NECといえば日本を代表する携帯電話メーカー。ドコモを中心に「N」の型番の製品を多数送り出してきました。スマートフォンも2画面端末などアグレッシブな攻めを見せましたが、2013年を最後に撤退してしまっています。NECのスマートフォンの歴史を振り返ります。
日本初の携帯電話を投入。PDAを送り続けた黎明期
NEC最初の携帯電話は1987年に発売された「TZ-802B」で、パナソニックとの共同開発品でした。それ以前にはショルダータイプの自動車電話も開発していましたが、片手で持ち運びできる携帯タイプの端末はこの製品が最初となります。海外では1983年にモトローラが世界初の携帯電話「DynaTAC 8000X」を発売しており、形状は同様のもので手のひら全体をつかってしっかりと握る必要のある大きさでした。
本体重量は900グラムと重いものの、外出先のどこでも電話できる利便性は人と人とのコミュニケーションスタイルを大きく変えるものになります。とはいえ当時は携帯電話の加入に保証金が20万円かかるなど、庶民には高根の花であり主な利用者は会社契約したビジネスユーザーでした。
その後アナログからデジタル方式(PDC)へと世代が変わり、携帯電話はより小型で性能がよく、端末の買い切り制度も始まったことでだれもが使うことのできる製品になっていきます。ドコモが1999年にiモード、2001年にW-CDMA方式の3Gサービスを開始すると日本の携帯電話は一気に高性能化が進んでいきます。NECも積極的に高性能携帯電話を次々に送り込んでいきました。
その一方で、NECはPDAを多数輩出していきます。「モバイルギア」の製品名で、最初のモデルは1996年に登場しました。「MC-P1」はペン入力のタッチディスプレー端末、「MC-K1」はQWERTYキーボード搭載機でした。OSはまだPocket PC/Windows Mobileが登場しておらず、MS-DOSに独自UIを搭載。もちろん携帯電話機能は内蔵していませんが、14.4kpbsのモデムを内蔵し電話線経由でNiftyサーブなどへの接続が可能でした。当時はISDN対応の公衆電話があり、電話線を接続して町中でもネットアクセスすることができる時代だったのです。
この連載の記事
- 第129回 マイクロソフトと喧嘩別れか イギリスのスマホメーカー・Sendoの歴史
- 第128回 韓国スマホ市場でたった2年だけ圧倒的な人気を博した「LUNA」
- 第127回 ウォークマンと肩を並べた音楽プレーヤーIriverはかつてスマホも作っていた
- 第126回 実は日本ブランド・パイオニアのスマホが中国で脚光を浴びていた
- 第125回 LGのスマホ事業はどうなる? 5G対応モデルでライバルたちを追い抜けるか
- 第124回 ポルトガルの特産品コルクを使ったぬくもりあふれるスマートフォン・IKI Mobile
- 第123回 世界初の折れ曲がるスマホ「FlexPai」はこうして生まれた
- 第122回 カメラ機能無しスマホで地位を確立したシンガポール・iNO mobile
- 第121回 世界最強の強度を誇るスマホは中国で生まれた BlackViewの一貫した製品展開
- 第120回 表も裏側もスマートフォン 両面端末に夢を託したメーカー・Siswoo
- この連載の一覧へ