シャープは、三重県亀山市の亀山第2工場において、世界で初めて酸化物半導体「IGZO」を採用した新たな液晶パネルの本格量産を開始すると発表した。開始時期は2012年4月から。
IGZOは、薄膜トランジスタ(TFT)にアモルファスシリコンを採用した液晶パネルに比べて、電子移動度(固体の物質中での電子の移動のしやすさを示す量)が高いことから、TFTの高機能化を実現。これにより、薄膜トランジスタの小型化、配線の細線化が可能になり、同等の透過率で2倍の高精細化を達成できる。
さらに、データの書き込みが必要ない限り、1/5分〜1/2秒に書き込む新規駆動法(休止駆動)を採用。従来の液晶が1/60〜1/30秒に1回データ書き込むのに比べて、TFTを駆動する回数を大幅に削減。結果として消費電力を1/5〜1/10に削減できる。
加えて、TFTの休止駆動の活用により、駆動による発生するノイズを低減。この結果、タッチパネルの検出精度を高められるという。
シャープ 執行役員ディスプレイデバイス事業本部・方志教和事業本部長は、「IGZO液晶は、高精細化、低消費電力化、タッチパネルの高性能化が特徴になる」とした。
シャープでは、3月からIGZO液晶の生産を亀山第2工場で開始。4月から本格的な量産を開始する。
亀山第2工場は、2006年から第8世代のテレビ向け液晶パネルを生産していたが、小中型向け液晶パネルの生産ラインへの転換を図っており、「2012年度下期には、亀山第2工場の生産能力の7〜8割程度がIGZO液晶になる」としている。
タブレット端末向けには、すでに外部企業に量産供給を開始しており、さらに液晶ディスプレーや、高精細ノートPC向けにもIGZO液晶を供給する考えを示した。
シャープでも、年度内に自社製タブレット端末や液晶ディスプレーにIGZO液晶を採用する考えだ。
「当面は、高精細化を求める企業にIGZO液晶を展開することになるが、小中型高精細パネルに対する需要は旺盛であり、最終的にはIGZOがアモルファスシリコンにとって代わることも考えられる」(方志執行役員)と語っている。
方志執行役員は、「シャープが持つ材料技術とプロセス技術によって実現したもの」と胸を張った。
4K画質の32型パネル、800×1280ドットの7型パネル、
2560×1600の10型パネルを公開
今回、サンプルとして3種類のパネルを公開した。
液晶ディスプレー向けの32型液晶パネルは、4K2K画質となる画素数3840×2160ドットのQFHD(Quad Full HD、16:9)で、画素密度は約140ppi。高精細ノートPC向けの10型液晶パネルは、画素数が2560×1600ドット(WQXGA、16:10)、画素密度は約300ppi。そして、タブレット端末向けの7型液晶パネルは、画素数1280×800ドット(WXGA、16:10)で、画素密度は約217ppiとしている。
液晶ディスプレー向けには、「32型以上のパネルの生産も可能だが、第8世代のパネル生産では最も効率が高いサイズが32型。それ以上の大型化では、CADなどの高精細画質が求められる用途や、タッチ利用が想定されるデジタルサイネージ、卓上型ディスプレーなどが想定される。家庭用テレビ用途では、視聴距離などを考えると高精細やタッチパネルのメリットが打ち出しにくい」などとしている。
高精細ノートPCでは、Ultrabookへの搭載が有力
高精細ノートPCでは、今後の成長が見込まれるUltrabookへの搭載が有力。「ノートPC市場全体は2015年度までの平均成長率は16%だが、Ultrabookは149%増という高い成長率が見込まれる」としており、高精細液晶が求められるUltrabookでの利用促進を狙う。
また、タブレット端末向けでは、シャープ製タブレットへ採用する一方、外販を中心とした事業展開を進めることになる。
なお、今回公開したタブレット端末向けのサンプル品は、量産モデルとは仕様が異なっている。
