(株)ウィルコムは19日、“W-SIM”(ウィルコムシム)カードに対応した対応した音声端末“TT”(型番:WS001IN)、USB接続のデータ通信端末“DD”(型番:WS002IN)を発表した。W-SIMはPHSの無線通信部分を小型化したもので、アンテナ、無線機、アドレス帳などを保存できるフラッシュメモリーを内蔵している。W-SIMカードを差し替えることで、複数の電話機で同じ電話番号やアドレスデータを共有できるほか、PDAのような携帯端末を簡単にデータ通信対応にすることができる。
ともに直販サイト“ウィルコムストア”で11月25日から販売される予定。製品の販売価格に関しては10月26日の予約開始時に明らかになるが、音声端末のWS001INは2万円台前半、データ通信端末のWS0002INは数千円になる見込みだという。なお、WS001INはウィルコムストアのみので取り扱い、WS002INとのセットで3000台×3色(合計9000台)のみ販売される。WS002INは量販店などでの店頭販売も行なう。
音声通話に対応した『WS001IN』。“TT”の愛称で販売される | データ通信端末の『WS002IN』。こちらは“DD”と呼ばれる |
ミニマムだが、密度感を感じさせるものを
本日都内で行なわれた発表会には、ウィルコム代表取締役社長の八剱 洋一郎(やつるぎ よういちろう)氏、製品デザインを担当した工業デザイナーでリーディング・エッジ・デザイン代表の山中俊治(やまなか しゅんじ)氏などが出席した。
ウィルコム代表取締役社長の八剱 洋一郎氏 | リーディング・エッジ・デザイン代表の山中俊治氏 |
八剱氏は会見の冒頭でPHSの加入者数が「7月21日に発表した数字である323万人からさらに増え、344万人になった」と報告した。ウィルコムでは7月に容易に通信機器を作れる仕組みとして、W-SIMカードを中心にした“WILLCOMコアモジュール”構想と同モジュールを開発/活用するための業界団体“WILLCOMコアモジュール フォーラム”について発表している。八剱氏は「W-SIMを利用することで、機器メーカーは無線以外の部分に特化することができる」と述べ、音声端末やデータ通信端末だけではなく多彩な端末へのPHS無線機能の搭載を示唆した。
製品デザインを担当した山中氏は、日産自動車(株)の乗用車『インフィニティ Q45』や両手親指キーボードの『tagtype』、タッチして通過する、東日本旅客鉄道(株)(JR東日本)の“Suica自動改札システム”のデザインなどを担当した経歴を持つ。今回の製品では2年半という開発の初期からプロジェクトに加わっており、技術や使い勝手も考慮したデザイン開発を行なっている。
山中氏は、まずW-SIMカードのデザインに当たっては“感触”と“データ保護”の2点に配慮し、「コスト面では高くなるが、ゴム系のソフトマテリアルを使用することにした」と説明した。
デザインコンセプトから。大切な情報を持ち運ぶカードという意識をユーザーに持たせるように工夫 |
音声端末の“TT”は“ミニマム”をコンセプトに、9分割された正方形のディスプレーを採用。小さな本体を広く使うために通話/切断ボタンを側面に配置するといった工夫を施したという。また、小型の本体は携帯性だけでなく、密度感を感じさせる点を重視。また「SIMカードを抜き差しする部分は、その差し方を丁寧に作ったものです」と述べ、中央に深く差し込む、カバーで覆う、ロックするという一連の手順をふませることは「技術面よりも、ユーザーに大切な情報を扱っていると提示するのが目的」とした。
音声端末はウェブ販売限定となるが、“大量販売”ではなく“少数でいいものを売る”テストケースとして考えているという。すでにオープンしている商品説明サイトでは“音”もコンセプトにデザインしており、「アクセスするとまず聞こえる“ベース”の音は“SIMカード”、その上で奏でられるさまざまな旋律はそれぞれの“端末”をあらわしている」という。
製品紹介のウェブサイト。山中氏は製品のデザインのみならず、製品説明サイトやパッケージデザインのディレクションなどトータルにデザイン関わった |
山中氏は「携帯電話の開発に2年半かけるというのは、非常に長いと感じるかもしれないが、基礎技術からだったため非常にタイトだった。常に時間に追われながら試作を重ねた。スタイルとしての苦労より、理想的な設計の部分に苦労した」「今回は製品のデザインだけでなく、最初(コンセプト)から最後(パッケージングなど)までトータルにデザインに関わることができた」と述べた。
なお、製品の詳細に関しては別記事で紹介する。