“移行の遅れ”と“運用コスト増大”に対する対策
2024年12月の標準化基本方針の改定では、2026年度以降の移行が避けられないシステムを「特定移行支援システム」と位置付けた。そして、これらのシステムの移行期限を「概ね5年以内」と延長し、移行経費を含む支援策を継続する。
この特定移行支援システムは、標準化の対象となる全3万4592システムのうち、2025年7月時点で「3770システム」(10.9%)が該当する見込みだ。なお、特定移行支援システムを有する団体数は、全自治体1788団体の36%を占める643団体に上る。
具体的な内訳は、「現行でメインフレームで運用されているもの」が45システム、「現行で個別開発システムで運用されているもの」が196システム、「標準準拠システムの開発されず、代替の見込みが立たないもの」が184システム、そして、「事業者のリソースひっ迫による影響を受けるもの」が3345システムとなっている。
橘氏は、「初期では、規模の大きな団体のメインフレームや個別開発など、容易に標準化できないシステムが該当していた。2025年度からは、事業者のリソースひっ迫に影響を受けたシステムが大部分を占めている」と説明。
加えて、「2025年度末の移行期限が近づくと、不可避なトラブルが起きることが予測される。その都度、トライアンドエラーを繰り返しながら、住民サービスに支障ないレベルでとどめることが重要になる」と付け加えた。
加えて、自治体から声が挙がっているのが、標準化やガバメントクラウド移行後の運用コストの増大だ。「端的にいうと、時間がかかるプロジェクトを短時間で進めたことにより、ひずみが生じている部分がある」と橘氏。
デジタル庁は、その外部要因として、物価高や賃上げ、円安、デジタル人材のひっ迫などを挙げる。その上で、ガバメントクラウド移行に伴うサービスレベルの向上や基盤・ネットワークの二重化、ガバメントクラウドに最適化できていないといった構造的要因もあるという。
加えて、2022年度に策定された各標準仕様書は、制度改正にあわせて約80回にもおよぶ改定が行われてきている状況だ。改定に伴う、自治体のデータ移行などのコストは国が支援しているが、ベンダーの開発費は対象となっておらず、運用後の利用料に上乗せされているという要因もあるという。
様々な要因による運用コストの増大に対し、ワーキンググループを設け、総合的な対策を進めている最中だ。
当面の対策として展開するのがベンダーの見積精査の支援だ。「ベンダーの言い値では、見積が増加している部分がある」(橘氏)中で、自治体に寄り添った支援を強化し、かつ事業者に対しても根拠が伴う見積を提示するよう働きかける。また、後述のガバメントクラウドでのパートで触れるよう、クラウド利用料の更なる割引交渉やコスト最適化の推進なども展開する。
「ただ、こうした対策をとっても、解消には時間がかかるものだと想定している」と橘氏。なおも増加する部分に対しては、2026年度予算の概算要求にて、金額を示さない「事項要求」として盛り込み、財政措置のあり方を検討していくという。










