米大統領選と言えば、1年以上も前から繰り広げられる広報活動や応援合戦が有名だ。今年は、2008年の選挙に向けて民主党候補の2人――ヒラリー・クリントンとバラク・オバマがメディアを賑わせている。
それぞれ当選すれば、女性初、黒人初の大統領になるというわけで注目度も高く、米メディアの報道の様子も、どちらかというとお祭り騒ぎ的な賑わいだ。
「オバマは、今やロックスター並みの大人気!」と米メディアで取り上げられたのは今年の6月のこと。「I got a crush on Obama」(オバマに夢中)というプロモーションビデオ(PV)がYouTubeに流れ、あっという間に話題になった(YouTubeの動画)。
PVの制作者は、マーケティング・広告分野の仕事に携わるベン・レリス(Ben Relles)。曲を手がけたのは、テンプル大学の学生で21歳のリア・カウフマン(Leah Kauffman)。PVに流れる曲も彼女自身が歌っている。そして、PVに登場するオバマ・ガールは、レリス氏が、ネットで見つけたモデルのエンバー・リー・エッティンガー(Amber Lee Ettinger)だ。
エッティンガーのウェブサイトを見付けたベン・レリスがメールで「面白い企画があるんだけどモデルになってくれないか?」と声をかけ、「面白そうね」と事が運んだ。
I got a crush on Obamaは7月には250万ビューに達し、12月には400万ビューを超えている。
無名から一躍、ときの人になったオバマガール
ASCII.jpの読者なら、すでにご存知という方も多いだろうが、このミュージックビデオ、オバマにメロメロな若い女性がニューヨークを舞台にオフィスや公園でオバマに思いを寄せてセクシーポーズをとりながら歌い踊るというものだ。
歌詞には、オバマの政策を支持する内容なども盛り込まれている。オバマ・ガールとなったエンバーは、無名に近かったモデル時代から一転した活躍ぶりを見せている。「Maxim online」「Howard.TV」「Bikinilife.TV」といった男性向けのサイトが、YouTubeのヒットを聞きつけ、6月に彼女をモデルとして起用。彼女の水着ショットを次々と掲載した。
このネットの騒ぎっぷりに今度はテレビや雑誌や新聞が反応した。7~8月以降は「People Magazine」「PlayBoy」などにも次々にセクシーショットを披露。全国ネットのテレビインタビューにもいくつも登場している。
そのたびに、オバマ・ガールの名前が出るわけだから、いい広告塔となっているわけだ。オバマの正式な事務所側の人間は、制作にはまったく関与していない。政府でもなく、候補者でもなく、(その道のプロではあるとはいえ)、個人が学生とコラボして作ったコンテンツが発端となって、大統領選そのものを盛り上げてしまったというのは、Web 2.0時代ならではの現象と言える。
YouTubeというネット媒体に、従来のメディアが後追いとなって付いていくといった現象はもはや珍しくなくなった。
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