ソフトウェア協会主催の「Tech Challenge Party」基調講演レポート
OpenAI長崎氏・サイボウズ青野氏・さくら田中氏による“AI時代のエンジニア”へのエール 「技術の変化を楽しんで」
2026年02月16日 07時00分更新
“パッケージが妥協になる”時代を迎え、生成AIは“OS化”していく
田中氏:続いては、生成AIでIT業界がどう変わり、プロダクトがどう進化してきたのかです。
青野氏:田中さんがSAJのイベントで話されていた内容を引用しますが、これまで日本のソフトウェア業界は受託開発に寄りがちで、アメリカはパッケージで上手く効率化しているという議論がありました。
ところが生成AI、もしくはノーコードツールによって「自社にあったアプリをものすごく速く作る」という環境が整ってきました。kintoneを始めたのも、こうした「パッケージに頼らなくてもよい」未来に懸けていたところがあります。ただ、さきほど触れたように、シュッシュっとすらしない時代が来ていますね。
田中氏:日本のSIのやり方で、10人で1年かけたら120人月ですけど、2週間で作れたら0.5人月で240分の1にコストが抑えられます。
青野氏:「パッケージより安いじゃん」ってなりますね。
長崎氏:間違いなく、開発コストは下がり、スピードも加速していきます。ただ、今だけを見て判断すると見誤る可能性もあります。バイブコーディングでこの1年の環境が劇的に変わったように、AIモデルも飛躍的に性能が向上して、1年後には想像できない課題が解決できるかもしれない。後は、チャットアシスタントがゲートウェイになって、OSのように使われるようになっていくと思いますね。
田中氏:それでいうとRubyやPythonなどの高級言語は、C言語やアセンブラよりスペックを食いますが、生産性が高いから使われています。仮想化もオーバーヘッドがありますが同様です。チャットアシスタントも、高級言語や仮想化のようにOSになっていくのを示唆しているかもしれないです。
AI時代のエンジニアに求められる“問う力”と“楽しむ力”
田中氏:最後のテーマは、生成AI時代のエンジニア像です。AIでどんな挑戦ができるようになるかという話ですが、今はコストダウンのメリットが先行しがちです。
長崎氏:まさに、みなさん生産性の観点から入ります。今の課題は、「AIの進化に使い手側が追いついていない」ことで、例えばAIエージェントを作るのもまだまだ難易度が高い。そのギャップを埋めるためにOpenAIでもリソースを費やしていますが、ユーザー事例が出てくれば汎用化されると考えています。やはり、キーとなるのはAIエージェントです。エージェントがつながる仕組みが整えば、エンジニアが解決できる領域が一気に広がります。
青野氏:アプリケーションがどんどん作れる時代になると、エンジニアは乱立するアプリをセキュアにマネジメントする、つまりインフラに力を割くようになると思います。「乱立するExcelのマクロを誰がメンテナンスするんですか」といった状況がまた起きないよう、技術の面でも組織の面でもガバナンスづくりにチャレンジしなければならないです。
個人的に興味があるのが、田中さんも手を出し始めている“フィジカルAI”ですね。いかにAIの技術を使って、圧倒的な人手不足を解消できるのか。潰れていく地方の中小企業は沢山あって、人手不足で困っていない企業を探す方が難しいほど。エンジニアの皆さんには、知的AIとフィジカルAIを組み合わせて、ぜひ活躍して欲しいです。
田中氏:長崎さんには、アメリカと日本の違いについても聞いてみたいです。アメリカだとエンジニアは新卒で入社できないという話で、特にOpenAIは社員が少なく狭き門かと思います。どんなエンジニアを求めているのですか。
長崎氏:生成AIの時代に人が人であるための価値がいくつかあって、そのひとつがクリティカルシンキングです。人の話をただ聞くだけではなく、「これって本当なのか?」という問いを立てられるかがものすごく重要。チャットアシスタントのようなテクノロジーで、エンドレスに思考を深くできます。自己満足にならず顧客にとっての価値を追い求めていけば、適切なアウトプットができて失敗のコストも減らせます。トライする力、勇気を持って一歩踏み出す力が必要ですね。
田中氏:さきほども出ましたが、問いを立てられるかが重要になりますね。よくノンアンノウンと言いますけど、課題は知っていて解決方法がわからないものはAIが解決してくれますが、アンノウンアンノウンで何が課題かもわからないと手を付けようがないです。
長崎氏:そして、最も重要なのは楽しむこと。せっかくできることが広がるのだから、ビルダーとして楽しむ気持ちが大事です。
田中氏:問題解決の手法には、課題を起点にそのギャップを埋めていくギャップアプローチと、どうしたいのか、どうありたいのかから逆算するポジティブアプローチがあります。楽しみながら、隙間を埋めるより、埋まっているものを広げるという考え方も必要ですね。
技術をよく知るエンジニアこそ変化に対してポジティブに
田中氏:最後に一言ずついただいてもよいでしょうか。
青野氏:エンジニアの皆さん、もしかしたら自分の仕事の環境が大きく変化してしまうと不安に駆られているかもしれませんが、僕も同じですよ。
田中氏:経営者こそ要らなくなる説もあります(笑)オーバーヘッドですし。
青野氏:AIに置き換えられちゃうかもしれませんね。でも、テクノロジーがわかるわれわれだからこそ、この技術の変化を楽しみながら、21世紀の後半に向けて、楽しく仕事をしていきたいですね。
長崎氏:こうした転換点を迎える時代に生きられるのはものすごく幸せだと思いますし、この変化をポジティブに捉えたほうが未来は明るくなります。生成AIで社会課題も身の回りの課題も解決して、人しか持てない創造性を200%、300%発揮することでもっと明るい未来が築けます。みなさん自信を持って前に進み、貪欲に生成AIというテクノロジーを取り入れて欲しいですね。













