欧州委員会が12月16日、自動車産業に関する新たな取り組みを発表。
この中で、2035年を見据えた自動車のCO2排出規制について、従来“事実上のガソリン車販売禁止”と理解されてきた枠組みを、“条件付きで内燃機関車を認める”方針へと改めたことが明らかになった。
欧州委員会は、温室効果ガス排出を削減するという長期目標や電動化への移行を推し進める方向性自体は維持しつつも、その達成手段については大幅に柔軟性を持たせ、EVへの一本化を前提とした従来の制度から、より現実的な制度設計へと舵を切っている。
具体的には、乗用車/バン/大型車両に対するCO2排出基準の見直しや、ゼロエミッション車や低排出車の導入促進、完全にEU域内で構築されるバッテリーバリューチェーンの開発支援といった方針が含まれる。特にバッテリーバリューチェーンの構築に向けては18億ユーロを投入し、うち15億ユーロは、欧州のバッテリーメーカーへ無利子で融資する計画だ。
「禁止」から「条件付き容認」へ
欧州委員会は、今回の変更を「規制の撤回」や「目標の後退」とは位置づけていない。あくまで、脱炭素という目標を維持したままでの、“目標への到達ルートの再設計”であると説明する。
今回の制度見直しで最も注目されるのは、2035年以降の新車に求められる要件が「排出ゼロ」ではなく、「2021年比で90%の排出削減」へと再定義された点だ。
残る10%の排出については、e-fuel(合成燃料)やバイオ燃料の使用による排出削減効果、EU域内で生産された低炭素鋼材の利用などを排出削減効果として算定し、相殺できる仕組みが導入される。
2035年以降も「内燃機関が役割を果たす」と明記
合わせて欧州委員会は文書の中で、プラグインハイブリッド(PHEV)、レンジエクステンダー、マイルドハイブリッド、そして内燃機関車(ガソリン車)が、2035年以降も「役割を果たすことが許可される」と明確に言及している。
これは、これまで広く共有されていた「2035年以降は内燃機関車の新車販売が事実上不可能になる」という理解を改めるものだ。
今回の見直しによって、ガソリン車にもEVと共存しながら2035年以降の自動車市場で一定の存在感を維持できる可能性が開かれたといえる。









