「究極のXperia」という混乱を経てXperia Z5、XZへ辿り着いたソニーモバイル
2016年10月30日 12時00分更新
ハイエンド製品を中心としたXperiaシリーズの展開でスマートフォン市場の一角を担うソニーモバイル。
同社は一度は単独で事業展開を図りながらも、その後、エリクソンと協業し約10年間事業を行ないました。2012年からは再びソニー単独としてスマートフォン市場に新たな風を吹き込んでいます。
前編はソニー・エリクソンからソニーモバイルへの変貌、名機Xperia Z Ultraをおさらい。日本市場とグローバル市場の関係、「Xperia Z」シリーズの誕生など、新生ソニーのスマートフォンの動きを振り返ります。
新興国を攻めるソニーに強敵が出現、端末戦略の見直しへ
2014年4月、ソニーは今期(4月〜翌3月)のスマートフォン販売台数目標を5000万台と発表しました。ソニーによると2013年の販売台数は3910万台で、そこから約2割増を目指したものです。Xperia Zシリーズという強力なフラグシップを武器に、「Xperia E」「Xperia M」などのミドルレンジモデルを引っ提げ、先進国のみならず新興国でも販売数を伸ばす計画でした。
ところが2014年7月には目標台数を4300万台に引き下げ、中期経営計画も見直しました。2014年上半期のソニーに何が起きたのでしょう?
2014年の新製品は、まず1月のCES 2014で北米向けに「Xperia Z1s」「Xperia Z1 Compact」を発表。続けて大型スピーカーとウォークマンボタンを備えた「Xperia E1」、6型の大画面低価格モデル「Xperia T2 Ultra」も発表します。そして2月にはフラグシップ機のモデルチェンジとなる「Xperia Z2」、ミドルレンジの「Xperia M2」と立て続けに新製品をリリースします。
Zシリーズはもちろん先進国を、それ以外のモデルは新興国を大きなターゲットにしていました。中でもE1は手軽に音楽を楽しめる戦略的なモデルでした。
しかし、ソニーが狙った新興市場に強敵が現われます。
それは新興メーカーの低価格モデルです。その中でも急成長したのがシャオミでした。シャオミは2013年夏に中国で1000元(約1万5000円)を切る高コストパフォーマンスモデル「RedMi」を発表。
するとそれを追いかけるようにファーウェイが「Honor」、クールパッド(ユーロン)が「DaShen」と立て続けに低価格モデルを投入していったのです。その結果、2014年の上半期は1万円台のスマートフォンが新興国向けに次々と投入されていきました。
スマートフォンの低価格の動きが急激に広がるとは、ソニーも想像もつかなかったことでしょう。それまでシャオミのスマートフォンは「ハイエンドなのに低価格」を売りにしていましたが、それでも価格は3万円前後。新興国のユーザーには手が届く価格でありながらも、富裕層であればブランド価値のあるソニーなど大手メーカーの製品を買っていたわけです。
一方で、1万円台でも十分実用性のある製品が出てくれば、消費者はもはやメーカーを気にせず値段だけで製品を買っていきます。
2014年3月には5.5型の大型ディスプレーに13MPカメラを搭載する「RedMi Note」が登場。シャオミは意欲的に低価格モデルのラインアップを拡充させていきました。価格は同様に1万5000円前後。これと対抗するXperia M2は4.8型ディスプレーに800万画素カメラ。価格はさらに高く、低価格なXperia E1はRedMi Noteより見劣りしてしまうわずか4型のディスプレーに315万画素カメラ。ブランド信仰の弱い新興国で、これでは勝負になりません。
2014年はRedMi Noteと同等の製品が他社からも次々と登場し、その動きはインドのマイクロマックスなど、中国以外のメーカーの間にも広がっていきます。ソニーの中低位モデルは先進国のプリペイド需要では人気がありましたが、新興国でソニーファンを増やす起爆剤になることができなかったのです。
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