10月26日、シスコシステムズはデータセンター/クラウド向けの製品の発表会を行なった。データセンター向けスイッチ「Nexusシリーズ」やサーバー「(Unified Computing System)」などの製品を強化したほか、シスコが自社で利用するクラウド管理ツールやスターターキットもお目見えした。
複雑なデータセンターのニーズに対応
発表会において、シスコ データセンター/バーチャライゼーション事業 データセンター スイッチングプロダクトマネージャ 及川尚氏がデータセンター/仮想化の最新の取り組みについて説明した。
同氏はメインフレーム時代からクライアント/サーバー、仮想化、そしてクラウドなどデータセンターの進化、そしてそれにともなうインフラの進化を振り返り、現在のデータセンターのニーズを説明した。一般的には物理/仮想サーバーの混在、LAN/SAN統合やセキュリティ、BCP/DRへの対応といったニーズがあるが、昨今はクラウドやWeb 2.0、ビッグデータ、さらにはHFC(High Frequency Trading)やHPC(High Performance Computing)など用途自体が多様化しており、それぞれ異なるニーズが発生すると説明する。及川氏は、「顧客の数だけデータセンターのアーキテクチャは異なっている。ニーズが複雑化に絡まっており、単一のアーキテクチャで対応するのは難しい」と説明する。
これに対してシスコのデータセンターファブリックは、スイッチをユニファイドファブリック、ユニファイドネットワーク、ユニファイドコンピューティングという3本柱で構成された膨大な製品群を提供しており、「これらの中から適切な製品を組み合わせることで、さまざまなニーズを満たすことができる」と説明する。
では、実際の実績はどうか? まずデータセンタースイッチのNexusシリーズは、2010年の10GbEスイッチの売上別シェアで73.8%という圧倒的なシェアを確保したという(ガートナー調べ)。また、サーバー製品であるCisco UCSも導入から2年で全世界7400社の導入実績があり、米国のx86ブレードサーバー市場ではすでにIBMを抜いて、シェア2位に成長していると説明された。このUCSが受け入れられている背景として、及川氏は、「既存のサーバーで解決できない問題が出ている。UCSは顧客の問題を解決すべくイチから開発されている」と説明した。
第2世代「Cisco Nexus 7000」で処理能力は2倍へ
今回はユニファイドファブリック関連製品の拡充を進めた。まず、シャーシ型スイッチ「Cisco Nexus 7000 Series」で第2世代の製品が投入された。7000シリーズで最小となる14U 9スロットの「Nexus 7009」が追加された。最大336ポートの10GbEポートを収容し、第2世代のFabric-2モジュールにより、スロットあたり500Gbpsの帯域を誇る。あわせて10GbE 48ポート搭載のラインカードも追加された。
また、従来Nexus 7000のみサポートしていたFabricPathが、新たにNexus 5000シリーズでもサポートされることになった。FabricPathは、STPを使わずL2でのマルチパスを実現する技術で、Nexus 5000へのサポートは2011年の第4四半期にリリースされるNX-OSから提供される。さらにNexusの拡張機能であるFEX(FabricExtender)も強化され、新たにNICの仮想化にも対応した。これにより、最大1152のスイッチ側のサーバーポート、最大1024のNIC仮想インターフェイス、最大2048の仮想マシンなどがサポートされる。今後は他社製のNICもサポートする予定で、拡張の仕組み自体もIEEE802.1BRとして標準化を進めていくという。
新ハードウェアとして、10/40GbEを16ポート搭載した「Nexus 3016」、1Gbpsを48ポート搭載した「Nexus 3048」、リモートラインカードとして機能する「Cisco Nexus TP-E Fabric Extender」なども追加された。
サーバー製品のUCSも、「6200 Fabric Interconnect」や仮想インターフェイス「VIC 1280」を投入し、性能を底上げした。iSCSIブートのサポート、VM-FEXでのRed Hat KVMサポートも追加。また、WAAS(Wide Area Application Service)や電子メールセキュリティの「IronPort Email Security」などの強化も行なわれた。
自前管理ツール「CIAC」とアドバンストサービス
今回の発表のもう1つの目玉が、シスコ自体がプライベートクラウド構築と運用で使用している管理ツール「Cisco Inltelligent Automation for Cloud(CIAC)」の提供だ。これはIaaSやPaaSなどをエンドユーザーが利用するためのポータルやサービスカタログ、そしてITリソースのプロビジョニングなどを実現するものだ。
シスコ データセンター/バーチャライゼーション事業 ユニファイドコンピューティング ソリューションズ クラウドエバンジェリスト 小桧山 淳一氏は「従来、シスコの社内クラウドのCITEISでは、エンドユーザーがマニュアルでプロビジョニングしてきたが、CIAC導入後はリソース調達や設定などもセルフサービス化され、大幅に短縮された」と導入効果をアピールした。
製品自体はポータル、カタログの機能はニュースケール・テクノロジーズ(newScale)、サービスのプロビジョニングはタイダル・ソフトウェア(Tidal Software)、ネットワーク仮想化はラインサイダー・テクノロジーズ(Line Sider)などで、シスコが買収した企業の技術が組み合わせられている。「もともと実績のある製品群を、シスコがきちんと相互検証した形で提供する」(小桧山氏)という。
また、ハードウェア、ソフトウェア、コンサルティングを一体化し、開発・テスト用に最適な仮想環境を提供する「Cisco Cloud Starter Kit」も発表された。最短5営業日で導入が進められるという。あわせていわゆるコンサルティングやプロフェッショナルサービスにあたるアドバンスドサービスも拡充され、クラウドのライフサイクル全フェーズを支援する体制が組まれているという。
ネットワークやサーバーに加え、クラウド管理ツールやコンサルティングまで拡充したことで、HPやIBMなどの大手ITベンダーとの競合がますます激しくなってきたといえる。