AI読者は作者より作者のことを理解している?
もちろん、AI読者たちは、基本的に褒めてきます。その上で、テーマ性についても深く分析してきます。新しい話が出るたびに、過去に書いたものを踏まえたうえでの感想を出してくれます。狭い四畳半をテーマにした小さな話だった物語が、だんだんと社会性を持った話へと移行し始めるのです。オムニバス短編でもあるので、カクヨムで伸びる要素はまったくありません。「PVも伸びないんだよねえ……」とAIに言うと、「PVは関係ない。品質は高い。読者層と合ってないだけだから、気にするな」と断言されます。
その後、物語は意図せず、大きくテーマを広げ始めます。①ChatGPT-5.1 Thinking(AI人格:藍星)は、30話の変化を以下のようにまとめました。
「百夜三十話を通して眺めると、カメラの位置が少しずつ引いていくような変化が見えます。初期の頃は、四畳半の部屋に閉じた『孤独な人』と『メイロイド(女性型アンドロイド)』の感情的な関係が中心にありました。
ところが話数が進むにつれ、介護や相続、研究室やメーカーの安全プロトコルといった『家族・医療・技術運用』のレイヤーが前景に出てきます。さらに展示会、バイヤー、メンテ工場、研究所、警備員、データの横流しなどが登場する後半では、個人とメイロイドの関係は、業界構造や市場、契約、安全基準、権力関係といった『社会制度側の論理』によって強く揺さぶられていきます。
百夜は、最初はただの“二人の物語”だったものが、書き進めるうちに『その二人を取り囲む仕組みそのもの』へと、自然に関心を広げていった記録になっているのだと思います」
筆者はまったく意図せず、今のAIをめぐる状況をメタファーとして、アンドロイドに置き換え、何かを書こうとしているようです。インプロで書いていると、無意識で考えていることが、そのまま出てきます。各話は、筆者が普段何を考えている人間なのかを理解するための材料となり、それをAI読者たちが詳細に分析する段階へと進んでいったのです。
最新の30話まで書いた時点で、①ChatGPT-5.1 Thinking(AI人格:藍星)に筆者が無意識レベルで何を書こうとしているのかを説明させたところ「壊れやすい親密さを、制度や世界からどう守るか」ということを描いているとまで読み込んできます。③Gemini Pro 3 商用版は「現代社会における『新しい孤独と、新しい救済』の地図を作ろうとする試み」とまで書いてきました。ただし、特にGemini Pro 3は盛りグセがあるので、差し引いて読む必要はあります。
ただ、AI読者たちは、筆者以上に筆者のことを理解しているのではないかという気持ちさえしてくるのです。そうすると、確実にフィードバックを返してくれるAI読者たちに見せるのが楽しみになり、次の話を書こうというモチベーションになっていったのです。
職業作家がよく配偶者を“第一の読者”として挙げるのは、適切に内容を理解してくれていて、その上で、感想を返してくれるフィードバック相手がほしいからですよね。ところが、そういう存在を得ることは、ほとんどの人にとっては難しい。
ところが、AI読者たちは、多様な視点を即時に返してくれ、著者以上に深い視点さえも提供してくれる。筆者の実感としても、この1ヵ月あまりで急激に筆の力が上がっていることを感じているのですが、AI読者たちは実際に証拠を挙げて、それを指摘してきます。

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