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T教授の「戦略的衝動買い」 第224回

クラウド時代のPCレススキャナー「ADS-2500W」を納得買い!

2012年12月26日 12時00分更新

文● T教授、撮影● T教授

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来るべき2013年のトレンドはPCレスのクラウドダイレクトになるか!?

 クラウドコンピューティング時代になって、ドキュメントスキャナーを取り囲む環境も大きく変化してきた。従来、PCを唯一無比のコアとして接続され、PC中心のスター型配置に甘んじていた周辺機器の多くが、自分たちのすぐ横に存在したPCとの接続から、ネットの先の「クラウドサービスとの接続」を本命だと考えるようになったからだ。

 ネットワークスピードがまだまだ遅かった15年くらい昔、PCとの同期で一世風靡したPDA「Palm Pilot」は、PCとケーブル経由で同期することで、内蔵データの更新や同期を実現した。2007年に米国で発売されたSDメモリーカードにWi-Fi機能を取り込んだ「Eye-Fi」は、デジカメからカードを取り出すことなく、無線LANにより撮影画像をPCに転送できる機能を実現した。

 しかし、昨今の急激なネットワークスピードの高速化と低価格化は、これら周辺機器とPCの、接続スタイルや関係に大きな変化をもたらした。従来は「PC周辺機器」という名前のとおり、PCを中心として主従関係を結んでいた周辺機器が、いまやPCと同格の位置となり、PCを介することなく、直接インターネット上のサービスと直結する時代となった。

 2012年夏に発売された「KYBER SmartCardBox」は、スキャンした名刺データを直接クラウド上のOCRサーバーに送信して、ハードウエアOCRとヒューマンリソース(人力)OCRのハイブリッド処理により、なんと100%の認識精度を実現している。名刺データの活用は、PCでもスマホでも平等にできる、ごく普通のクラウドのサービスだ。

 またサムスン注目の一品である「GALAXY Camera」はPCを経由することなく、撮影した画像を直接Wi-Fi機能によりクラウドストレージ「Dropbox」に自動アップロードすることが標準仕様となっている、クラウド直結デジタルカメラだ。

 残念ながらまだ日本では未発売だが、北欧Anoto社の先進テクノロジーを活用した、手書きの文字や画像、録音を記録するLiviscribe社の「Wi-Fiデジタルペン」という製品もある。こちらもPCを経由することなく、ペン内部に蓄積したマルチメディアデータを直接、「Evernote」などに送信できるWi-Fi内蔵デジタルペンだ。

 読者諸兄もご存知のように、すでにスマートフォンのデータバックアップやリストアは、もはやPCの役目ではなくなり、クラウドに直接バックアップされるようになって久しい。EvernoteやDropbox、Google Docを筆頭に、ここ数年増加の一途をたどるクラウドストレージサービスは、もはやPCのためのサービスだけではない。PC周辺機器と呼ばれたスキャナーやデジタルカメラ、デジタルペンなど、ほとんどの入力デバイスをダイレクトに受け入れる、名実ともにクラウドサービスへと成長した。

 さまざまな理由で新しいグローバルトレンドには乗り遅れることの多い国内企業だが、ベストタイミングで市場参入したのが、PC周辺機器の老舗のひとつであるブラザーだ。今回は、同社が「PCレス」をメインテーマに発売したドキュメントスキャナー「ADS-2500W」をご紹介したい。

スキャンデータをダイレクトにクラウドへ
その機能だけに価値を見いだす

ホッパーになる前面の蓋の中央部分は、タッチ操作の液晶パネルが見えるようにブラックなクリアプラスティックになっている

 ADS-2500Wが他社のスキャナーと大きく違う特徴は、PCを使わずクラウドサービスに直接スキャンデータをアップロードできることだ。もちろん基本的な機能にも抜かりはない。ADF機能で一度に50枚の原稿をセットでき、1分間に24枚(48面)を高速スキャンできる。

 しかしこれだけでは、電子書籍貧困国の自炊派スキャナーユーザーにとっては朗報でも、筆者にとってはそれほどのありがたみのない話だ。スキャナーを単純に馬力だけで競うのは、過去のアメ車やバブル期の国産乗用車と同じだ。今やクルマの世界も評価基準は大きく変化してきている。多くの周辺機器メーカーは、ずっと長くPCというご主人様がいたので、いまだにムーアの法則をトレースしているのかもしれない。


「戦略的衝動買い」とは?

 そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。

 それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。

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