遠藤諭のプログラミング+日記 第206回
SpringX 超学校で「AIといっしょ!プログラミング教室」をやります
“宿題でAIを使いはじめる前”に、“AI的ゾンビ”(a-zombie)にならないための方法
2026年02月24日 09時00分更新
nanoバナナが頑固なわけではない
nanoバナナは、イラストをかなり上手に生成するAIである。しかし、思い通りのイラストができあがらないことも多い。そのたびに修正を依頼するのだが、気心の知れた長いつきあいのイラストレーターのようにはうまくいかない。ときには、少し頓智めいたやりとりになることもある。
そこで、最近、私はnanoバナナに自分の意図したイラストを作らせるまで、何度も試行錯誤をしてあれこれプロンプトを工夫する「説得ゲーム」を楽しんでいる。エネルギーの無駄に思われるかもしれないが、これは一種の実験でもある。
先日題材にしていたのが、私の生活のようすをまとめた6点のイラストからなる図である。ある日、予定を忘れてオンライン会議をすっぽかしてしまったときに、お詫びの気持ちで作ったイラストがもとになっている。もとの図は、私のアイコンをアップロードしたものである。そのときのやりとりがこちらだ。
なかなかいい感じなのだが、いちばん下の行はまあなくていいやと思った(ポストするときに言葉で補足すればいいからだ)。そこでプロンプトを投下して修正をしてもらうのだが、こうなった。
下の1行はきちんと削除され、リモート会議の図も追加された。しかし、なぜかリモート会議の図とカレーを食べている図が四角で囲まれてしまい、その2つに対して1つだけ誤植入りのキャプションが付いている。さらによく見ると、カレーを食べている図の中には、壁に謎の四角いポスターのようなものが貼られている。再修正するしかない。
とりあえず指示通り、リモート会議の図には「リモートで会議」、カレーを食べている図には「カレー食べてる」というキャプションをつけることができた。これは大きな一歩である。nanoバナナがだいぶ賢いことは分かるので、次のようなプロンプトを与える。
「何も変わっていないじゃないか!」と思わず声を出しそうになった。しかし、よく見てほしい。実はリモート会議の図とカレーの図は、わずかに距離が離れている。つまり、「上の四つと同じ感じに配置してほしい」というニュアンスが、多少は伝わったらしい。ということで、思わず次のようにやったのだった。
「やったぁ」とつい口に出してしまった。ちゃんと「カレー食べてる」の外枠がとれたのではないか。「もうひといき!」というほとんど感覚的な応援のようなプロンプトを与えただけなのに。nanoバナナ、というよりも生成AIにはこんな応援プロンプトが効くというわけだ。
これは、あまり世の中のChatGPTや生成AIの使いかた本には出てこないことではなかろうか? などと思ったところで、私は、大塚あみさんのプログラミングのようすを見せてもらったときに、彼女がただ「動いて!」と声で指示していたのを思い出した。下手に新たな指示を出して混乱させないほうがよいということか(人間もそうだが)。
さすが、ベストセラーAI本の著者である。先日もある案件で先方のエンジニアが「生成AIにネガティブな感じで答えさせるのは困難ですよね」と言われたことがあった。しかし、そのレベルのことは彼女の単行本では、いちばん初歩的なレベルで紹介されるプロンプトであっさり解決できることである。まさに、AIリテラシーというべきか。
というわけで、今度は意識的に次のようにやってみる。本当にもう応援モードである。
「リモートで会議」のほうの外枠の線が消えて、2つ前のプロンプトのとおり“上の四つと同じ感じ”であり、3つ前のプロンプトの“外枠なしで”というのが達成できたのではないか!
これで絵としては、ほぼ完成したといってよいので、次のようにやってみた。
「文字の色、全体のバランス」と単語を並べただけ。ぞんざいな言い方に聞こえるかもしれないが、これも、大塚あみさんに2年前にインタビューさせてもらったときに教えてもらったことだ。まだ大学在学中の彼女は「相手はAIなので余計な情報は加えないほうがよい(相手が番号付きで3つの選択肢をあげてきたら「3」とだけ答えるのがいい」と言い切ったのだ。私は、ただ「はい」としか言えなかった。
おかげさまで、これですべての文字が同じ濃さになって読みやすくなった。しかし、右下のカレー食べてる絵はもう少し右にあってもよいだろう。というので、次のように指示した。
私は、一瞬「?」となった。nanoバナナではよくあることなのだが、どこが変わったかお気づきだろうか? ほとんど、ドンキホーテで売っている間違い探し本のような冗談で、よ~く見てみるとカレーを食べている私の口が少し開いている! ほかは1ミリも違っていないように見える。冗談ですかね? そこで、ここは大塚あみ式でゲキを飛ばすしかないと思って、次のようにやってみた。
な、な、な。たしかに、いささか高圧的な言い方だったかもしれない。しかし、これは「天邪鬼はやめなさい!」と言いたくなるような結果である。見てのとおり、右下の「カレー食べてる」の部分が忽然と消えてしまっている。一応、プロ会員の登録をしてGeminiを使っている私である。しかし、あまりに連続的に細かい指示を与えてしまったのがいけなかったのか? 少し反省して、次のように聞いてみた結果をご覧いただきたい。
イラストの中の5人の私が全員、怒りをあらわにしてしまった。いや、よく見ると昼寝している人間は怒れないのでそのままという整合性もとれているのだが。私は、やさしく「お気に障りましたか」のつもりで聞いただけなのに・・・。
これはあくまで、nanoバナナに言うことを聞かせるというゲームである(すいませんお詫びのつもりの画像を作るのをゲームにしてしまいました)。
正しくnanoバナナと付き合う方法はもちろんこういった調子ではない。画像の修正なら「Inpainting」といって、修正したい部分を塗りつぶしてそこに対して修正をかけてやる方法がある。ちなみに、経済学者の野口悠紀雄さんが、文章の問題部分を塗りつぶすように****と書いておいて埋めさせるというInpaintingの文字版のようなテクニックを紹介されていた。こちらが手を動かすことが生成AIを上手に使う基本である。
たぶん、今回のようなケースなら、画像ソフトを使って切り貼りしたものを「キレイに仕上げて」とやれば直るような問題である。文字化けも、いちど画像認識させて文字を理解させるなどテクニックはあるが、「no text」とか「blank speech bubbles」などと指示して文字を消してあとで書き込むのが早い(いまのところだが)。
こんなことは、だいぶ知れ渡っていることなのだが、我々はつい「××をやって」と一言で指示してしまいがちである。それで答えが出るのは便利なのだが、それはどんどん「AIから答えをもらうだけ」のまるで生きている実感のない人間になるのではないかと心配になる。一見まともな人間として生活しているのに、感情も意識もない「哲学的ゾンビ」(p-zombie)という概念があるそうなのだが、いわば「AI的ゾンビ」(a-zombie)になりそうだ。
それでは、我々は、どのようにAIと付き合えばいいのか? この後紹介するプログラミング教室のお話に繋がる。
AIでプログラム作る教室をやらせてもらうことにした理由
SpringX 超学校は、大阪・グランフロント大阪にある、NPO法人ナレッジキャピタルが運営する新しい形の学びの場である。そのSpringX 超学校で「AIといっしょ!プログラミング教室 ~AIはどうして質問に答えられるのかを学ぼう~」という講座をやらせてもらうことになった。小学校5年生から中学校3年生までを対象としたプログラミングの講座だ。
私から提案させてもらったもので、お話をはじめたのはかれこれ6カ月ほども前、実は、いくつかの子供向けのAIプログラミング講座がすでに始まっている。子どもがAIを使うのはまだ心配だと感じている人も多いだろう。しかし、始めているのは私も信頼する子供向けのプログラミングに取り組んでいる人たちである。
その理由は、AIとの付き合い方を適切につかんだ子どもは、いままでの何倍も成長できるというのが分かっているからだと思う。そもそも、コンピューターやプログラミングというものは、同じような性質を持ったものなのである。どの子もというわけにはいかないが、コンピューターを使いまくった子供たちがその後に世界を変えてきたと言っても大げさではない(米国にはそんな子供たちの写真集もあった)。
などと偉そうに言ってみたのだが、子ども向けのプログラミング教室はやってきた(ミニドローン=Parrot製をプログラムで飛ばすなんてやったこともある)とはいえ、AIによるプログラミングは初めてである。
これだけは持って帰ってほしいと思っていることが2つあって、1つは、「AIが、どういうしくみで質問に答えられるのか?」を、なんとなくでいいので掴んでほしい。この小5~中3に生成AIのしくみを説明するための教材を作るのがとても大変だったのだが。もう1つは、「AIは、答えをもらうものではなく、一緒にモノを作る先生であり協力者だ」というのを理解してほしいということだ。
ということで、以下プログラミング講座の概要である。なお、開催日の3月21日(土)の前日は、同じグランフロント大阪で「第13回 ナレッジイノベーションアワード最終審査会」が開催される。今年は、中学生・高校生が描いたイノベーションが粒ぞろいの内容になっているので、とくに関西方面の方は足をお運びいただけると幸いだ。
開催概要
イベント名:SpringX 超学校 AIといっしょ!プログラミング教室 ~AIはどうして質問に答えられるのかを学ぼう~
日時:2026年3月21日(土)10:00〜12:00
会場:グランフロント大阪 タワーC 8階 ナレッジキャピタル カンファレンスルーム C05
対象:小学5年〜中学3年(AI・プログラミング未経験者歓迎)
定員:20名(事前申込制)
参加費:無料
締切:2026年3月18日(水)17:00
申し込み:https://kc-i.jp/activity/chogakko/aiprogram2026/detail20260321.php
備考:参加にはSpringXメンバー登録が必要
参考
SpringX 超学校 AIといっしょ!プログラミング教室 ~AIはどうして質問に答えられるのかを学ぼう~:https://kc-i.jp/activity/chogakko/aiprogram2026/detail20260321.php
第13回 ナレッジイノベーションアワード:https://kc-i.jp/activity/award/innovation/2025/
遠藤諭(えんどうさとし)
ZEN大学 客員教授。コンテンツ産業史アーカイブ研究センター研究員。MITテクノロジーレビュー日本版 アドバイザー。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より株式会社角川アスキー総合研究所主席研究員。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。
X:@hortense667
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