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「Google Cloud Next '26」現地レポート 第3回

Google Cloud Next '26レポート、冬季五輪米国チームのトレーニング支援ツールを紹介

Gemini+独自AIで高度なトリックを精密分析、“スノボ界のレジェンド”がGoogle Cloudと挑む

2026年05月08日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Google Cloudが4月に米国で開催した年次イベント「Google Cloud Next '26」では、数多くの顧客企業名が紹介された。その数は、初日に行われた1時間半の基調講演だけでもおよそ50社に及んだ。

 その一つが「Team USA」。オリンピックの米国ナショナルチームだ。基調講演のステージには、オリンピック3大会で金メダルを獲得した“スノーボード界のレジェンド”ショーン・ホワイト氏が登場し、Google Cloudとの取り組みを語った。

ショーン・ホワイト(Shaun White)氏がGoogle Cloudのステージに登場

Gemini+独自開発モデル、米国オリンピックチームのトレーニングを支援

 ホワイト氏は、冬季オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ競技において、トリノ大会(2006年)、バンクーバー大会(2010年)、平昌大会(2018年)と3大会で金メダルを獲得する偉業を成し遂げた人物だ。2022年の北京大会を最後に競技を引退し、現在はスノーボードのプロリーグを立ち上げるなど、次世代のアスリート育成に力を入れている。

 一方でGoogle Cloudは、米国におけるスキー/スノーボード競技界の統括組織、U.S. Ski & Snowboardのオフィシャルパートナーであり、AIを活用したトレーニングツールの開発に協力している。ホワイト氏は、ツールの開発段階からアドバイザーとして関わり、Google Cloudのエンジニアチームを支援してきた。

 このAIトレーニングツールは、今年2月に開催されたミラノ冬季オリンピックに向けて、米国チームの現役選手のトレーニングを支援するために開発されたものだ。その特徴は、選手がセンサーなどを装着しなくても、普通のスマートフォンで撮影した映像だけで動作を高精度に解析できる点だ。

 技術の核となるのは、GoogleのAIモデル「Gemini」とGoogle DeepMindが開発した「3Dポーズ推定モデル」だ。まずはGeminiが映像を「見て」選手を認識し、滞空している時間の映像だけを自動で切り出す。次にDeepMindの推定モデルが、2次元の映像から選手の3次元骨格を推定する。映像の角度によっては手足が映らない瞬間もあるが、その場合は関節の位置などから補完してトラッキングを行い、最後に再びGeminiが回転数/回転速度/滞空時間/タック圧縮率といった指標を算出する。

 基調講演のステージでは、ホワイト氏が2017年の大会で披露したトリック(技)である「Switch Cab Double Flip 1440」の映像を、実際に解析してみせた。

ホワイト氏の過去の競技映像をAIで解析

拡大した画像。もとの映像は鮮明ではないが、AIはホワイト氏の骨格をきちんととらえている

 「このトリックは、4回転しながら途中で2回フリップする、自分にとっては不自然な乗り方によるもの。あっという間に終わるので、これまではカメラ映像から正確に分析しようとしても無理だった」(ホワイト氏)。

 ステージでは、AIトレーニングツールを使ってこの映像をフレームごとに分解しながら、AIがどこを見ているのかを観客に説明していった。

Google Cloudのテクニカルリード、ジェイソン・デーベンポート(Jason Davenport)氏がホワイト氏とデモを披露

会場内のデモ展示ではAI解析の手順が紹介されていた

 「Cork Ribbon」と呼ばれるビジュアライゼーション機能も紹介された。縦軸/横軸の回転が同時に加わるコーク(コークスクリュー)の複雑な軌跡を、色付きのリボンで描き出す。この中で、色の変化でトリックの「転換点」を可視化する仕組みを、ホワイト氏はエンジニアチームとともに取り組んだという。

 また、空中を飛んでいる間の体勢や動きを数値化する機能については、「技が決まったときと決まらなかったとき、滞空時間がどう違うのかを比較できる。これは今まで持てなかった視点だ」と話した。

 「山に入ってトリックを習得することと、トリックの物理運動を理解することとはまったく別物だ。(このテクノロジーは)次世代のアスリートが新しいスキルを学ぶためだけでなく、ファンがスポーツをより深く理解するのにも役立つ」(ホワイト氏)

デモ展示コーナー:Googleのロボット向けモデルを採用したソリューションも

 Google Cloudでは、2028年のロサンゼルス大会でもTeam USAを支援するほか、公式クラウドパートナーとして、Google Cloud AIを使ったゲーム体験を提供することが決定している。

 Google Cloud Nextのデモ展示会場でも、Team USAのコーナーが設けられた。

Team USAのデモ展示。GeminiとDeepMindの「3Dポーズ推定モデル」を組み合わせている。米国ではオリンピック放送の解説映像でも使われた

 デモ展示会場では、そのほかにも具体的な活用シーンを模した展示が行われていた。シンガポールの小売大手FairPrice Groupが今年導入したスマートカートとオムニチャネルのソリューションは、来店客が探している商品までのナビゲーションや、カートに入れた商品情報に基づくオファー表示などの機能を提供する。これにより、顧客の購買率向上などの成果があるという。また店舗スタッフ側では、AIが商品棚の補充や配列の提案、需要予測などの機能で、店舗オペレーションを支援するデモが披露されていた。

小売業向けスマートカートソリューションのデモ。このカートはビーコン技術で現在位置を特定する

 Gemini Roboticsのデモコーナーでは、フランスのスタートアップ・Enchanted Toolsが開発した「Mirokai」が来場者を出迎えていた。ロボット向けモデルであるGemini Robotics 1.6 ERをベースに、Gemini 3.1 Flashによる多言語対応で、日本語での会話にも対応していた。

フランスのEnchanted Toolsが開発する「Mirocai」。病院やレストランの受付などですでに使われているという。身長は1.20メートル、体重25キロ。ほかのモデルと比較したうえでGeminiを選択したという

 ドイツのFranka Roboticsも、同じくGemini Roboticsベースの産業用ロボット「FR Duo」を披露していた。口頭で指示するとそれに従って部品を選んだり、照明などの環境に適合するという。

ドイツFranka Roboticsの産業用ロボット「FR Duo」。「青のトーチを取って、トレイに入れて」と口頭で指示すると、時間が少しかかったものの、その通りに操作を完了した

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