IPv4アドレスがなくなった!
IPv4アドレスの枯渇として騒がれていて久しい。すでにいくつものインターネットサービスプロバイダ(以下、ISP)が独自にIPv6サービスを始めている。にもかかわらず、なぜNTT東西のIPv6サービスを取り上げるのか。本連載は、この点の説明から始めよう。
IPv4アドレスの残りがなくなったと報じられたのは、2011年4月のことだ。インターネットの全IPアドレスを管理している組織「IANA(Internet Assigned Numbers Authority)」、IANAから割り振り※1を受けてアジア太平洋のIPアドレスを管理している組織「APNIC(Asia Pacific Network Information Centre)」といったIPアドレスを管理する国際組織から、新たに割り振りできるIPv4アドレスのストックが尽きたのである。
もちろん、今現在ユーザーに割り当て※1されているIPv4アドレスがなくなるわけではない。ISPが保有するIPv4アドレスにも余裕があるため、ユーザーへの新規割り当てがすぐに不可能になるわけでもない。しかし、新たにISPに配られるIPv4アドレスは底をついたのである。
IPv4アドレスの枯渇は、以前より予想されていた。その対策として考えらたのが、IPv4の後継技術であるIPv6だ。IPv4は、論理上のアドレス空間が2の32乗、つまり利用できるアドレス数は約43億個となる。世界の総人口より少ないのだ。一方、IPv6ではアドレス空間が2の128乗となる。これは約340澗個、正確には、
- 340282366920938463463374607431768211456個
という膨大な数になる。340澗とは、340兆の1兆倍の1兆倍という莫大な数だ。つまり、IPv6では実質的にアドレス空間の制限がなくなり、IPアドレスを無限に使えるようになる。
日本でもIPv4枯渇対策は準備済み
インターネットが重要な社会基盤となっている現在、IPv4アドレスの枯渇は国家的な問題でもある。日本政府も事前に手を打っており、総務省が主導する形で通信事業者やISP、通信機器メーカーが集まり、IPv4がなくなったあとのIPv6の世界にスムーズに移行できるよう「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」という組織を作り、検討を始めていた。
そして「IPv4アドレス枯渇対応アクションプラン」を作り、日本のインターネット環境がIPv6に移行できるようインターネット関連業種ごとのスケジュールを立て、実施状況を管理してきた。NTT東西によるIPv6サービスの開始は、このアクションプランの1つとして実施されるものだ。
NTT東西のFTTHは、全国シェア75%を占める。両社は国の基幹通信インフラを支える企業であり、個々のISPがIPv6サービスを行なってきたのとは異なる、格段に大きな影響力を持つ。NTT東西によるIPv6サービスの開始は、まさに、日本が国としてIPv6化に踏み出したといってもよい、非常に大きな出来事なのだ。
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このようなNTT東西のIPv6サービスだが、方式が2通りあり、ISPやユーザーは選んだ方式に合わせた準備が必要となる。次回は、NTT東西のネットワークの仕組みから、2方式ある理由、その特徴などを紹介しよう。

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