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導波路型光デバイスで世界最高の量子ノイズ圧縮に成功

誤り耐性の実用化に向け「光源の問題はほぼ解決」 NTT・東大らが光量子コンピューターに寄与する新技術

2026年03月09日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 様々な量子コンピューターの方式の中でも、大規模性・高速性に優れた“光方式”。この光量子コンピューターで誤り耐性を実用化にするには、その源となる「スクイーズド光」の量子ノイズをいかに圧縮できるかが鍵となっている。

 こうした中、NTT、東京大学、理化学研究所およびOptQCは、2026年3月5日、導波路型光デバイスでの世界最高となる「10.1dB」の量子ノイズ圧縮に成功したことを発表した。

 東京大学 大学院工学系研究科 教授であり理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 副センター長でもある古澤明氏は、12dB、そして15dBの達成まで視野に入っているとし、「誤り耐性型量子コンピューターに向けて、光源の課題はほぼクリアした」と語った。

(左から)NTT先端集積デバイス研究所 機能材料研究部 准特別研究員 柏崎貴大氏、東京大学 大学院工学系研究科 教授/理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 副センター長/OptQC 共同創業者・取締役 古澤明氏、NTT先端集積デバイス研究所 機能材料研究部 グループリーダー 上席特別研究員 梅木毅伺氏(写真提供:NTT)

光量子コンピューターの源となるスクイーズド光とその課題

 今回の技術革新では、導波路型光デバイス(光を閉じ込めて、ある方向に伝播させる構造のデバイス)に新たな「位相同期手法」を用いることで、世界最高品質のスクイーズド光の生成に成功している。

 このスクイーズド光は、連続物理量を用いる光量子技術において“量子性の源”を生成する重要な部品のひとつだ。顕微鏡に応用される量子センシングや、重力波検出を可能にする量子計測などに用いられるが、今回のターゲットは量子情報処理、つまり光量子コンピューターへの応用である。

 改めてスクイーズド光とは、光電磁場の正弦(sin)成分と余弦(cos)成分のうち片方の量子ノイズが圧縮された状態の光であり、このリソース状態が光量子コンピューターの源として用いられる。このスクイーズド光の性能においては、「帯域」と「スクイージングレベル」の2つの指標が存在する。

 帯域については、広帯域であるほど高速動作かつ大規模演算が可能になる。これまで、NTTは東京大学と共同で、非線形光学媒体として効率のよい「周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)」を用いた広帯域な量子光源モジュールを開発。2021年に、6THzでのスクイーズド光の生成に成功しており、十分な広帯域性を得ている。

 一方のスクイージングレベルは、スクイーズド光の量子ノイズをどれだけ圧縮できるかを示す指標だ。この圧縮率が高いほど低ノイズな量子操作が可能になり、さらには誤り訂正の実現につながっていく。この圧縮率については、さらなる向上が求められており、2020年の6dB、2023年の8.3dBを経て、今回の10.1dB達成となった。

スクイーズド光に対する要求

 スクイージングレベル向上の壁となっていた要素が、「位相誤差」と「光損失」である。スクイーズド光は、位相同期の誤差と光損失によるノイズの混入によって圧縮率が低下し、それが量子性の劣化に直結する。今回、新しい位相同期手法を導入することで、この双方を解決した。

スクイーズド光測定における課題

広帯域で最高の圧縮率を達成 誤り耐性の量子計算は“射程内”に

 スクイーズド光の測定においては、測定時に用いる「基準光」と量子光のもととなる「励起光」の位相を同期させる必要がある。従来の手法では、これらの光から量子光源となる非線形媒質(PPLN)内でスクイーズド光を生成、そこから出射されるスクイーズド光の一部を分岐させて「同期用の信号」を得ていた。

 この時、位相同期の精度を高めるために同期用信号の分岐比を大きくすると、その分スクイーズド光の光損失が大きくなってしまう。従来手法は、こうした位相誤差と光損失がトレードオフとなる課題を抱えていた。

 今回、この課題を解決すべく、新たに位相検出用の非線形媒質を用意した。そして、非線形媒質の手前で基準光と励起光を分岐させ、量子光源と位相検出の非線形媒質に入射する。こうしてスクイーズド光の分岐をなくすことで、量子光の損失がなくなり、かつ非線形媒質で同期用の信号も強くできるため、上記のトレードオフが解消される。

新しい位相同期手法

 この新しい手法を取り入れることで、10.1dBプラスマイナス0.2dBの量子ノイズ圧縮に成功している。これは、古典的な光の持つ量子ノイズを90%以上圧縮するという成果を意味する。

実験結果

 今回の成果は、広帯域性な導波路型光デバイスでの世界最高のスクイージングレベルの達成となり、今後も向上が期待される。

 実際に、東京大学の古澤氏は、「12dB、さらには15dBまでは、近い将来達成できる。ざっくりと言うと、15dBのスクイージングが実現できれば、公開鍵暗号が破れるレベル。誤り耐性の量子計算は射程内に入っている」と述べた。

 そして本技術は、国家プロジェクトである「ムーンショットプログラム」の目標6において古澤氏が開発を進める、「誤り耐性型の全光学式光量子コンピューター」にも寄与していく予定だ。

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