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VA Linux Systems社長兼CEOのLarry Augustin氏に聞く

1999年11月03日 00時00分更新

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 LinuxWorld Expo/Tokyo'99に合わせて、VA Linux Systems社長兼CEOのLarry Augustin氏が来日した。Linuxを搭載したハイエンドなハードウェアを販売する同社はまた、LinuxポータルサイトLinux.comを所有し、LinuxカーネルハッカーTed T'soや、Enlightenmentの開発者Carsten 'Raster' Haitzlerなど、多くのスター的ハッカーをかかえることでも有名だ。

日刊アスキーでは、パートナー企業である住友商事の上田哲也氏も同席していただき、インタビューを行なった。

Larry Augustin氏


[日刊アスキー] まず、日本での展開がどうなるのかをお伺いしたいのですが。
[Larry Augustin氏] これまでも日本のマーケットをかなり見てきてはいますし、非常にエキサイトしていると思っていますが、日本のマーケットから自分たちが学ぶこともまだまだあると思います。日本においては、我々VA Linux Systemsの株主でもある住友商事さんをパートナーとして、どうやって展開していくか、ということの検討を始めています。いろいろな選択技の中から、LinuxWorld Expo/Tokyo'99のような機会に見極めていきたいと思っています。アスキーさんのほうからもサジェスチョンがあれば、ぜひ教えてください(笑)。
[日刊アスキー] 住友商事さんとVA Linux Systemsさんは、いつ頃からどういった関係になっているのでしょうか?
[上田氏] 住友商事は、VA Linux Systems(以下VA)の株主で、戦略的パートナーです。何が戦略的パートナーなのか、という位置付けは、まだはっきりしているわけではないのですが。我々にとって、VAの成功というのはターゲットの1つで、その成功の要因として、まず間違いなく日本での成功があります。そのために、我々が日本でどのように行動していくべきなのか、といった点を含めて、お手伝いしましょうという形で、パートナーになっています。
[日刊アスキー] 今は計画段階で、見てまわっているというところでしょうか?
[上田氏] そうですね。VAに出張に行けば、日本国内の色々なマーケット情報を伝えています。たとえば、「Red HatさんがRed Hat Japanを作ります」とか、「LinuxCareさんも来るみたいだよ」とか、「ノーザンライツさんがオリジナルブランド作られたよ」といった、さまざまな情報を提供していますし、日本の状況を徐々に学んでくれていると思います。どういう選択肢を取るのかということを、我々がいろいろな話を伝えるという形で、お互いにディスカッションしている段階です。
[日刊アスキー] 具体的にはどのような選択肢が見えているのでしょうか。
[上田氏] なかなか難しいところもありまして、ちょっと分からないですね。
[日刊アスキー] LinuxWorldの話に移りましょう。LinuxWorldではブースも回られたということでしたが、どうだったでしょうか?
[Larry Augustin氏]  日本でこれだけLinuxが盛り上がっているのを見ることができて、うれしいですね。また、Tim O'ReillyやCliff Millerのような知り合いたちに会えて楽しかったです。前から言っていることですが、Linuxはアメリカよりも海外で盛り上がっていると思います。今回は時間がなかったのですが、機会があれば、日本のLinuxのユーザーグループを回って話を聞きたいですね。

 Eric Raymond氏が今年の春に日本に来て、ユーザーグループを回ったのですが、その時みなさんはお会いしましたか?

[日刊アスキー] 僕は会えなかったのですが、同じ職場の人間が2人3人くらいお会いして、インタビューもさせてもらいました。
[Larry Augustin氏] Eric Raymondさんはエンターテイナーで、Linuxのコミュニティにおいては、いろんないろんなゲームにコントリビュートしています。みなさんNetHackというゲームを知っていますか?
[日刊アスキー] Rogue系のゲームですよね?
[Larry Augustin氏] NetHackを一部いじったのもEric Raymondさんです。xtermのソースコードもRaymondさんが書いたところがあるし、彼があっちこっちのプロジェクトで活躍しているので驚いています。
[日刊アスキー] Larryさんは、個人的にはDebianをお使いと聞きましたが。
[Larry Augustin氏] (Augustin氏が別室に行って、ノートPCを持ってくる)
Debianを使っています。毎日apt-getしてるんですよ(笑)。apt-getはすばらしいツールです。
 日本にはDebianデベロッパが多いんですか?
[日刊アスキー] 日本にDebianデベロッパは15人いますね。登録待ちの人はさらにいます。
[Larry Augustin氏] Debianは本格的にオープンソースの開発モデルを使用しているので、私はDebianのファンです。
[日刊アスキー] さきほど日本での展開は未定ということでしたが、そのほかの国ではどのような展開していくのでしょうか?
[Larry Augustin氏] 特に考えていません(笑)。
[上田氏] 彼が特に考えていないと言ったのは、ひとつは、本国がかなり好調といった理由もあります。海外での展開も検討課題として挙がっていますが、Linuxが想像以上にアメリカを含む全世界で立ち上がっていて、彼もそれに合わせて、好調に業績を伸ばしてきているんだと思います。それで少し、国際展開がしっかりと言える段階になってきていないというわけです。
[日刊アスキー] VA Linux Systemsの商品展開についてお聞きしたいのですが。
[Larry Augustin氏] ローエンドよりハイエンドのサーバを販売していきます。いまあるのは「501」というサーバですが、4つのハードディスクを搭載していて、もちろんRAID5でドライブしています。クラスタソフトも自分たちで開発したものです。「FullON RAS 2x2」というサーバは、36GBのハードディスクが5つ搭載されていて、ホットスワップで交換できます。Windows NTにできないもの、UNIXだからできるというものを展開していきます。
[上田氏] 彼らとしてはよりハイエンドなサーバで、さらに今あるシリーズを含めて高密度なサーバを狙っています。我々もそれを見ていて面白そうだなと思っているんですが、たとえば最近は“thin server”ということで、1Uや2Uのサーバがたくさん出ています。これが、日本でも発表されていて密度のかなり高いサーバになってきているのかなと思います。デスクトップとサーバという流れの中で、彼らがいま力点を置いているのが、サーバビジネスになっています。
[Larry Augustin氏] FullON RAS 2x2では冷却やサイズの問題などがあって、これに5つのハードディスクを搭載するのは非常にやりがいのある仕事でした。誰もなしとげていないことで、我々が始めて36GBのハードディスクを搭載しました。
[日刊アスキー] これはRAIDユニットではなくサーバなんですよね?
[上田氏] 501とFullOn RAS 2x2は、基本的にサーバに属しています。次のジェネレーションという捉え方をしていまして、501はエントリレベルで、FullON RAS 2x2はRAS、つまりReliability、 Availability、 Serviceabilityということで、高信頼性で扱いやすい、安定した製品です。そして高密度なんですね。FullON RAS 2x2と501とは並列して販売していきます。501は、FullON RAS 2x2ほどの機能を必要されないところに向けて出していきます。
価格についてはWebサイトを見ていただければと思います。いろいろなレンジがあって、構成によって違ってきますが、非常にリーズナブルな価格だと思います。日本における展開では、価格面はまだ分かりませんけれども、アメリカにおいては非常にリーズナブルです。
[日刊アスキー] いま日本のLinuxWorldで展示しているということは、それらの製品を日本で取り扱うと考えていいんでしょうか?
[Larry Augustin氏] もちろん、日本での展開を考えて今回出展しています。ただ、戦略がまだ検討しなければいけませんし、日本のマーケットを調べているところなので、詳しいことはまだ言えません。が、間違いなく日本で出てきます。
[VA Linux Systemsスタッフ]  ちなみにLarryは、今日が日本に初めて来た日なんですよ。
[上田氏] 時間があれば、コミュニティの人と交流を持ちたいと言っていたのですが。やはり忙しくて、今回もようやく日程調整をしてくれて、来てくれたんです。こうして彼が日本に来て、ブースも出して、FullON RAS 2x2を紹介したのは、基本的に日本のマーケットは積極的にやろうということですね。ただ、その時期などについては、現時点では「これだ」というのを決めていませんが。
[日刊アスキー] ちょっと別の質問に移らせていただきます。サーバ分野では特に関係があると思うのですが、たとえばクラスタリングシステムのように、スケールの大きなシステムでは、顧客がOracleやLotus Dominoのようなオープンソースではないソフトウェアを使いたい、と言ってくる可能性が高いと思います。Augustinさんは、すべてオープンソースではないと嫌なのか、それともオープンソースにはこだわらないのか、どちらでしょうか。
[上田氏] お客さんがどのようなセグメントにあっても、彼ら(VA)がやろうとしていることは1つが筋が通っています。それは、常にお客さんに、オープンソースのソリューションを提供することです。
[Larry Augustin氏] 私たちがコンサルティングを商売にしているので、お客さんがオープンソースではないソフトウェアを運用したい、とおっしゃっても、「そちらもいいかもしれないけど、Linux/オープンソースでこういうのもありますよ」とおすすめするようにしています。そのあとはお客さん次第なので、お客さんがオープンソースではないソフトウェアを使う、と言ったらそうなるのでしょうけれども。私たちのスタイルとしては、常にオープンソースで利用可能なほうがサポートもしやすいし、よろしいのではないか、と提案しているということです。
ちょっと面白かったのは、大手のソフトウェア会社は最初のバージョンを売った代金が1割だけで、残りの9割はサポートやメインテナンス、コンサルティングの料金なんです。それならば、はじめから最初のバージョンをオープンに売ってしまえばいいじゃないかと。
[Larry Augustin氏] デスクトップと比較して、サーバのほうがよりオープンソースの選択肢がたくさんあります。デスクトップでは、まだまだオープンソースのアプリケーションが少ないのですが、サーバではデータベースを含めてかなり選択が広がります。
[日刊アスキー] オープンソースという世界は、ボランティアで作られてきたと思いますが、サポートを売っていく会社は、コミュニティに対してうまく折り合いをつけていくことができるのでしょうか?
[Larry Augustin氏] オープンソースがたくさんのボランティアによって開発されてきた理由は、それぞれの開発者が、ソフトウェアをよくしたいと思ってきたからです。お金のためではありません。ソフトウェアを自分で書き換えて、うまくできたら達成感がありますよね? オープンソースはそういう原理でずっと成り立ってきました。お金をとる(=ビジネス)だけになってしまったら、本当にいいものを作るのではなくて、金をもらっているから直す、といった形になって、オープンソースがダメになると思います。もちろん、お金をもらいつつ、クオリティにこだわって、いままでLinuxを作ってきた方々と一緒に開発するのがベストかもしれないし、そういう精神というのはLinuxの中にずっと残っていくでしょう。お金だけでは、あまりいいクオリティというのは不可能だと思います。

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