続き、桐谷美玲さんを起用。Facebookの「いいね!」を示すポーズをしながら、「いいねー!」と、写真プリントにすることで得られる感動を、抑揚をつけた形で表現。「どんな写真も、かんたんキレイで、いいねー!」と訴える。
新しい利用シーンが提案できなければ衰退の道をたどる
川崎社長は、「写真文化の発展と写真事業の創造は、今後もキヤノンに任せてほしい」と語る。それは、スマホやタブレット、SNSの時代における、写真プリントの新たな提案を、キヤノンが率先して取り組みという宣言だともいえよう。
国内のインクジェットプリンタ市場は、2012年が年間550万台であったのに対し、2013年は517万台と縮小が見込まれている。
スマホ時代、タブレット時代における写真プリントの提案が成功しなれば、今後もプリンタの出荷台数は減少傾向を辿り、インクの使用量も減少することになる。
今年のキヤノンのプリンタ新製品は、新たな時代におけるプリンタ利用の姿を提案する重要な意味を持つといえそうだ。

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