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週替わりギークス 第128回

『君の名は。』やドッペルゲンガー体験を仕掛ける若き研究者

AIやVRは人間の意識を変えられるのか?

2019年06月18日 17時00分更新

文● 佐久間洋司 編集● 上代瑠偉/ASCII

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「人を優しくする機械で、世界から争いをなくしたい」

 今回から「週替わりギークス」を担当することになりました。大阪大学の佐久間洋司です。

 今回の記事では、僕がいま取り組んでいる研究や、その背景について紹介させていただけたらと思います。

 僕がとくに興味をもっていることは「言葉や科学を通じて、人間の意識に働きかけること」です。それによって、争いのない世界に貢献することを目指しています。わかりやすく少し大げさな言葉で言うと、「人を優しくする機械で、世界から争いをなくす」という目標を持っています。

 よく間違われるのですが、人に優しいロボットをつくったり、人と共存する人工知能のシステムをつくったりといった話とは違います。それらも素晴らしい取り組みですが、ここでは機械が人を優しく変えることを指しています。

 もちろん、争いのない世界を実現するために、僕たちができることはたくさんあるのではないかと思います。

 たとえば、ユネスコの設立序文には「全ての争いは人の心の内側から生じている」と記されています。彼らは平和な世界を実現するために「教育」によって、僕たちの心に働きかけることを目指しています。世界中に教育を行き届かせることで、僕たちはお互いを尊重し、理解しあえるというビジョンです。

 ただし、僕は教育にも限界があると考えています。それぞれの指導者や教育者の力に頼りすぎている、言い換えれば、個人の能力に大きく依存しているのではないかと思うからです。また、人から人への教育は、インターフェースが主に言葉に限られている、という課題もあります。

 そこで、僕は新しいアイデアを提唱しています。属人性のない自動機械のシステム、つまり、系統だった機械で人の心に影響を与えられるのか、ということを考えています。個々の人間の力に頼らずに、すべての人に適切な機械を行き届かせることで、相手の感情を想起する自然な共感を生みだす、というアイデアです。

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