3Dヒートパイプ採用のハイエンド空冷「V8 ACE 3DHP」
Cooler Masterを語るならCPUクーラーは外せない。昨今の映え重視のPCビルドでは空冷クーラーは地味な選択になりがちだが、同社の最新空冷クーラー「V8 ACE 3DHP」はシンプル/ 光らない/ 冷えるという空冷クーラーの王道を攻める注目の製品である。想定売価は1万8000円前後。空冷で攻めたいという人なら見逃せない製品だ。
製品名の「3DHP」とは、Cooler Masterが2025年から採用を開始した「3Dヒートパイプ」のことである。通常のヒートパイプは1本のパイプを「U」字に曲げて使用するが、3Dヒートパイプは「Ш」、つまりポセイドンが持つ三叉の槍のごとき形状になっている。従来のU字型ではフィン中央部に熱が伝わりにくいデッドゾーンが生まれやすいが、Ш字にすることでフィンの中央部にもピンポイントで熱を送り込める。
V8 ACE 3DHPからファンやフィンを取り去ったもの。ファンの風は写真の手前から奥へ抜ける形になる。フィンへの熱移送を重視するとヒートパイプがファンの風を妨害しやすくなるし、風の通りを重視すれば熱移送が犠牲になりやすい。3Dヒートパイプで受熱プレートから直接ヒートパイプを生やすことで、少ないヒートパイプ本数でも熱移送効率を稼ぐことが可能になるというわけだ
V8 ACE 3DHPのヒートパイプだけ取り出したもの。U字に曲げたヒートパイプの中間に別のヒートパイプを精密溶接で接続している。中央のパイプは内部にグルーブ(溝)が刻まれているが左右のパイプは焼結粉末になっている理由は、パイプ内の作動液の循環速度を上げるための工夫である
Cooler Masterが3Dヒートパイプを初採用した製品は「Hyper 212 Black」だが、Hyper 212 Blackは3Dヒートパイプ2本のエントリー寄りの製品。3Dヒートパイプをハイエンドに持ち込んだのがV8 ACE 3DHPというわけだ。
V8 ACE 3DHPは120mmファンを採用しているため、他社製のハイエンドクーラーと比較すると横幅が狭め(約139mm)。PCケース天井部やビデオカードとのクリアランスがより広めに確保できるが、これは組み立てやメンテナンス時の作業性に影響する。いろいろなCPUに交換して楽しみたいという人にとっては、作業性の高さは無視できないファクターだ。
さらにV8 ACE 3DHPはファンの固定方法に工夫することで作業性をさらに高めている。一般的なサイドフロー式クーラーではファンとフィンにワイヤーをひっかけて側面で固定する方式が定番だが、V8 ACE 3DHPはファンを上部からスライドさせるだけでガッチリ固定できるという仕組みを採用している。
PCケースとCPUクーラーのクリアランスが少ないと、すでにマザーボードを組み込んだ状態からCPUクーラーの設置、特にファンの固定にとても苦労するというのは自作PCでは珍しくない光景(だがこれを回避するためにCPUクーラーを先に組み込むと、配線で苦労することになる)。だが、ファンの固定をレール式にすることでCPUクーラーの組み込みや後々のメンテナンス負荷が大幅に下がるのは間違いない。
V8 ACE 3DHPがおもしろいのは、対応CPUがインテルとAMDで分かれているところだ。CPUクーラーはマザーボードにクーラー本体を固定するためのアタッチメントを工夫することでインテルとAMDを「両対応」にすることが多いのだが、V8 ACE 3DHPはこの流れに完全に逆らって「別対応」になっている。
その理由はCPUの「反り」だ。AMD製CPUはマザーボード装着時でもCPU表面がフラットであるためV8 ACE 3DHPのAMD版はCPUとの接触面が平滑。だがインテル製CPUはわずかに凹形状になるため、V8 ACE 3DHPのインテル版は接触面を凸型に加工している。
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