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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第136回

画像生成AIの歴史を変えたNano Banana “一貫性の壁”が突破された2025年を振り返る

2025年12月15日 07時00分更新

文● 新清士

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アニメ・ゲーム制作の“少人数化”がさらに進む

 画像・動画AIの大きな潮流としては、本格的なマルチモーダルの時代に入ったことが大きいですよね。テキスト、画像、動画など、様々なデータを基本的に同じパイプラインで処理できるようになる。特に、グーグルのGeminiは、大量の計算資源と大量の学習データによって強くなり、ユーザーの意図を汲んだ結果を正確に返せるようになりました。Nano Banana Proはその象徴と言える存在です。

 やはり、筆者にとって衝撃的だったのは、2024年1月にこの連載で登場した明日来子さんが、2025年には、様々な服装やポーズ、舞台、作風で自由に登場させることができるようになったことです。1枚のコートを着ているような服装から、わずか2年での強力な技術の進化を実感します。

2024年1月のMidjouneryで作成した初登場の明日来子さん(上)、2025年12月作成のNano Banana Proでゲストの田中さんと一緒の明日来子さん(下)

 それでは、来年はどうなっていくのか。

 1つはコントローラビリティーです。人間の演出をいかに意図どおりに動作させるか。それを編集ツールなど、自社ツールに統合するということが起きてくる。Sora 2が力を入れて整備しつつあるストーリーボード機能などもそれですね。各社とも、自前の編集環境をクラウド上に準備しつつあり、その使い勝手の良さが大きな勝負どころになるでしょう。

 また、ツールとして業務用途に入りはじめたのも今年の特徴でした。特に、Adobe PhotoshopのNano Banana統合など、Adobeが強力に推進してきたところがあり、ビジネス用途でAIが使われる環境が整ってきています。こうした既存ツールへの統合の動きは、来年さらに進むと考えられます。

 そして、これによって何が起きるかといえば、少人数・小資本での品質の高いコンテンツ作成がこれまで以上に作りやすい環境が整います。2026年には、日本でもAIアニメやAI映画が多数発表されることになるでしょう。ゲーム系では、インディーゲームのAI化が進むのではないかと思われます。アセット生成やバイブコーディングがさらに浸透し、加速することになるでしょう。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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