「子ども手当」によって二次創作の“親作品”も評価
―― なるほど。では、その「奨励プログラム」と「コンテンツツリー」がどう関連するかという話ですが……。
伴 たとえばボカロPがすごく良い曲を作った、けれども、ボーカロイドの“調教”はそんなに上手くなかった、それを別の歌い手が歌って大ブレイクした――そういうとき、元のボカロPにおカネがいかないというのはちょっと嫌だなあと思うんです。そういう人もちゃんと評価されるべきだと。そこで、「子ども手当」という仕組みを考えたんです。
―― YouTubeのパートナープログラムが動画をアップした人にだけ広告収益を分配するのに対し、奨励プログラムの子ども手当はその源流もたどって還元が行なわれる、という理解でいいですか?
伴 そういうイメージですね。作品をアップした人への“奨励金”だけでなく、そこからコンテンツツリーで結ばれた「親」へは「子ども手当」が支払われるというイメージです。ただし、これはロイヤリティの支払いや売上還元とは違います。これはあくまでも「奨励金」で、ニコニコ動画として創作活動を応援したいクリエイターに支払う、というものです。
なお、親子関係は一代限りで、孫はありません。また、子供が多ければ多いほど、奨励金の額は大きくなる計算です。ネズミ講のように子供や孫から吸い上げるわけではなく、もらえる「子ども手当」が大きくなります。もし子どもがプログラムに登録せず、「奨励金を受け取らない」という設定にしている場合でも、親には奨励金が支払われます。俺はおカネが目的じゃない、という人がいても、リスペクトする親が「奨励金を受け取る」といってプログラムに作品を登録すれば、そこに子ども手当が支払われる仕組みです。
―― いま、どのくらいの方がプログラムに参加されているんでしょう?
伴 あまり周知に力を入れていないこともあり、それほど多くはありません。
―― しかし、先ほどおっしゃった「ニコニコ動画の文化」や、最近ネットでよく見られる「嫌儲」という風潮と衝突する心配もありそうな仕組みとはいえませんか?
伴 それは否定できないですね。ですので、運営や実装にはとても気を使っています。たとえば、ユーザーの誰が奨励金を受け取るか、という情報はわたしたちのシステム以外は一切わからないようにしてあります。運営担当者であってもそれを知ることはできません。
―― なるほど、徹底してますね。
伴 ただ、ユーザー自身は登録した作品の「受取予想額」がクリエイター奨励プログラムのページで見られるようになっていて、それをツイートできるようにもなっています。
「おカネを受け取っている」ということで叩かれる風潮というのはどうしてもあると思います。一方で霞(かすみ)を食って生きてはいけない。そのバランスをうまくとって支援していきたいんです。最終的に商業ベースに乗った作品だけでなく、それが生まれるきっかけになった作品・素材を生み出した人たちも応援したいという思いがあります。