「変化するくらし」に対応、日本メーカーとしての持ち味発揮か?
体験会ではパナソニックがこれまで培ってきたコア技術を活用した画質・音質の追求と「変化するくらし」への対応がアピールされた。テレビは放送を観るだけでなく、動画やエンタメサービスを楽しむためのハブであると位置付け、集合住宅の限られたリビングのスペースにもマッチし、特に高層階で必要とされる耐震性など日本特有の事情に合ったスタンドの採用などを通じ、日本の住環境に適した安心安全を提供している点も強調された。
安心して長く使い続けられるテレビとしては、吸盤で固定する転倒防止スタンドの採用が進んでいる(2025年の時点で14機種に拡大)ほか、最長5年間の延長保証、パナソニックが家電製品で進めているリファービッシュ(再整備)品の用意なども進めている。
パナソニック テレビ事業部 マーケティング部の金澤貞善部長は「テレビ事業についてはこれまで市場投入の効果を優先した戦略を取っており、ラインアップの拡充に対して慎重に取り組んできた」が、「2026年は反転攻勢の1年と位置付け、ラインアップを拡充しつつ整える段階に来ている」と説明。80インチ以上の大画面テレビの拡充についても意欲を示していた。市場のトレンドとしては大画面化が進み、4K比率はすでに88%になっているほか、テレビのネット接続率は73.8%にまで達している。
すべての潜水艦映画を観るテレビとして勧めたい
映画『沈黙の艦隊』の監督・吉野耕平氏も招かれ、マーケティング部 国内マーケティング課の沖津大輔氏の質問に答える形で、最新のテレビで自身の作品を観た感想についてもコメントした。
一度完成した自分の作品は「あとからはあまり観ない」と話す吉野監督だが、新しいビエラの表現力はどう目に映ったのだろうか。強調されたのは暗部表現の正確さだ。
吉野 「劇場は暗い環境。沈黙の艦隊は暗闇での戦いが多いこともあり、テレビでは情報量の6割が出ればいいだろうと考えていたが、逆に甘えていた面もある。ここまで出てしまうのかとドキドキしながら観た」
沈黙の艦隊では、潜水艦を中心としたストーリーが展開されることもあり、暗部の表現力は非常に重要だ。制作側としては、一度世に出てしまった作品に何か直したい部分が出ないかどうかのほうが心配という面もあるそうなのだが、特に真っ暗な劇場で観ることを意図して調整した暗部の階調表現が優れている点に驚きがあったそうだ。
吉野 「(沈黙の艦隊は)全体の2/3が夜や深海で、暗い艦内は暗闇の中で何があるかのバランスを取り続ける作業。暗い艦内で照明があって、壁がギリギリ見えるなど、見えるところ見えないところの境界が意図通りに出るのにびっくりした」
苦労したシーンはいろいろとあったそうだが、「象徴的なのは、中盤のオーロラの下に浮上した北極点に近い暗闇の中で、ライトを照らさずに演説する。オーロラの光だけで照らされている世界。実写では光量が足りないが、感度を上げると詩情が出ない。CGだとバランスが難しい。黒との戦いが続いた」のだそうだ。「家に帰って、暗闇の中で手を見て来いとスタッフに指示した」など撮影のエピソードも披露された。
このシーンをビエラで観ると「嬉しさを感じつつも、ミスや苦労の跡が見えてしまうかもしれないという怖さも感じた」という。一方で、「オーロラの鮮やかさ、人間の表情、見えるか見えないかの際で再現した粉雪などが的確に再現されている」と評価した。
音についても、沈黙の艦隊はクラシック音楽を使ったドラマチックな展開が特徴だ。見せ場では、セリフ、効果音、音楽がお互いを消しあわず、しっかりと聞かせる必要がある。この点についても、「劇場用のバランスではどれかが犠牲になってしまうだろうなとあきらめていたが、これらの情報を邪魔しあわず届けてくれたのは本当にすごいなと思った」とコメントしていた。
上記を踏まえ、沖津氏から投げかけられた「沈黙の艦隊とビエラの相性はいいのでは?」という質問にも「黒が重要な作品なので、沈黙の艦隊に限らず、全潜水艦映画と相性がいいのではないか」と太鼓判を押していた。吉野監督は「父のように映画館に行くには体力がきつくなったという人が一番いい視聴体験を得られるという意味でも嬉しいし、子供たちに自分の仕事を見せる際にもベストな状態で見せられる」と映像表現のクオリティを評価した。
なお、沈黙の艦隊は最終シリーズまで実施することが決まっており、撮影が終わるタイミングにあるという。ファンが多く、漫画作品としての完成度が高い沈黙の艦隊を「長く最後まで面白い、巨大な山脈のような作品」と表現した吉野監督。予算規模が大きく、アクションや政治劇などを含んだ重層的なストーリーが展開される本作を「なかなかチャレンジできない案件だと思ってやり切ろう」と考え、「幸運と苦労をかみしめながら頑張っている」ともコメントした。
これからは、CGと仕上げ、暗闇の中で潜水艦を作り続ける作業が待っているとのことだが、これをやりとげて、劇場に浮上できる瞬間を夢見ていると抱負も述べていた。
実機を体験して分かった2026年版ビエラの底力
メディア向け体験会では従来機種との比較なども体験できたが、特に有機ELモデルの豊かな暗部階調が印象的だった。映画作品では暗い場所での上映が前提となっており、シーンによっては10cd/m2程度の低い輝度で制作されている場合も多い。この暗さの中で情報がつぶれず、役者の表情やセットに置かれた物体の質感が忠実に伝わることが大切だ。
通常のテレビでは明るいリビングでの鮮やかさが重視され、明るさをアピールするものが多いが、明るさを重視すれば黒が浮いてしまったり、逆に明部と暗部の差を出してコントラストを強調すると、黒の部分が沈んで内容が確認できなくなったりする。パナソニックのテレビでは、例えばほのかに光の差し込む暗い部屋で、壁の質感が残るなどしており、ストーリーの把握に重要な情景の設定やリアル映像への没入感が上がり、いま自分がどのようなシーンを見ているかの解像感が格段に上がるのがいい。
また、Z95Cは輝度もかなり高く、有機ELテレビが苦手とする広い面積(画面全体を使うような表現)でも明るさが落ちにくい。面積が小さくても、大きくても明るく、キラキラと輝く水面の輝度感などからダイナミックレンジの高さが分かる。また、輝きを再現しても明部の階調が残り、白飛びも少ない。パワフルで色が深く、暗部も明部も情報量の高い階調表現ができる点が印象的だった。
QD Mini-LEDパネルのW97Cも、量子ドットによる透明感や鮮やかな赤の表現が印象的だ。前年機との比較でも白い衣装の輝きを描きながらも背後のキャンバスの質感までつぶさずに再現。たいまつの眩しさやランプ内のフィラメント、暗い部屋の壁のテクスチャーまで緻密に描き出す。高画質というと、とかく派手さを押し出すメーカーが多い中、高輝度は明るく、低輝度もつぶさずに質感を残すというパナソニックの画づくりは実に見事だと感じた。
2026年のテレビ市場は100インチクラスの大画面、輝度やバックライト制御の細かさといったスペック値のアピール、あるいはRGB Mini-LEDバックライトなど新しい技術の採用など、新しさや数字の良さが強調されがちではあるが、ビエラはある種、落ち着きと実直さを感じさせつつ、玄人好みの画を提供してくれるようにも思えた。長くテレビを開発してきた日本ブランドだからできる画はじっくりと見るほど価値が伝わってくる仕上がりだったと言えるだろう。
ニュースリリース
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります



















