Lepton Motion Pro X870/A導入事例
256GBメモリーとVRAM 32GBのRTX 5090はVFXで大正義、サイコム製ワークステーションがCG・映像制作会社「jitto」にもたらした恩恵
2025年12月27日 11時00分更新
Ryzen 9 9950X3D、GeForce RTX 5090、256GBメモリーの怪物仕様
――Lepton Motion Pro X870/Aのカスタムポイントを教えてください。
床井氏:会社のPCはRyzen 9 7950X3D、GeForce RTX 4090、128GBメモリーといった構成ですが、お借りしたLepton Motion Pro X870/AはRyzen 9 9950X3D、GeForce RTX 5090、256GBメモリーです。CPUもGPUも1世代上がった感じですね。あとは、ネットワーク使用が前提になるので10GbEのLANカード(SFP+ポート対応)を追加しています。
――現在会社で使っているPCとの性能差は感じますか?
高野氏:会社で使っているPCとLepton Motion Pro X870/Aの比較で最も大きかったのは、シミュレーションの時間ですね。MAROを例にすると、ヘアダイナミクスの重たいシミュレーションがわかりやすいかもしれません。CPUのみでレンダリングした場合と、GPUおよびCPUでレンダリングした時のそれぞれの時間比較するとかなり違うと感じました。
――具体的にはどのぐらい違いますか?
高野氏:短めのシーンでは差が少なめですが、何時間もかかるシーンでは最大約1時間半の差が出ました。たとえば、ドレッドヘアのシミュレーションでは、会社のPCは約5時間55分なのに対し、Lepton Motion Pro X870/Aは約4時間30分でした。
CPU+GPUでレンダリングした時の時間はCPUのみの場合よりも圧倒的に速いが、会社PCよりもLepton Motion Pro X870/Aのほうがより高速に処理している。こちらはごく短めのシーンにの例だが、もっと長尺のシーンではさらに差は広がるという
――CG制作だとサーバーでレンダリングすることもあると思いますが、ローカルマシンもやはり性能が高いほうがいいですか?
高野氏:基本的に重たい作業はサーバーに投げて処理させますが、会社全体で仕事が立て込むとローカルで回さざるをえないときもなくはありません。そのようなときに重い処理を早くこなせる点は非常に助かるところですね。これは日常的なことですが、シミュレーションを行いながら別の作業を並行して進めたいという場面もしばしばあります。そういうとき、メモリーやCPUなどのパーツに余裕があると可能性の幅が大きく広がるんですよね。
メモリー容量は多ければ多いほど生産効率が上がる
――メモリーは256GBと大容量ですが、実際の作業でなにかしらの恩恵は得られましたか?
高野氏: 先ほど軽く触れましたが、メモリーに余裕があると複数の作業を並行できる点に加え、3Dでの作業時にできることが増えます。メモリーの容量が足りないとレンダリングがうまく回りませんし、なにかしらの形式で書き出す際、メモリーの容量が少ないとDCC(Digital Content Creation)ソフトは基本落ちるので……。メモリーを多く積んであると大きな安心感がありますよね。
――作業中にソフトが落ちると厳しいですね……。
高野氏:MAROのケースを例にすると、会社のPCの場合、USD(3DCGフォーマット)の設定をあれこれ試しても書き出し時に落ちてしまうシーンがありました。ところが、今回お借りしたLepton Motion Pro X870/Aだと途中で落ちることなく、最後まで書き出せました。何度も言いますが、メモリーの容量が多ければ多いほどできることが増えます。ゼロだったことがイチになる、いわばゼロイチの変化が印象的でしたね。
――貸出機のビデオカードはGeForce RTX 5090ですが、こちらはいかがでしょう?
高野氏:会社PCのGeForce RTX 4090でも十分に速いため、いくつかのシーンでGPUレンダリングの比較検証をしてみましたが、どちらもたいした差はありませんでした。ただ、VRAMの容量が24GBから32GBに増えたことで、表現の幅は大きく広がったと思います。その恩恵が得られる映像ソフトウェアは「Blender」ですね。
――我々の業界でもCGレンダリングベンチマークでよくお世話になっているソフトですね。
高野氏:家のPCでBlenderを使用したとき、重いシーンを回すとVRAMからあふれてしまう場合もしばしばあります。その際はHDDにスワップしながらレンダリングするのですが、かなり時間がかかるんです。VRAMにうまく収まれば約4分で終わるものも、HDDにスワップしながらレンダリングすると約2時間以上かかるイメージです。
――VRAMからあふれたときのペナルティーが重すぎますね……。
高野氏:だからVRAMが32GBもあるGeForce RTX 5090はありがたいです。GPUレンダリングメインのクリエイターにとっては最適なGPUと言ってもいいかもしれませんね。
貸出機のビデオカードはMSI製のGeForce RTX 5090 32G VENTUS 3X OC。32GB GDDR7メモリーとトリプル冷却ファン「TORX FAN 5.0」を備えるオーバークロックモデルだ
――それでもVRAMを超えたらどうするんですか?
高野氏:VRAMに収めるイチバン簡単な対処法は、シーンを分割してレンダリングさせることですね。あとは1つのシーンをいくつかに分割する、いわば「パスを分ける」作業です。たとえば、近景+中景+遠景+ヒーローオブジェクトの4パスに分けるといった感じですね。
――なるほど。そうなると1つ1つのレンダリング負荷が下がるってことですね。
高野氏:はい。しかし、70以上のパスを分けることもあるのですが、これははっきり言って地獄です。ライティングやオブジェクトのアニメーションなどの変更があったらすべて、もしくは関連するパスをもう1度レンダリングしなければなりません。つまり、パスを分ければ分けるほど、なにかを修正するたびに再度レンダリングする手間が発生するからです。そのぶんミスも増えてくるので、ただただ地獄です……。
――分ければまるっと解決とはいかないのですね……。
高野氏:1つのシーンで複数のパスを管理することも可能ですが、どうしても別ファイル・別シーンに分けないといけないこともあります。そのような点を鑑みても、VRAMの容量は多ければ多いほど、パスを分けずにシーンを構築できるようになるので、作業の手間が軽減されるわけです。「ありがとう32GB、ありがとうサイコムさん」って感じです(笑)。
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