日本オラクルは24日、東京国際フォーラムにて開催されている「Oracle Open World」において、オラクル・コーポレーションのデータベース開発総責任者であるチャールズ・フィリップス氏が「お客様を理解し、価値を届ける−エンタープライズ・ソフトウェアのあるべき姿」と題した講演を行なった。
同氏はまず企業の中における情報が爆発的な増加しているが、適切に管理されていないことを指摘した。
「企業内の情報はバラバラなシステムに分散してしまっており、情報の相関関係を調べたりするのが難しい状況になっている。これではいくら膨大な情報があっても、ビジネスに役立つ情報がないということになる。こうした問題を解決するためには、情報に対する適切なアクセス手段が必要」
こうした状況に陥った理由として語られたのは、今までのITシステムの開発のやり方だ。
「ミニコンの時代は、今はない数多くの企業が独自仕様の製品を出しており、情報がサイロのように孤立している状況だった。また数多く存在していた独自仕様のアプリケーションは、外部とのインターフェイスが用意されていないか、あっても仕様は公開されていなかった」と説明。オラクルとしては標準仕様を採用し、さまざまなシステムとの連携を支援していく姿勢を明確にした。
また現在、未曾有の世界的不況に陥っている中、自動車業界は製造のためのパーツの種類を減らし、1つのパーツを複数の車種で利用することによってコストダウンを実現していることを例に、IT業界においてもベストプラクティスを積極的に使うことが重要であると説明する。
「カスタマイズをするべきシステムは、差別化する要素や市場にないもののみに限定し、そのほかは実証済みのベストプラクティスを積極的に導入することが重要。こうして職人芸の世界から再現可能なプロセスへ移行するために、オラクルではさまざまな標準技術を支持してきた。こうした活動が、コンピューティングコストの低減につながると信じている」
サンの買収にも言及
また、つい先日オラクルはサン・マイクロシステムズを買収したが、今後についても絶えずイノベーションを実現していくために企業買収を進めていくと話す。
「オラクルは絶えずイノベーションを進めてきた。そのため研究開発に毎年30億ドルを投じており、これまで研究開発費を減らしたことはない。厳しい経済環境であっても投資は続けていく。また、イノベーションを進めるための手段として、企業買収も行なっていく」
こうした戦略の先に見据えているものを、チャールズ・フィリップ氏は「アプリケーションやミドルウェア、データベース、インフラのそれぞれの領域における完全性」と説明する。個々のコンポーネントをバラバラに構築するのではなく、統合された環境として構築することによって、たとえば一貫性のあるセキュリティ対策ができると説明する。
さらにオープン化や拡張性についても触れられた。特に拡張性に関しては、「追加的なシステムの拡大におけるコスト削減を実現できる手法」として、これまで同社が推進してきたグリッドアーキテクチャの必要性を改めて強調する。またヒューレット・パッカードと共同で開発したデータベースアプライアンス製品「Oracle Exadata」を紹介、ハードウェアも絡めて積極的にグリッドアーキテクチャを推進する姿勢を示した。
最後にチャールズ・フィリップ氏は、現在を「ベストプラクティスへ踏み出す時代」とした上で、既存パッケージを積極的に活用し、莫大なコストをかけてシステムをゼロから構築するのではなく、ビジネス上の差別化を生むところに注力するべきだと話す。「オラクルではそれを実現するために、業界を変えていくことをミッションとして考えている」と語り、講演を締めくくった。