USB規格を巡る環境は、ここ数年で一気に複雑化した。秋葉原の店頭やAmazon、Temu、AliExpressといったECサイトを眺めると、「USB 3.2」「PD」「急速充電」「240W」「20Gbps」「eMarker」といった言葉が並び、ケーブル一本を選ぶだけでも判断が難しい。
スマートフォンをはじめとする多くのデバイスはUSB Type-Cへと統一されたが、皮肉なことにケーブルは付属しないケースが増えた。先進的な機能を備えたスマートフォンやガジェットほど、ユーザー自身が用途に合ったケーブルを選ばなければならない状況にある。
しかも購入前にケーブルをテストする手段はほぼ存在せず、パッケージの表記や販売者の説明を信じるしかない。一方で、手に入れたケーブルが「本当に何者なのか」を知る手段は、近年登場しているUSBケーブルチェッカーによってかなり現実的になってきた。
今回筆者が衝動買いしたのは、その中でも「結線」に特化した「Type-Cケーブル結線チェッカー(Mechanic TC-24)」である。派手な数値測定はできないが、ケーブルの素性を見抜く力は想像以上に強力だ。
割り切りが潔い「結線専用チェッカー」
超文系の筆者は、趣味と実用の狭間でこれまでいくつかのUSBチェッカーを使ってきた。本来なら一台ですべてを測定できる万能機が理想なのだろうが、現実には用途別にチェッカーが存在し、結果として手元に機材が増えていく。
重要なのは「このチェッカーで何ができて、何ができないか」を理解することだ。Mechanic TC-24は、その点が非常に明快である。これは速度や電力を測る機器ではなく、あくまで“結線状態”を可視化するチェッカーだからだ。
Type-C端子は24ピンを持ち、裏表どちら向きに挿しても動作する。そのため、実際のケーブル内部では信号線の省略や簡略化が起きやすい。TC-24はその24ピンそれぞれが接続されているかどうかをLEDで示してくれる。別電源は不要で、背面のプレートを外せばCR2032電池を簡単に交換できる点も好印象だ。
6本のケーブルを“素性検査”してみる
今回は性格の異なる6本のUSB Type-Cケーブルを用意し、TC-24で結線をチェックした。
1. 自称240W対応・グリーンのシリコンケーブル(Temu)
見た目は太く、いかにも高出力対応をうたっているが、テスト結果を見ると高速通信用のTX/RXラインが省略されている。充電用途には使えるが、高速データ通信は想定していない「電力寄り」ケーブルであることがわかる。
2. Club3D製・赤い高品質ケーブル
TX/RX、CC、VBUS、GNDが綺麗に揃い、結線の完成度は非常に高い。高速通信と高出力給電を両立できる、教科書的な優等生だ。
3. 急チャー240W/20Gbps対応ショートケーブル
短さを活かした設計で、必要な信号線はほぼ網羅。eMarkerの有無はTC-24では判別できないが、結線から見て高性能ケーブルだとわかる。
4. Amazon Standard Productsケーブル
意外だったのがこの一本で、LEDの点灯数が多く、結線の省略が少ない。派手さはないが、実直に作られた想像以上に優秀な量産品という印象を受ける。
5. 数珠型・緊急用充電ケーブル(Temu)
データラインは最低限、もしくは省略され、完全に非常用割り切り設計であることが一目で分かる。アクセサリー的で用途は極めて限定的だ。
6. ダイソー100W対応eMarker搭載ケーブル
結線自体はシンプルだが、必要なラインは押さえられている。TC-24ではeMarkerの存在までは確認できないが、「何を省いて何を残しているか」はわかる。

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