デルが2012年9月に発表した「PowerEdge C8000シリーズ(以下、C8000)」は4Uの筐体に、CPU、GPU、ストレージなど目的にあわせたモジュールを挿入できるユニークなサーバー。共有インフラの構築に最適という同製品の魅力についてデルの木村一仁氏に聞いた。
累計出荷台数100万台突破!デルのデータセンターサーバー
ITリソースを集約したデータセンターやクラウドプロバイダーは年々大規模化しており、その購買パワーはベンダーの製品戦略に大きな影響を与えてきている。特に数万台規模のサーバーを擁するWebジャイアンツなどで調達されるサーバーであれば、ユーザーの要件に合わせて細かくカスタマイズしても十分に元が取れる。こうした「ハイパースケール(超大規模)」と呼ばれる規模の市場に対して、古くからオリジナルサーバーを提供してきたのが、デルだ。
デル マーケティング統括本部 サーバ・ストレージ・ネットワークマーケティング本部 サーバブランドマネージャの木村一仁氏は、「2007年にCEOのマイケル・デルによる特命チームが設立され、超大規模なデータセンター向けのカスタマイズされたサーバーを開発するビジネスがスタートしました。それから5年で、マイクロソフトやフェイスブック、イーベイなど米国の名だたる事業者に導入していただきました」と語る。DCSと呼ばれるカスタマイズされたサーバーの種別はすでに20種類以上で、累計出荷台数は先日100万台の出荷を達成したという。
こうした施策を長らく進めてきたデルは、これらのカスタマイズサーバーのベストセラー機に型番を付けて提供している。「ハイパースケールの市場は数万台規模のオーダーですが、より小さい数千台単位で売れないかということで、PowerEdgeブランドに追加したものです」。Cloudの"C"を冠した「PowerEdge Cシリーズ」だ。インフラの共有を前提に、高い集積密度や省エネ性能、そして低廉な価格を特に重視して作られたモジュラー型サーバーになる。木村氏は、「ハイパースケール市場での知見やノウハウを得て、よりエントリとなる市場の製品開発に役立てています。他社とは進化のベクトルが違うんです」と語る。
複数スレッドを混在できるC8000
PowerEdge Cシリーズは、シャーシに複数のサーバーノード(スレッド)を挿入するモジュール型サーバーを中心に、複数のモデルが展開されている。2U筐体に4ノードを搭載できる「C6220」のほか、AMD Opteronを搭載する「C6145」、Xeon E3ノードを複数搭載できる「C5220」のほか、GPU向けのPCIe拡張シャーシ「C410x」なども用意されている。「昨年の第3四半期に調査会社のIDCが「Density Optimized Server」という新しいサーバーのジャンルを作りました。ある意味、弊社の製品が好調なことを受けて作られたのですが、第4四半期ではシェアNo.1となりました。しかも競合のシェアを合算しても、届かないシェア率ということで、圧倒的です」(木村氏)とのこと。
この勢いをかって9月にリリースされたC8000は、4Uのシャーシに複数のスレッドを挿入するタイプの高密度型サーバーになる。シャーシには合計10のスロットが用意され、シングルワイドか、ダブルワイドのスレッドを挿入できる。また、モジュール型サーバーとして、電源やファンは共用する。特に冷却ファンは背面に3つの大型ファンが搭載されており、電力や冷却コストの削減に寄与している。
最大の特徴はやはり複数のスレッドを組み合わせられる点だ。大きく計算重視、GPU重視、ストレージ重視の3つの用途が想定されており、この用途に合わせてXeon E5-2600搭載のシングルワイドの計算スレッド、CPUとGPU、ストレージを搭載するダブルワイドの計算/GPUスレッド、SSD、SAS HDD、SATA HDDなどを混在できるダブルワイドのストレージスレッド、そして電源スレッドが用意されている。HPCの超高密度演算であれば、計算スレッドを複数台、ビッグデータのストレージを想定するのであれば、ストレージスレッドを搭載すればよい。「リファレンスアーキテクチャもありますので、これら3つのスレッドをいかに選択するかが重要です。異なるスレッドを混在させることも可能です」(木下氏)。
運用においてのメリットとしては、スレッドの交換やネットワークの結線などがすべて前面から可能な点だ。こうした前面保守への対応はエンジニアにとって作業がしやすいだけではなく、「データセンターにおいては前面がいわゆるコールドアイルになります。今後、外気冷却の導入が進むと、背面のホットアイル側ではますます高温になり保守作業が厳しくなります」(木村氏)という面もあるという。
こうした尖ったサーバーとして想定されるのは、もちろんデータセンターだ。特にデータセンターの設計から入る事業者やフルマネージドホスティングを前提としたプロバイダーなどがユーザーとして想定されるという。木村氏は、「運用管理の最適化やハードウェアの冗長化に注力しているブレードサーバーに対し、CシリーズではBMCやIPMIで直接管理してもらう製品で、冗長化もソフトウェアベースです。F1のようにプロフェッショナルがチューンして使う素材のような製品ですね」と話す。スレッドの自由度や省エネ性能などを訴求し、データセンターに提案していくという。