CapCut初のグローバルコミュニティイベントはクリエイターたちの「物語」が満載
CapCutで夢を仕事に変えた人たち、シンガポールで見た創作とAIの熱狂
2026年11月02日 11時00分更新
2026年9月5日、シンガポール・セントーサ島の高級リゾートホテル「カペラ・シンガポール」で開催された「CapCut World」の基調講演を取材した。CapCut(キャップカット)は、TikTokを運営するByteDanceグループが開発・提供する動画編集アプリだ。現在は画像・動画のAI生成からデザイン制作まで守備範囲を広げている。主催者によると、月間アクティブユーザーは世界で6億6000万人を超え、170以上の市場で展開している。
「インドネシアのクリエイターは?」「ベトナムは?」「日本は?」。司会が国名を呼ぶたびに、客席のあちこちから歓声が上がる。隣り合った見知らぬ人同士が声をかけ合い、会場は開演早々、国境を越えたクリエイターの集まりになっていた。動画編集アプリのイベントとは思えない熱気だ。日本からも3人のクリエイターが登壇し、存在感を示していた。
このCapCut初のグローバルコミュニティイベントには、クリエイターや業界関係者、運営チームなど300人以上が参加。壇上で語られたのは商品紹介や最新機能だけではなかった。動画作りを始めた普通のユーザーが、作品を世界へ届け、仕事や生き方まで変えていくさまざまな物語が披露されたのだ。
基調講演には、CapCutの担当者4人と、日本を含むアジア各国のクリエイター8人、計12人が登壇。本稿では、その中から特に印象に残った6人の話を紹介する。
棒人間からキャラクターを生成、デザインの仕事が変わる
日本から登壇したデザイナーのシマヤス(SHIMAYASU)氏は、CapCutの「Design Studio」で仕事の進め方がどう変わったかを実演した。参考画像を集める段階から制作まで、1枚のキャンバスでつなげている。ウェブサイトで見つけたデザインはブラウザの拡張機能から素材ライブラリへ保存し、まとめて取り込めるという。
面白かったのは、漫画キャラクターのポーズ指定だ。キービジュアルに棒人間を置いて腕や足の位置を決め、参考画像を渡すだけで、指定した動きのキャラクターが生成された。さらに、完成したポスターを別の配色へ展開したり、色を抽出して別の販促物に適用したりと、実務を想定した使い方を披露した。画像に埋め込まれた文字を編集可能なレイヤーに分けて修正できる点も重要だ。
もちろんAIに何もかも任せられるわけではない。たとえばQRコードは自分で確実に読み取れるものを作り、各制作物への置き換えをAIに任せる。
「AIはゴールのすぐ近くまで連れて行ってくれます。でも、最後にデザインを仕上げること、そしてそもそもゴールをどこに定めるのかはデザイナー次第です。だから、デザイナーが自分の意思を持って判断して、AIを良きアシスタントにしていくということが私のスタンスです」(シマヤス氏)
数十枚のデザインを約10分で生成、速さを支えるのは人の経験
続いて紹介したいのは、デザイナースクールを運営するCoCoDesign代表のカノ(Kano)氏だ。講演途中で機材トラブルが発生したものの、司会は客席に「Cap!」「Cut!」「World!」と呼びかけて場をつないだ。会場全体が声を合わせ、再開後も熱気は途切れなかった。
カノ氏が示したのは、10代、20代、30代に向けてデザインの方向性を変える制作例。配色やフォント、人物モデル、装飾素材の4つを軸に、誰に届けるかを考えるという。その条件をAI Labに与えれば、異なるテイストの案を一度に作ることができる。
「以前は1枚ずつ手作業で、1枚あたり20分以上かかっていました。しかし、今ではテンプレートとAIで土台を作り、数十枚のデザインが10分程度でほぼ完成します。あとは仕上げと調整に集中することができます。AIと人間の関係性は、優劣ではなくプロセスそのものが変わったという感覚です」(カノ氏)
AIで数十枚のデザインを作れても、ターゲットの好みを理解していなければ、使えるものにはならない。制作が速くなるほど、どんなデザインにするべきかを判断する経験がものをいうわけだ。
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