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FUSION IP-Phone網は開放前夜!

開け電話網!フュージョンはAsterisk猛者の梁山泊になる

2009年12月11日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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IP電話サービスの先鞭を付けたフュージョン・コミュニケーションズ(以下、フュージョン)が、オープンソースのPBX「Asterisk」へのIP電話網の開放を検討している。楽天傘下に入り、新しいビジネスを模索する同社はなぜこうした選択をしたのだろうか?

控えめなプレスリリースに潜む
熱い思い

 今からちょうど1ヶ月前の11月11日、フュージョンから「FUSION IP-Phone対応 アスタリスク修正プログラム クローズドβ版」検証モニター 100社限定募集」 というタイトルの1枚のプレスリリースが出された。11月11日はHPによるスリーコム買収でにぎわっていたこともあり、正直言ってわれわれも含め、メディアが取り上げたとは言い難い。しかし、プレスリリースを読み解くと、実はけっこう重要な内容であることがわかる。FUSION IP-Phoneの網の開放を前提に、Asterisk用の修正プログラムを提供するというものだからだ。

お話しを伺ったフュージョン・コミュニケーションズ株式会社 新サービス推進部 全社プロジェクトグループ マネージャー 鎌田武志氏

 これはどういうことなのだろうか?ご存じのとおり、Asteriskは米デジウムが開発したオープンソースのPBXで、従来高価なPBXでしかできなかった企業向けのPBX機能がPC上で実現できてしまうという画期的なものだ。しかし、高い注目を集めながらも、日本ではブレイクしたとは言い難い状況であった。この理由は、通信事業者がAsteriskに対してSIPでの直接接続を許していないからだ。

 「多くの通信事業者は、Asteriskやオープンソースに対して拒否反応を示します」と、今回のFusion IP-Phone網開放の仕掛け人であるフュージョンの鎌田氏は語る。「SIPでやりとりすると、ネットワークの中身が完全に知られてしまうので、今まで通信事業者はPOIとか、UNIなどのインターフェイスで網を守ってきました。ですから、IP電話なのに必ずゲートウェイを介して、やりとりせざるをえなかったんです」とのこと。これに対して、フュージョンは冒頭のとおり、来春にめどにAsteriskのSIP接続を可能にする。そして、それを実現するため、フュージョンの「方言」を解するような修正プログラムのβ版をAsterisk用に開発・公開したわけだ。

修正プログラムの適応後のAsteriskの動作イメージ

 プレスリリースは「網のオープン化を準備中!」を鼻息荒く謳ったわけではないが、通信事業者としてかなり大きな決断をしていることがわかる。実際、鎌田氏も上司や社内を説得し、ここまでこぎ着けるまで相当な時間と努力を要したようだ。

「通信機器のリース料>通信料」の現状

 では、なぜフュージョンは自社のIP電話網をAsteriskに開放するのか? ここには通信機器にかかるコストを安くしたいという思いがある。

 フュージョンは全国一律料金のIP電話をいち早く提供し、現在では全国一律3分8円強という通話料金が当たり前となった。その結果、「すでに通話料金よりも通信機器のリース料金の方が高くなっているという現状に気がついたんです。そして、中小企業の方々に聞くと、大手ベンダーがアピールする派手な機能よりも、とにかくコストを削減したいというニーズが強い。そこで、話題となっていたオープンソースのAsteriskを勉強しはじめたんです」(鎌田氏)。

 そして、鎌田氏をはじめ、社内のプロジェクトメンバーが触ってみると、Asteriskのコストメリットが見えてくる。「小さい企業がなけなしのお金を払って200万円の電話システムを導入しなくても、Asteriskが動くPCさえあれば十分に電話が使えるんです」(鎌田氏)。Asteriskを担ぎながら、「便利」ではなく、あえて「安価」を謳うのは、顧客である中小企業のコスト削減へのニーズをきちんと抑えたいからだ。

 さらに、草の根でAsteriskを使いこなす職人的な人たちと交流を深めると、単なるコストメリットだけではなく、電話を越えたコミュニケーションの将来性が見えてくる。「Asteriskサーバーを立てている人から言わせると、家にある電話って留守番電話や保留、子機間転送、なりわけなどの機能を搭載するPBそのものX。だから、家の電話はAstriskで代用できるという論法なんです。実際、そういう方はWiFi対応のスマートフォンとHSPA対応のWiFiルーターを持ち歩いてます。スマートフォンからいったん自宅にかけて、そこから固定電話の発信とかしているんです」(鎌田氏)といった具合に、Asteriskの可能性に想いを馳せる。こうして鎌田氏はエバンジェリストとしてAsteriskのすばらしさを啓蒙し、社内で協力を取り付けていった。

Asterisk猛者を集めてビジネスへ

 今回は、Asteriskという商材を用いたビジネスや新商品の開発を進めるため、100名限定の検証モニターを2010年の3月まで行なっている。モニターでは修正プログラムの提供のほか、「IP電話利用料金5千円分」「インターネット接続プロバイダー料金4カ月間分」が提供される。

 検証モニターについて鎌田氏に聞くと、「パッケージソフト作っているところや、組み込み機器のメーカー、地方のSIerさんや、それこそ構内での電話に困っている病院関係者まで、本当にさまざまな人たちが応募してくれています。一言でいえば、今までまったく接点のなかった方々です」とのことで、今後の拡がりを感じさせる。

 電話の世界を大きく変えると騒がれ続けるAsteriskだが、現在も普及しているとはとうてい言いがたい。だが、鎌田氏はその理由は通信事業者が対応してなかったからと断定し、フュージョンは普及に欠けていた最後のピースを埋めるという。

 もちろん、積極的なAsteriskビジネスは、既存のパートナとの関係にも影を落とすことになりかねない。しかし、それでも前進しなければ光は見えてこない。「Asteriskで、われわれも変わりたいんです」(鎌田氏)ということで、会社の方向性をAsteriskに託す。網の開放は2010年の4月にスタートの予定だ。

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