NTT東西によって2つのIPv6接続サービスが開始された。PPPoEをベースとした「インターネット(IPv6 PPPoE)接続」(以下「IPv6 PPPoE接続」)と、IPoEをベースとした「インターネット(IPv6 IPoE)接続」(以下「IPv6 IPoE接続」)の2つだ。今回はIPv6 PPPoE接続について、その申し込みから設定、動作を見ていきたい。
「IPv6トンネル対応アダプタ」を利用するIPv6 PPPoE接続
今回のPPPoE方式の導入テストについては、NTTPCコミュニケーションズの協力をいただき、同社のインターネット接続サービス「InfoSphere(インフォスフィア)」を利用した。InfoSphereのIPv6 PPPoE接続は2012年3月までトライアル期間となっており、その後、正式なサービスへ移行する。正式サービスへの移行、申し込み方法についてはInfoSphereのWebページに掲載される予定だ。
IPv6 PPPoE接続はユーザー宅とISPをPPPoEにより結ぶ方式であり、原理的にはフレッツ 光ネクストの回線であればどこからでも利用できる。つまり、自宅のフレッツ 光ネクストで使うために契約したIPv6 PPPoE接続のユーザーIDとパスワードを使って、フレッツ 光ネクストを契約している別の家から接続することも可能なのだ(回線種別が異なる場合や、同時利用は不可)。これは、既存のIPv4のフレッツ 光ネクストと同様だ。
ただし、IPv6 PPPoE接続は、IPv4のPPPoEとは違う点もある。前回紹介した「マルチプリフィックス問題」への対処も必要であるし、そもそも既存のブロードバンドルーターはIPv6のPPPoE接続に対応していない。こういった問題を解決するため提供される装置が「IPv6トンネル対応アダプタ」だ。
現時点でも独自にIPv6トンネル対応アダプタを提供するISPもあるし、NECも同機能を搭載するワイヤレスブロードバンドルータ「AtermWR8371N」を発表している。しかし、これらの製品はまだ量販店で販売されていない。当面、IPv6 PPPoE接続を利用するのであれば、NTT東西が提供する「MA-100」を利用するのが一般的だろう。MA-100の価格は9800円(税別)で、NTT東西から直接購入する。ISPは販売していない。
このMA-100だが、NTT東西の利用例によると、フレッツ 光ネクスト契約時にレンタルされる「回線終端装置(ONU: Optical Network Unit)」とPCの間に配置するという。
だが、この利用例はIPv6の利用だけを想定したものになっている。MA-100はIPv4関連の機能を搭載しておらず、このままではIPv4のPPPoEが使えず、IPv4のDHCPサーバーも動作しない。こうしたことから、現実的な利用のためにはMA-100とブロードバンドルータを併用することになる。
併用にはいくつかの方法が考えられるが、フレッツ 光ネクストではONUとブロードバンドルータが一体化した装置(GE-ONU)がNTT東西からレンタルされるため、GE-ONUの下流にMA-100を設置するのが一般的だろう。また、別途購入したブロードバンドルータを使っている場合も、その下流にMA-100を設置するとよい。
具体的には、ブロードバンドルータ(GE-ONU)のLANポートとMA-100のWANポートを結び、PCをMA-100のLANポートに接続すればよい。レンタル装置も含め、現行の大半のブロードバンドルータはLANポートからのPPPoE通信をそのままWANポートに通す「PPPoEブリッジ(PPPoEパススルー)」という機能があるため、特別な設定は不要で利用できるはずだ。IPv6 PPPoE接続で市販のブロードバンドルータを併用する予定なら、念のためPPPoEブリッジ機能の有無を確認しておこう。
なお、ブロードバンドルータを無線LANアクセスポイントとして使っていた場合、そのままでは無線LAN経由でMA-100にアクセスできない。無線LAN端末からはIPv6を使わないのであれば、そのままでも問題ないが、別売の無線LANカード「FT-STC-Hng」(税別3000円)をMA-100にセットすることでMA-100を無線LANアクセスポイントにする方法もある。また、ブロードバンドルータとは別に無線LANアクセスポイントを使っている場合、MA-100のLANポートに無線LANアクセスポイントを接続すれば、無線LAN経由でもIPv6が利用可能となる。
IPv6トンネル対応アダプタの設定
MA-100の設定は、LANポートに接続したPCからWebブラウザ経由で行なう。Webブラウザのアドレス欄に「192.168.0.1」と入力してアクセスしたくなるところだが、MA-100はIPv4をサポートしておらず、機器へのアクセスもIPv6になる。といってもIPv6のIPアドレスを手入力する必要はなく、Webブラウザのアドレス欄に、
ntt.v6setup
と入力すればよい。もしアクセスできない場合は、IPv6アドレスとして
[fe80::1]
と入れてみる。IPv6アドレス(fe80::1)の両側にある「[」と「]」も入力が必要なので注意しよう。
このように設定にはOSやWebブラウザがIPv6に対応している必要があることから、推奨環境はWindows VistaとWindows 7になっている。
Windows XPは標準ではIPv6が有効になっていないため、Windows XPでIPv6ホストにアクセスするためには、「IPv6プロトコルスタック」のインストールする必要がある。さらに、ブラウザから指定アドレスを呼び出すために、IPv6アドレスをホスト名に結びつけるため内部ファイルであるhostsに書き込み、そのホスト名をブラウザで呼び出さなければならない。
MA-100設定で最低限必要な項目は、次の2つだ。
- 機器のパスワード設定
- IPv6 PPPoEのためのアカウント情報入力
最初の電源投入時にWebブラウザでアクセスして、入力を求められるのが「機器パスワード」だ。機器の設定変更など、機器にアクセスする際には毎回入力を行なうもので、パスワードは任意に決めてよい。このパスワードを忘れた場合には、ハードウェア操作による機器の初期化が必要になる。
ISPのアカウント設定は、ISP名(MA-100の設定画面では「接続先名」)、アカウント(同「接続先ユーザ名」)、パスワード(同「接続パスワード」)の3項目だ。ISP名は自分で識別するために入力するので、何を入力してもよい。アカウントとパスワードは、ISPから指定されたものだ。
設定画面には多くの入力項目があり、初めての人はけっこう混乱するかもしれない。しかし、上記3項目以外は、ほとんどのユーザーは触らなくてもよいだろう。なお、NTTPCコミュニケーションズのInfoSphereでは、アカウント情報とともに最小限の入力方法をまとめた簡易手順書を添付してくれていた。
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