モバイルバッテリーのトラブルが報道される中
リン酸鉄リチウムイオン電池の製品に注目
ここ数年、鉄道や航空機、さらにはバックパックの中でのモバイルバッテリーの膨張・発火・爆発といった事故のニュースを目にする機会が増えた。そのリスクに備えるため、耐火ポーチや難燃スリーブなどの安全グッズも市場に登場しているが、根本的な解決策とは言いがたい。
一方で、従来の一般的なリチウムイオン電池が抱える発火リスクを低減する“安全志向の新技術”も徐々に普及し始めている。代表的なのがリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)や半固体電池だ。
これらはエネルギー密度こそやや控えめだが、熱への安定性が高く、長寿命である点が魅力である。安全性と実用性のバランスを重視した次世代バッテリーとして、非常用電源やポータブル電源分野で注目を集めている。
今回取り上げるのは、そんな「安全サイド」の代表格であるリン酸鉄系モバイルバッテリー。Just MyShopのメールニュースで見つけて思わず衝動買いした、HIDISC「リン酸鉄系リチウムイオン電池20,000mAhモバイルバッテリー」である。
●主なスペック
セル容量:20000mAh(3.2V/約64Wh)
定格容量:10000mAh(5V出力時)
出力:USB Type-A ×2
入力:USB Type-C ×1(充電専用)
実測重量:約384g
20000mAhクラスの容量を持つだけあって重量はなかなかのもの。最近のスマホ2台分に相当する。内容物は本体に加え、Type-A→Type-Cケーブル、簡単な取扱説明書のみという実にシンプルな構成。販売はJust MyShopだが、製造はおなじみの磁気研究所である。
モバイルバッテリー自体はUSB Type-C経由で充電するのに
出力はUSB Type-A×2のみで5V/2Aまで
ここで筆者が思わず首をかしげたポイントが1つある。それは端子構成だ。入力はType-Cポートにも関わらず、出力はまさかのType-Aが2ポートのみ。Type-Cは「入力専用」という、令和の時代とは思えない割り切った設計である。
容量表記にも独特のクセがある。内部セルは3.2V基準で20000mAhだが、実利用では5Vに昇圧するため、法律で義務付けられた定格容量は10000mAh(5V)とかなり控えめで良心的な表示となっており、好印象だ。
一方、パッケージ表面に異様に大きく記載された「20000mAh」という目立つメタリックフォントのセル容量や「超大容量」の文字とは大きなミスマッチ感がある。
さて、以下は実力検証である。まずはサブスマホの「Nothing Phone (3a)」(バッテリー容量は5000mAh)でテスト。10%から90%まで充電したところ、所要時間は114分。およそ80%、電力量にして約15Wh相当が充電された計算だ。5V換算で約3000mAh前後の消費となり、定格容量10000mAhから考えるとおおむね半分近くの残量が残っているという現実的な結果である。
続いて最近愛用している超重量級スマホ「BlackView BV7300」(15000mAh)でテストしてみた。残量20%から充電を開始し、94%まで到達したところでバッテリーは力尽きた。8時間19分かけて74%分、約11100mAh相当を供給した計算となる。定格容量10000mAhという表記を考えれば、実に妥当で優秀な結果だと言える。
製品としては極めて真面目でコストパフォーマンスも高い。しかしパッケージの「20000mAh」「超大容量」といった大きく目立つ表記はやや誇張気味だ。また今や5V/2Aは「急速充電」とは言いがたく、本来の堅実設計が宣伝文句に埋もれている印象だ。開発部門とマーケティング部門の乖離を感じてしまった。

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