シスコジャパンが2026年度の3つの注力領域を説明
13億のエージェントが働く未来に向け 「つなぐCisco」と「理解するSplunk」の統合戦略
2026年02月24日 07時00分更新
13億のAIエージェントが自律的に働く時代を見据え、Cisco×Splunkが「見えないAI」を可視化・制御するためのプラットフォーム統合の方針を打ち出した。
シスコシステムズ(Cisco)は、2026年2月18日、2026年度の事業戦略説明会を開催。同社の社長執行役員である濱田義之氏と、1月1日付でSplunk Services Japanの社長執行役員に就任した内山純一郎氏が登壇し、AI時代における3つの注力領域と共に、「つなぐ力」を持つCiscoと「理解する力」を持つSplunkの統合がもたらす価値について説明した。
13億のAIエージェントが働く未来での“Cisco×Splunk”の価値
濱田氏は、まず事業の好調さを報告した。2024年1月に同氏が社長に就任して以来、ネットワーク事業は8四半期連続で前年対比増を記録。セキュリティ事業も7四半期連続で成長している。「AI時代に向けてネットワークインフラを抜本的に変えたいという意識と、セキュリティ対策待ったなしという認識の高まりが表れている」と濱田氏。
こうした顧客の現状も受け、Ciscoは、「AI時代において組織をつなぎ、保護する」というミッションを掲げる。そして、このミッションに対応する注力領域として、「AIに対応したデータセンター」「未来を見据えたワークプレイス」「デジタルレジリエンス」の3つを挙げた。
このうち、デジタルレジリエンスについては、2026年からSplunk Japanを率いる内山氏が詳細を語った。同氏は、Google Cloudでセキュリティ事業部門責任者およびCybersecurity CoE責任者としてMandiantとの統合プロジェクトを主導するなど、サイバーセキュリティの最前線で活躍してきた人物だ。
内山氏は冒頭、「2028年までに13億のAIエージェントがネットワーク上で自律的に業務をこなすようになる」という予想を紹介した。そして、それらのAIエージェントは、394ゼタバイトという天文学的な規模のデータを生成し、データの複雑性も増していく。特に、「見えないAI」の増加が経営のリスクになり得ると、可視化と制御の重要性を強調した。
AIが生み出すであろうこうしたカオスに対して、内山氏が提示したのが「CiscoとSplunkの統合」だ。同氏は両社について、「Ciscoは世界最大級のネットワーク可視性を持つ。社会の隅々まで張り巡らされた“神経”であり、つなぐ力。一方のSplunkは、膨大なデータから文脈を理解する“頭脳”であり理解する力」と例える。この統合により、AIエージェントの暴走や侵害を検知・防御する「AgenticOps」を日本の社会インフラとして実装していくという。
Agentic Opsとは、AIエージェント時代に対応する新しいネットワーク運用モデルだ。具体的には、障害の根本原因を特定・修復して対応力を高めること、常時ネットワークを最適な状態に保つこと、そしてあらゆるネットワークを安全にすること―― この3つを自律的に実行する。
ただし、すべてをAIに委ねるわけではない。「ヒューマンインザループ」のアプローチを重視し、人間が監督しながら、人のチェックよりもミスなく安全に運用できる仕組みを目指す。その例のひとつが、両社による「統合オブザーバビリティ」である。基幹システムの遅延が発生した際、従来は各担当部門が”たらい回し”になりがちだったが、APM(アプリケーションパフォーマンス管理)のAppDynamicsと統合された新生Splunkが、全トランザクションを一本の線でつなげ、原因が攻撃かバグかを瞬時に判別する。
加えて内山氏は、両社の統合で生まれた、AIエージェント時代の課題を解決する3つの最新技術について紹介した。
ひとつ目が「Cisco Data Fabric」だ。コスト最適化とデータ主権に対応する新たなデータアーキテクチャであり、フェデレーテッドサーチ技術によりAmazon S3やSnowflakeといった外部ストレージのデータをSplunkから横断的に検索できる。データを物理的に移動させることなく分析できるため、機密データを扱う日本企業のガバナンス要件を満たすことが可能だ。
2つ目が人材不足への解となる、セキュリティ特化型のAIモデル「Foundation-sec-8B-Reasoning」だ。アラートの要約や対応策の提示によって、経験の浅いエンジニアでもベテラン並みの対応が可能になる。開発チームには日本のエンジニアも参画しており、日本の現場での実用性も考慮されているという。
3つ目が、AIエージェントを監視・制御する「AI Agent Monitoring」であり、2月25日に一般提供を開始する。同ツールでAIエージェントの挙動を可視化し、「Cisco AI Defense」がプロンプトインジェクションや不正操作といった危険な挙動をリアルタイムで検知・ブロックする。さらに、ネットワーク側では「AI-aware SASE」がAIの通信トラフィックを最適化。まさに、「Splunkが目となり監視して、Ciscoが手となり防御する」という。
Ciscoの“サイバーセキュリティCoE”は第2フェーズへ
なお、内山氏はSplunk Japanを率いるだけでなく、CiscoのサイバーセキュリティCoEのセンター長にも就任している。このCoEは2025年に始動しており、内山氏を迎えることで第2フェーズに入るという。これまでのサイバー脅威への対処に加え、「セキュリティ for AI」「AI for セキュリティ」へと活動領域を広げる。これは、AIそのものを守り、AIを使ってセキュリティを強化するという両面のアプローチだ。
加えて内山氏は、「キーワードは、単なる技術の検証から日本社会レベルでの実装」と述べ、CoEを基点としたパートナーエコシステムの再構築について強調した。「日本市場でSplunkを使いこなす企業はまだまだ多くはない」と認めた上で、「だからこそ、ツールを渡して終わりにはしない」と続ける。CoEではパートナーに対し、CiscoとSplunkを組み合わせたマネージドサービスを提供できるよう徹底的に技術支援を展開するという。
また、情報通信研究機構(NICT)との連携も強化し、同組織の脅威インテリジェンスのハブとしての機能も強化していく。Ciscoのネットワーク知識とSplunkのデータ分析スキルを兼ね備えた「ハイブリッドセキュリティ人材」の育成プログラムも本格始動させる。














