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これまでの経緯と立ちふさがる課題、その対策まで

デジタル庁が語る「自治体システム標準化」と「ガバクラ」の現状 運用コスト増大は解消するか

2025年11月20日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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ガバメントクラウドは“AWS一強”状態

 続いては、自治体システム標準化の基盤としてデジタル庁が整備するガバメントクラウドについて、省庁業務サービスグループ 企画調整官である藤井正教氏から説明された。

デジタル庁 省庁業務サービスグループ 企画調整官 藤井正教氏

 ガバメントクラウドは、政府や自治体が共通で利用するクラウド基盤である。各機関が独自にシステム構築してきたことによる柔軟性や安全性などのばらつきを解消し、利便性の高いサービスを迅速に提供できるようにするために生まれている。

 現状、対象となるクラウドサービスは、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azure(Azure)、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)、そして、2025年度末までにすべての要件を満たす条件つきでさくらのクラウドが選定されており、2021年度から順次利用が開始されている。

ガバメントクラウドへの移行イメージ(提供:デジタル庁)

 藤井氏は、ガバメントクラウドへの移行の効果を3点挙げる。

 ひとつは、「事務の効率化」だ。クラウドサービス事業者との交渉などはすべてデジタル庁が担うため、利用機関の負担が軽減される。2つ目は、「セキュリティレベルの高度化」だ。高い水準でのセキュリティ対策が担保されたクラウドを利用することで、公共情報システム全体のセキュリティレベルを底上げできる。実際に、2024年10月に自治体などを対象として発生したDDoS攻撃では、ガバメントクラウド(Google Cloud)の自治体セキュリティクラウドを導入している東北の市町村が当該攻撃を防いだという。

 3つ目は、「大規模災害対策の実現」だ。クラウドサービス提供事業者の分散設置されたデータセンターにシステムやデータを保管されるため、大規模災害時にもサービスが停止することなく、事業継続性を向上できる。

ガバメントクラウドへの移行の意義(提供:デジタル庁)

 現在の利用状況は2025年9月30日時点で、5237システム。デジタル庁のWEBサイト、マイナポータル、e-Gov、法人番号公表サイトのほか、各省庁の業務システムや自治体の標準化対象システムなどで利用されている。各省庁システムは、更改時期を勘案しつつ原則移行が進んでおり、自治体システムは、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行について努力義務が課せられている。

 クラウドサービスごとの利用状況を見ると、現状は“AWS一強”という状況だ。特に自治体においては、AWSを採用する1357団体に対し、Google Cloudは9団体、OCIが41団体、Azureはゼロとなっている。ただしこの数字は、本番運用が始まったシステムだけではなく、環境構築を始めたシステムも含んでいる。

ガバメントクラウドの利用状況(提供:デジタル庁)

 なお、さくらのクラウドに関しては、「国内企業によるガバメントクラウドということで各方面から高い関心を集めている」と藤井氏。デジタル庁が提示する技術要件のすべてを満たすよう開発が進められており、9月末時点では、「体制や計画の見直しが必要となる項目を確認したが、計画全体には影響なく、引き続き進捗状況を注視する」という評価がなされている。

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