マウスコンピューターの「信頼」を支える最前線——埼玉サービスセンターに見るアフターサポートとリファービッシュ事業

文●ASCII

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自社運営(内製化)が実現する即応性と品質向上ループ

 一般論として、メーカーがアフターサポートや修理業務を外部企業にアウトソーシングするケースは少なくない。しかし、マウスコンピューターは顧客対応から製品修理、データ解析に至るまで、ほぼすべての工程を自社運営で行うスタイルを貫いている。いくつかのポイントに分けて、その意図やメリットを整理してみよう。

取材対応してくれたサービス本部 本部長 飯沼茂樹さん

情報共有の壁を取り払う一元化データベース

 自社運営の最大の強みは、部門間における情報連携のスピードと透明性にある。コンタクトセンターで顧客から聞き取った不具合の症状や使用環境は、社内で独自開発した共通データベースに即座に登録される。埼玉サービスセンターに届いた実機は、このデータベース上の履歴と紐づけられ、作業担当者は過去のやり取りを完全には把握した状態で診断・修理作業に入ることができる。外部委託の場合に生じがちな情報伝達のタイムラグや契約上の制約は存在せず、社内スタッフ同士の迅速な連携によって最小限のステップで解決へと導く体制が整えられている。

開発・品質管理部門との緊密なフィードバック

 埼玉サービスセンターで日々収集される修理データは、目の前のPCを直すためだけに使われるわけではない。同センターには技術・データ分析を専門に担当する部門も配置されており、発生した不具合の原因を詳細に解析している。この結果は週2回開催される開発・品質管理部門との連携ミーティングを通じて新製品の設計へとフィードバックされる。さらに部品単位の不具合傾向が判明した場合には、サプライヤーやODMパートナー企業へもデータが共有され、パーツ自体の品質改善や次世代モデルでの問題予防へと繋げられている。

技術継承を支える社内検定制度

 技術の進化が早いPC業界において、現場スタッフのスキル向上は欠かせない。埼玉サービスセンターでは、トラブルシューティングや製品技術に関する独自の「本部内検定制度(社内資格)」を実施している。この制度は評価制度にも組み込まれており、最新の製品知識と技術をアップデートし続ける仕組みとして機能している。若手からベテランまで幅広く在籍する現場において、長年のノウハウが体系的に継承されている。

1台1台に向き合う修理工程とユーザー目線のこだわり

 サービスセンター内部は、入出荷エリア、診断・修理スペース、厳格なパーツ管理エリアなどに機能的にゾーニングされている。受け取った製品を安全かつ迅速にユーザーへ返すために考えられた工程には、数々の工夫が凝縮されていた。

システムと熟練の技が融合する修理フロー

 埼玉サービスセンターにおける修理工程は、大きく以下のステップで進行する。また、フロア内は製品が入荷から出荷へと時計回りにスムーズに流れる動線設計となっており、無駄な移動時間を削ぎ落としている。

入荷・仕分け:朝9時〜10時台にトラックで到着した配送品は、午前中に開梱・状態チェックがなされ、入荷登録が完了する。優先度に応じた初期仕分けもここで実施される。

診断・原因特定:製品はノートPCゾーンとデスクトップPC・モニターゾーンに分けられ、症状が再現するかテストしたうえで、不具合箇所の特定を試みる。

ユーザー連絡:診断結果に基づき、保証適用の可否や見積金額をユーザーへ連絡し、作業進行の承諾を得る。

パーツ交換・内部清掃:承諾後、不具合パーツの交換を実施。専用ブースでエアダスターを用いた内部の簡易清掃も実施する。

ユーザーから送られ、トラブルの確認や原因の診断をするために集められたPCが並ぶ。

送られてきたパソコンはこのようにセット単位で管理して扱われる。消耗した電池などが分かれば、先に取り外して申し送りをすることもある。

診断グループでは詳細にチェックして、原因を究明する。

今起こっているトラブルは解消するだけでなく、その問題と対応を蓄積することで、これからの対応や品質の向上につなげられる。

部品交換など、具体的にトラブルに対応している様子。

QC(クオリティチェック):動作確認試験やOSの正常稼働確認、最終的な出荷可否の判定を行う。

QC(品質管理)グループの外観

技術グループの外観

出荷:最終チェックをクリアした製品は丁寧に梱包され、ユーザーへ向けて発送される。

返送前に梱包されたPC

補習用部品としてストックされたキーボードを手にする飯沼氏

過去製品で使用した部品が膨大な数、ストックされている。

様々な規格が揃ったノートPC用のメモリー

マザーボードはこのように梱包材に入れて管理されていた。

ビデオカードの在庫、懐かしい型番が並ぶ。

液晶パネルも機種別にかなりの種類があった。

診断の難しさとゲーミングPCにおける高難度対応

 修理工程において高度なノウハウが求められるのが「診断」である。入庫品の中には、事前に申告された内容が現場で再現しない「症状未再現」のケースも多く発生する。

 特に近年の問い合わせで悩みが多いのは「ゲーミングPCの不具合対応」だという。ハードウェアの故障だけでなく、ゲームのクライアントデータ、ネットワーク環境、ゲーム会社のサーバー障害、ドライバーの不具合など、不具合の原因となる要因は多様であり、その切り分けが難しいためだ。ハードウェア自体に問題がない場合でも、ユーザー環境で起きている現象を追究・説明しなければならない。

 ハードウェア以外の問題については、マウスコンピューターの責任の範囲を超えるが、ユーザーの問題解決に近づき、的確な対応ができるよう、現場では検証環境も用意し、比較検証を重ねながら原因特定が進められている。

ユーザー対応を実施するサポートグループ

その一角には実機が並べられ、不具合やトラブルがあった際、実機で動作を確かめられるようになっている。

ゲーミングノートPCなど様々な種類の製品が並んでいる。

「72時間修理」への執念と予防的メンテナンス

 同社はサービス品質の指標として「72時間以内の修理完了(拠点到着から出荷まで)」という目標を掲げ続けている。季節的な需要の変動によって直近の実績値が平均72時間を超える場合もあるが、同社はこの目標を下ろすことなくスピードの改善に取り組んでいる。

 さらに注目したいポイントは、申告された箇所の修理にとどまらない「予防的メンテナンス」の実践だ。

 代表例がマザーボード上のボタン電池(CMOS電池)の全数電圧チェックである。ここはユーザーからの申告がない場合でも自主的に確認を進め、電圧低下が確認された場合は(保証期間内であれば)新品に交換するといった対応を試みる。キーボードやバッテリーの劣化に対しても、製品全体をチェックした上で最適な対応を検討する。

 こうした見えない部分での配慮もユーザーの信頼を獲得するうえで重要だと同社は考えている。

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