AIエージェントに選択肢 「AWS re:Invent 2025」レポート 第11回
好奇心はエンジニアが社会課題を解決する原動力に
ダ・ヴィンチに学べ AI時代に求められる「ルネサンス・デベロッパー」という生き方
2026年01月14日 07時00分更新
他の人たちを助けるために行動してきたAWS HEROたち
開発者はつねに進歩を推進してきた。そして、「今はAIを可能性から有用、安全、かつスケーラブルなものへと調整しているのがみなさんです。そしてあなたのような開発者は過去には不可欠だった。今までも不可欠で、将来も不可欠だろう」とボーガス氏は語気を強める。
国連は2050年までに人口はさらに20億人増えるとしている。「どうやって食べていけばいい? 経済的な将来を確保する? どうやれば医療を提供できる? 世界のもっとも大きな問題のいくつかを解決するために役立つ技術を開発するのは、私たちの責任であり、技術者であるわれわれにはその能力がある」とボーガス氏は聴衆に語りかける。
「自分の部屋の片隅でなにかを作るだけではなく、他の人を助けるために多くの時間を費やした人もいます」と紹介されたのが、58カ国で256人認定されている「AWS HERO」だ。ボーガス氏から紹介された会場のAWS HEROたちは、聴衆から大きな拍手を浴びた。その1人でNow Go Build賞を得たフィリピンのラファエル・クインサンバン氏に対して、ボーガス氏は「まさにルネッサンスデベロッパーを体現している。単にコードを書くだけではなく、コミュニティを構築し、2013年から他の人たちを指導し、共同リーダーを務めている」(ボーガス氏)。
ボーガス氏は、ウォルト・ホイットマンの「私たちはなにを知っているかではなく、何を学びたいかによって決まる(We are not what we know, but what we are wiling to learn.」という言葉を引用し、好奇心こそルネッサンスデベロッパーの最初の資質とまとめた。
自然界の生態系から学ぶ「システムで考えること」
ルネッサンスデベロッパーの2つ目の資質は、「システムで考えること(THINKS IN SYSTEMS)」だ。ここでのシステムとは、コンピューターシステムというより、大規模なメカニズムを指す。
ボーガス氏は1970年代、複雑なシステムをどのように動作するかを研究し始めたドネラ・メドウズという生物学者を紹介する。「彼女はコンピューターサイエンティストではなかったが、彼女の洞察力はソフトウェアの世界を完璧に洞察している」(ボーガス氏)
メドウズはシステムを「時間の経過とともに独自の行動パターンを生み出すように相互接続されたモノ、人、細胞などの集合体」と定義しているという。「それは驚くべきだった。なぜなら、私たちのシステムには独自の生命があるということを、すべてのエンジニアが最終的に学ぶこととして捉えていたからだ」(ボーガス氏)。
その1つとして挙げたのは、20世紀初頭にアメリカのイエローストーン公園から排除されたオオカミの例だ。捕食動物が減れば、ヘラジカの数が増えると考えられたからだ。しかし、実際には逆のことが起こった。谷では過放牧が起こり、木々は消え、川は浸食され始めたという。この現象は栄養カスケードと呼ばれる。
2010年代、再びオオカミを公園に戻すと、公園はゆっくり回復していく。「植物が戻り、ビーバーが戻り、川の流れすら変わった。オオカミは川を動かしたのではなく、システム全体の動作を変えたのです。捕食者と被捕食者という単一のフィードバックループがシステム全体のバランスを再形成した。構造が変化し、行動が変わる。フィードバックが変わると、結果も変わる。これがシステム思考と呼ばれるものだ」とボーガス氏は指摘する。
孤立した部分ではなく、完全なシステムで考えること
重要なのは「孤立した部分だけではなく、完全なシステムで考えること」だという。俯瞰した目線を持つということであろう。
コンピューターシステムで考えると、すべてのサービス、すべてのAPI、すべてのキューが、より大きなシステムの一部になる。そのため、一部分を単独で変更したり、ポリシーを変更したり、書き換えると、負荷に影響が出てしまう。キャッシュを追加すると、トラフィックの負荷が変更され、トラフィックのフローは変更され、チームの所有権が移行され、配信のベースが変更される。それぞれの変化によって新しいパターンが生まれるが、その中には安定したものもあれば、そうでないものもある。
すべての動的システムは、フィードバックループによって形勢されている。ポジティブループと言われる強化ループは変化を増幅し、バランスループと言われる負のループは、変化を相殺することで、システムを均衡状態に戻す。「メドウズは、このようなパターンがわかると、適切に配置された小さな変更がシステム全体の動作を変える可能性がある場所が見えてくると考えました」(ボーガス氏)。
メドウズはこれを「レバレッジポイント:システムに介入する場所」という論文にまとめた。私たちのようなコンピューターサイエンスに関わる人が日常的に耳にする言葉に、正のフィードバックループと負のフィードバックループがある。この論文は読むべきだ。これを宿題と呼ぶ」とボーガス氏は、QRコードを示した。
2つ目の資質である「システムで考える」。レジリエンスの高いシステムを構築するためには、システムの一部でなく、全体像(Big Pictures)を理解する必要があるというのはボーガス氏の教えだ。(続く)

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