六本木アートトライアングルの一角をなす国立新美術館で
文化庁メディア芸術祭10周年企画展“日本の表現力”が開幕
21日にオープンした国立新美術館。六本木にランドマークがまたひとつ増えた。六本木ヒルズ同様、東京の観光スポットになるのだろうか? |
文化庁が1997年から行なっている、メディア芸術の振興を目的とした祭典“文化庁メディア芸術祭”の10周年を記念する展覧会、文化庁メディア芸術祭10周年企画展“日本の表現力”が21日に開幕した。主催は文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・CG-ARTS協会)と国立新美術館。会場となったのは同日、六本木に新たにお目見えしたナショナルギャラリー“国立新美術館”。オープン前日の20日にはプレス・関係者を集めた内覧会、オープニングレセプションが行なわれた。
“日本の表現力”は、デジタルアートからゲーム/ロボット/アニメ/マンガまで、幅広い“日本のメディア芸術”を展観するもので、これらメディア芸術の過去、現在、未来の3つの視点から構成されている。
1950年代から2000年以降までの
メディアアートを年代別に展望
メディア芸術10年を区切る展覧会が開幕した |
前半の導入部では、縄文から江戸に至るまで、現在のメディア芸術の源流ともいうべき、日本古来の表現文化が生み出した作品を紹介する“表現の源流”が展示されていた。
“鳥獣人物戯画巻甲巻”(マンガ)、“写し絵”や“のぞきからくり”(アニメーション)、からくり人形の“弓矢童子”(ロボット)、“光琳かるた”(ゲーム)といったものが紹介されていた。明珍宗察 作の“自在龍置物”は龍の首や手足が動かせるもので、現代のフィギュアに通ずるものがある。
ゴジラの姿がひときわ目を引く1950年代のコーナー | あえて言おう、ここはバンダイミュージアムではない。“美術館”。それも“国立”なのだ |
続いては、2006年7月13日から8月31日までの50日間、ウェブでの一般アンケートと専門家から投票を受け付けた“日本のメディア芸術 100選”で選出された作品群を中心に、1950年代から2000年代に至るメディア芸術の軌跡を、その時代の背景とともに年代別に紹介する“日本のメディア芸術1950-2006”が展示されている。
ゴジラの着ぐるみがひときわ目立つ1950年代には“白蛇伝”の映像が流され、“鉄腕アトム”が放送された1960年代、“機動戦士ガンダム”と“太陽の塔”(岡本太郎 作)が登場した1970年代、1980年代には“スーパーマリオブラザース”(任天堂)や“風の谷のナウシカ”(宮崎 駿 監督作品)が新しい時代の息吹を感じさせた。
そしてコンピューターやインターネットの登場でクリエイティブのデジタル化がスタートした1990年代を経て、2000年代にはネットワークによる新たな表現方法の時代となる。アニメをはじめとして、さまざまな分野でデジタルによるクリエイティブ表現が普及した2000年代が最後に紹介されていた。
現代最先端のメディアアートを一堂に!
後半は、今まさに活躍中の日本のメディア・アーティストの作品を一堂に会した“未来への可能性”となっていた。
“GLOBAL BEARING”平川紀道 (C)平川紀道 緯度と軽度で現在地を定義し、地面に向かって延長されたシャフト軸はそのまま地中を突き抜け、地球の反対側に到達する。スクリーン上にはバーチャルな地球が示され、足下に広がる広大な球体=地球を大いに意識することができる |
“クィーン・マンマ”(ヤノベケンジ+三宅一生 作)がモニュメントのように迎えるそのスペースには、歴代のメディア芸術祭受賞作品も含め、“かんじる”、“つながる”、“うごく”、“かたちとしかけ”の4つの視点で選びだされており、それらの作品を通じて、日本のメディア芸術の未来を展望するものとなっていた。
“ランドウォーカー”榊原機械 (C)Sakakibara Kikai Co.,Ltd. All rights reserved 「いつか自分で操縦できるロボットに乗りたい!」をコンセプトに製造されたリアル体感アクションゲームロボット。ボールを射出する銃も備えており、遊び心満点。摺り足での低速二足歩行により、『遊具』としての安全性も実現している。人が歩いた方が速いというのはご愛嬌? |
“Lake Awareness”モリワキヒロユキ (C)モリワキヒロユキ 一枚一枚にマイコンのプログラムを搭載した基板を3,000枚も連結して、すり鉢状に組まれた作品。基板に搭載された光が人の動きに反応して、ひとつの有機体のように変化する |
“fuwapica suite”Masaki Yagisawa + MONGOOSE (C)MONGOOSE 振れたり、腰掛けたりして圧力をかけると、圧力の違いによって光の加減や色が変化するチェア。新作の二人掛けの“fuwapica bench”は二人で座るとその二人の親密度によって、光が次第にピンク色に変わっていくという特徴をもつ |
会場内には特設シアターが設置され、連日歴代のメディア芸術祭受賞作品から厳選して上映する“歴代受賞作品セレクション”などの映像イベントが開催されている。このほか、今月26日にはパネリストに演出家のテリー伊藤氏、アニメーション監督の富野由悠季氏、漫画家の井上雅彦氏をむかえたシンポジウム“メディア芸術って何?”が行なわれるなど、トークセッションやライブなど、期間中にはさまざまなイベントが催される。
“hanabi”nendo (C)nendo Inc. 建築・インテリアをメインに最近では携帯電話のデザインも手がけるnendoの作品。熱処理した形状記憶合金により、点灯時の電球の熱やによって、部屋の気温や湿度、人によるわずかな空気の動きに、開いたり閉じたりする照明器具 |
“KAGE 2007”minim++ (C)minim++ スクリーンに設置された円錐に触れると、それをキッカケに、そこに投影されたCGによってたくみに作り込まれた偽物の“影”が反応し、予想もしない動きを見せる。鑑賞者の目を見事に欺くと同時に楽しさも感じられる |
“クィーンマンマ”ヤノベケンジ+三宅一生 (C)Kenji YANOBE イッセイミヤケとのコラボレーションで生まれた作品。新店舗のために制作されたもので、更衣室の機能を持つ。母胎の様な室内で着替えることにより意識の変容を促し、生まれ変わる自分を発見する。 |
“イエス☆パノラーマ!”タナカカツキ (C)タナカカツキ ほのぼの、ゆったりとした田園風景の映像が360°のスクリーンに展開される作品。腰を屈めて中に入れば、一瞬、草原にいるような感覚に浸れる。 |
東京・六本木の新名所に落ち着くか、
アートや文化の新発信基地になるか?
会場となった国立新美術館は、国内で5番目にして最大規模のナショナルギャラリー。通常の美術館とは異なり所蔵作品を持たず、常設展示も行なわない。同時に10の展示が行なえる展示スペースを持った“企画展を中心とした施設”だ。オープニング展示は“日本の表現力”展のほかに、開館記念展“20世紀美術探検”と“黒川紀章展”が行なわれている。
まるで空中にしつらえられたようなレストラン。このほか、地下1階まですべてのフロアにカフェがある |
施設建物は建築家・黒川紀章氏の設計によるもので、外観は大波がうねるようなガラスのファサードが印象的で、コーンの形状をしたガラスの正面エントランスがあり、3階までの吹き抜けとなった開放感のあるパブリックエリアには、コーンを逆さにした2つの構造物があり、その上部には2階にカフェ、3階にはPAUL BOCUSEのレストランがある。
この国立新美術館に3月にオープンする東京ミッドタウンの“サントリー新美術館”、そして六本木ヒルズにある“森美術館”の3館で“六本木アートトライアングル”として、六本木の新しいシンボルとなる。
- 名称
- 文化庁メディア芸術祭10周年企画展“日本の表現力”
- 会期
- 2007年1月21日(日)~2月4日(日)(入場無料)
- 会場
- 国立新美術館(東京・六本木)(http://www.nact.jp/)
- URL
- http://plaza.bunka.go.jp/ex/
- 主催
- 文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・CG-ARTS協会)、国立新美術館
- 問い合わせ
- CG-ARTS協会内“文化庁メディア芸術祭事務局”