世界初の「Eclipsa Audio」対応マイク
ソニー、スマホに直結可能な空間オーディオマイク「ECM-AX10」を発表、アンビソニックスやバイノール録音に対応
2026年10月09日 13時15分更新
ソニーは10月9日、スマートフォンで空間オーディオ(イマーシブオーディオ)の収録ができる録音マイク「ECM-AX10」を発表した。価格はオープンプライスで、発売は10月23日の予定。店頭での販売価格は3万円前後になる見込みだ。
空間オーディオ収録が身近になるマイク
ECM-AX10は、スマホのUSB端子に直結して、手軽に音声収録ができるマイク。旅先やロケ撮影でその場の空気感・雰囲気含めてまるごと記録したいと考えるVloggerやYouTuberをターゲットにした製品だ。
スマホのUSB端子に直結できるマイクには、Shureの「MV88」やZoomの「Am7」といったマイクがあるが、本機は立体的に音響を記録するために、一般的なステレオマイクとは少し違った仕様になっているのがポイントだ。
コンパクトなサイズのマイクだが、目を引くのが本体から飛び出した球体の部分だ。ここがマイクの収納部になっており、内部には前方と後方の斜め上、前方と後方の斜め下に向けた4つの「全指向性マイク」が対角線上に組み込まれている。これにより、前方や左右だけでなく上下や背後の音も含んだ、空間全体の音を収録できる仕組みだ。
本体から飛び出ているのは音の反射で空間定位が乱れないよう、スマホ本体からマイクを離すため。そのため構え方としてはこの部分が上に飛び出た状態にするのが基本となる。
本体内蔵のストレージはなく、録音データはアプリを使ってスマホなどに直接保存する。本体スイッチの切り替えで、アンビソニックス(4ch)、バイノーラル(2ch)、ステレオ(2ch)のうち、どのフォーマットで録音してスマホに出力(保存)するかを選べる。
本機の売りはイマーシブオーディオの「アンビソニックス」で録音できる点だが、4chの再生には対応する機材やソフトが必要なこともあり、一般的な用途で扱いやすい、2chにミックスダウンした形式も選べる形だ。
アンビソニックスとは何か?
少し専門的な話になるが、イマーシブオーディオの収録に使うフォーマットにはいくつかの種類がある。本機が対応しているアンビソニックスは「シーンベース」と呼ばれる方式だ。ほかにはAuro-3Dなどの「チャンネルベース」、Dolby AtmosやDTS:Xのような「オブジェクトベース」のフォーマットがある。一口に空間オーディオとまとめられがちだが、方式によるメリット・デメリットはある。
アンビソニックスの特徴は、マイクを中心とした360度の全天球空間の音を物理的に収録できる点だ。音の動きを立体的に捉えられることに加えて、首を動かしながら周囲の音を聞いたときのように、自分を中心に音の鳴る向き(空間定位)を回転させられる。VRなどとも相性のいい方式と言える。
Eclipsa Audioにも対応
録音モードの切り替えスイッチ(本体側)には「SPATIAL」と「STEREO」の2種類がある。ECM-AX10を使ってアンビソニックスで録音し、保存したり再生したりするためにはiOS/Android用の録画・録音・編集アプリ「Spatial Audio Video Tool」(以下、SAVツール)を使用する。
モードスイッチをSPATIALに合わせた状態ではアンビソニックスまたはバイノーラルでの録音が可能。SAVツールを使って録画・録音をする場合は、アンビソニックスがデフォルトで、アプリ側の設定でバイノーラルも選べる形だ。SAVツール以外の動画撮影アプリを使う場合は、自動的にバイノーラル録音での収録となる。
逆にモードスイッチをSTEREOに合わせた場合は一般的なステレオ録音となり、アプリを問わず利用できる。その際も、4つのマイクで得た情報を2chにミックスダウンするので、一般的なマイクよりも高音質だという。
ちなみに、ECM-AX10自体は4chのマイクで音の大まかな方向をとらえる「一次アンビソニック」(FOA)の方式だが、録音した生データ(Aフォーマット)から、音の成分を前後や上下に分解したデータ(Bフォーマット)に変換して出力することも可能だ。これを音楽制作ソフト(DAW)に読み込めば、空間定位の調整など、データをより深く扱うことができる。
その変換にはDSPを使用し、高次アンビソニックス(HOA)で用いる高度な信号処理技術を通す。「広帯域にわたる理想的な指向性」と「低域から高域までバランスの取れた周波数特性」を両立しているため、「高音質で正確な空間定位、臨場感や没入感が高い録音ができる」とソニーは説明している。
また、SAVツールは、グーグルやサムスンが関わるオープンソース規格で、YouTubeにもアップできる「Eclipsa Audio」にも対応している。再生環境が整うのはこれからという面もあるが、将来的な展開が期待できる要素だ。
ダミーヘッドマイクなしでバイノーラル録音にも対応
本機はアンビソニックスだけでなく、VRやASMRなどでもよく用いられているバイノーラル録音をコンパクトかつ気軽に楽しめる点もメリットだろう。
バイノーラル録音というと、ダミーヘッドマイクをイメージする人が多いと思うが、その多くは大型で高価なものなので、誰でも手軽に使えるものとは言いにくい。バイノーラル録音は2chにミックスダウンした状態で保存されることもあり、手軽に扱える。ヘッドホンなど身近な再生機で立体的な音を楽しめるのがメリットになる。
小型だが細かな設定が可能
ECM-AX10はマイクとしても高機能で、自由度の高いスタイルで収録できる点も特徴となる。
本体には「ノイズカットフィルター」(背景雑音の除去)や「ローカットフィルター」(風切り音や空調の音、振動音など低周波のノイズの軽減)の切り替えスイッチを装備。
自動で適切な録音レベルが選ばれる「オートゲインコントロール」機能もあるが、録音している音が大きすぎて歪む恐れがある場合は「ピークインジケーターレベル」(OVER、-12dB、-20dB)で確認して、OVER(歪みが発生する状態)になったら「アッテネーター(ATT)」スイッチで録音音量を調節する(0dB、10dB、20dB)といったマニュアル操作もできる。音が大きい場合は20dB、逆に小さな音を繊細に収録したい場合は0dBを選ぶ。
本体には「ウインドスクリーン」(風帽)やスマホホルダーやミニ三脚のコールドシューに取り付けられる「コールドシューマウント マイクホルダー」、40cmのUSB-C延長ケーブルが付属。スマホから離した状態で使うことも可能だ。
使い勝手も考えられており、内蔵の加速度センサーでスマホが縦位置か、横位置かを自動で検出。さらに「セルフィー(SELFIE)」スイッチを切り替えて、撮影時にインカメラ、アウトカメラのどちらを使用するかを指定すれば、スマホカメラを構える向きが変わっても上下左右の音が入れ替わらないように収録できる。
また、3.5mmのヘッドホン出力を持ち、収録している音をその場でモニターできるのも便利だ。「きちんと音が録れているか」という心配がひとつ減る。
周波数特性は20Hz〜20kHzで、最大音圧レベルは120dB SPL、録音フォーマットは48kHzで32bit(アンビソニックス)、48kHzで16bit/24bit/32bit(バイノーラルとステレオ)が選べる。本体重量は約24gで、スマホからのUSB給電で駆動する。
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