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サイボウズ×Box対談:情報の分断を防ぎ、安全で「AI Ready」なデータ基盤をどう整えるか

「眠れるデータ」をAIの力で呼び覚ます 中堅・中小企業が選ぶべきデータ環境の“現実解”

2026年09月09日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

提供: Box

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“ただのデータ集約”では不十分? 「AI Readyな環境」の条件とは

 AI活用を目的として、中堅・中小企業が環境整備を進めるうえでは、目指すゴールを明確にする必要があるだろう。社員がAIを活用して成果が出せる環境、いわゆる“AI Readyな環境”とは、具体的にどんな状態を指すのか。

 一般には「業務データが一元的に管理・整理されており、AIツールからデータを読み書きしやすい環境」といったイメージで語られる“AI Ready”だが、池田氏は「それだけでは不十分です」と指摘する。

 「業務活用のためには、AIがデータを読み書きできるだけでなく、『組織として安全にAIを活用できる環境』が必要です。きちんとしたルールやガバナンスが基盤に組み込まれており、その安全な基盤上でテクノロジーが扱える環境をAI Readyと定義すべきではないでしょうか」(池田氏)

 ルールが整備されておらず、ガバナンスも効いていない環境下では、社員が勝手に作る“野良AIアプリ”の問題が起こりうる。特に最近では、生成AIに簡単な指示をするだけで、誰でもアプリが開発できるようになっている。会社もIT管理者も把握していない状況下で、勝手にAIアプリが作られ利用が進むと、情報漏洩やセキュリティ事故が起こりかねない。

 一方、松田氏は「データのコンテキスト(文脈)」も重要だと語った。AIに業務データを与えるとしても、そのデータが古かったり、正確さや信頼性が不十分だったりすれば、誤った結果しか得られないおそれがある。「そのデータは、いつ、誰が、どんな目的で作ったのか」というコンテキストが分かれば、AIに与えて良い成果が得られるデータかどうかを判断できる。

 「これからAIエージェントが登場し、エージェント自身がデータを発見してタスク処理を行うようになると、データのコンテキストはますます重要な要素になります。データを作った人間自身であれば『このデータは古い』『正確ではない』といった判断ができますが、エージェントにはそれができませんから」(松田氏)

 Boxでは、AIに与えるデータの要件として「スリーS(3つのS)」という言葉を提唱している。「セキュリティ・ステータス・鮮度」の3つを備えたデータでなければならない、という意味だ。

 もっとも、データのスリーS(=コンテキスト)まで意識する必要があるのは、データ基盤を統合・整備し、AI活用ができる段階になってからの話だ。まだその段階に至っていない企業では、「まずはデータ基盤の整備にしっかりと取り組むことが大切」だと、松田氏は強調した。

kintone×Boxで始めるクラウドリフト ― AI活用に向けた第一歩を考える

 中堅・中小企業がこれから取り組むことになる、AIとデータ活用の道のりは長い。その第一歩はどこから始めればよいのか。松田氏、池田氏にアドバイスを聞いてみた。

 “取り組みの第一歩”として、両氏がそろって挙げたのが「業務ITのクラウドリフト(クラウド移行)」だ。特に、現在はサーバー価格が高騰しており、従来の“クラウドは割高”という状況も変化しつつある。

 「まずは、ファイルサーバーをクラウドリフトすることが第一歩だと思います。Boxでは、これをいくつかのステップで進めることをお勧めしています。メールへのファイル添付(いわゆる“PPAP”)を廃止する、ファイルサーバーのリプレースのタイミングで全社導入に拡大する、文書管理や法令対応が必要なコンテンツのガバナンスをBoxで強化する――。こうやって段階的に進めていくことで、予算を確保しながらBoxへの移行ができます」(松田氏)

 「これまで、現場で紙やExcelで管理していたものを、kintoneを使ってアプリ化する。こうすることで、最新のデータが常に一カ所で参照できるようになり、AIで活用できる構造化データが自然とたまっていくかたちになります。AI活用にしてもデータ活用にしても、まずはクラウド化することが第一歩になると思います」(池田氏)

 ちなみに、さまざまな業務システムをクラウド化しても、それぞれのアプリケーション(SaaS)にデータが分散しているならば、AI活用のさまたげになってしまう。そこで考えたいのが、クラウド上でデータを集約し、管理を一元化する方法だ。

 kintoneとBoxの場合、kintoneにBoxと連携できるプラグインを設定することで、kintoneのアプリ画面からBoxにファイルを保存したり、プレビューを参照したりできるようになる。

 「たとえば、kintoneで工事管理のアプリを作っているお客さまでは、工事に関する情報をkintoneに入力し、設計図や工程表、現場の動画や写真といったファイル情報も同じ画面から添付するだけで、Boxへ自動連携して保存できます。工事の詳細情報とドキュメントを1つの画面上で確認できるようになることで、それぞれの画面を確認する手間がなくなります」(池田氏)

 つまり、kintone上で記録されたデータ(レコード)と、Boxに保存された添付ファイルを、ひも付けて管理できるわけだ。同時に、Boxの強みである大容量ファイルの保存、詳細なアクセス制限といった特徴もそのまま生かせる。

 「業務プロセスの管理はkintone側で進めながら、そこで発生するさまざまな書類やコンテンツはBoxで一元的に集約、管理できます。Boxでは『アプリケーションとデータの分離』を提唱していますが、そうすることでクラウド上での情報分散、サイロ化を抑えることができ、データのAI活用にも有益だと考えています」(松田氏)

M-SOLUTIONS「クラウド連携プラグイン for Box」を組み込んだkintoneアプリの画面例

 なお、BoxとkintoneにはそれぞれAIツールが組み込まれており、その機能も急速に進化している。

 kintone AIは、AIと会話をするかたちで、システム開発のスキルがないユーザーでも必要なアプリを開発できる。一方、BoxのAIでは、保存されたファイルから自動的にコンテキスト情報を抽出することが可能だ。いずれも、企業がAI活用という最終ゴールに近づくことを支援するAIツールである。その活用も重要になっていくだろう。

* * *

 これからの企業にとって、AI活用は欠かせない取り組みになる。だからこそ、先に「組織として安全にAIを活用できる環境」を準備する必要がある。社内のデータ基盤整備は、派手ではないものの重要な取り組みであり、kintoneとBoxはその“現実解”となるはずだ。

 「やはり、まずは基盤整備をしなければならない。基盤整備をしたその後に、AI活用があります。われわれBoxが貢献できるのは、多くの企業が直面している『情報の分散』と『ガバナンスの欠如』を同時に解決し、AIが安全に動かせる土台を作ることです」(松田氏)

 「kintoneが目指しているのは、『業務改善を自分たちでできる』という成功体験や、そうした市民開発を積極的に促す企業文化を生み出すことです。中堅・中小企業がAIを活用することで、こうしたムーブメントはさらに広がっていくと確信しています」(池田氏)

 AIが登場したことで、業務データを蓄積することに新たな価値が加わった。これまで眠っていたデータが生かせるようになる――。こうした変化は、これから中堅・中小企業に大きなチャンスを与えることになるはずだ。

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